ある日、突然、顔面に強烈な痛み 「三叉神経痛」は加齢によって誰でも発症

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2020年07月03日 17:00  AERA dot.

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写真※写真はイメージです(写真/Getty Images)
※写真はイメージです(写真/Getty Images)
 三叉(さんさ)神経痛は、顔面のこめかみ、頬、顎(あご)に走る3本の三叉神経に沿ったいずれかの部分に、針に刺されたような痛みが表れる病気だ。あらゆる痛みの中でも非常につらい痛みだと言われる。治療には、薬物療法や手術があるが、痛みをコントロールする神経ブロック療法という選択肢もある。ペインクリニックの専門医に聞いた。

【写真】三叉神経痛について教えてくれたのはこちらの専門医

*  *  *
 三叉神経は、脳の中心にある三叉神経節から3本に分かれた神経だ。第1枝(眼神経)領域、第2枝(上顎神経)領域、第3枝(下顎神経)領域に分かれる。

 そして、そのいずれかの神経に沿った顔面部分に激痛が走る病気が三叉神経痛だ。
 
 患者数は、人口の0.01〜0.3%と言われる。初発年齢は40歳以上で、50〜60歳代がかかりやすい。男女比は1:2と女性が多い。
 
「三叉神経痛は、腫瘍や血管などが特定の三叉神経に当たることで圧迫し、ある日、突然、強烈な痛みが起こります。腫瘍が原因の場合を除くと、加齢によって誰でも発症する可能性がある病気です。加齢で発症する理由は、動脈硬化などによる血管の経年変化で、血管が蛇行したりすることがあるためです」

 そう話すのは、NTT東日本関東病院ペインクリニック科部長の安部洋一郎医師だ。

「ただし、神経と血管が当たり始めてすぐに痛くなるというわけではありません。季節の変わり目(秋や春先)に、自律神経のバランスが崩れたり、冷風にあたったり、会話がきっかけだったり、食事だったり、ちょっとしたことが引き金になって起こります」
 
 三叉神経痛の症状の特徴は、一瞬あるいは数秒、せいぜい数十秒という短期間の激痛だ。5分も10分も続く痛みではないという。

「しかし、とにかく強烈な痛みですから、次の痛みがくることが不安になりますし、恐怖すら感じると思います。痛みに対する恐怖などネガティブな感情は、さらに痛みの回路を増幅させますから、できるだけ早く専門医を受診するべきです」
 
 三叉神経痛は通常、脳神経外科の領域と考えられているが、痛む部位によっては、耳鼻咽喉科や歯科、口腔外科へ駆け込むこともある。

「今は、どこを受診しても診断によってしかるべき処置を取ってもらえると思います」

 熟練した医師では、問診で症状を把握すれば、ほぼ診断がつくこともあるが、脳腫瘍や顎関節症、副鼻腔炎といった病気との鑑別診断のためにMRIを撮る。

「また、既往症として帯状疱疹(ほうしん)がある人は、帯状疱疹後三叉神経痛というウイルスが原因の三叉神経痛の場合があるため、その病気との鑑別も必要です」

 通常、三叉神経痛と診断がつけば、抗てんかん薬のカルバマゼピンという薬が第一選択として処方される。これで、多くの場合、症状が抑えられる。

 抗てんかん薬の使用は、痛みの情報が神経に伝わるのを抑えるためだ。

 カルバマゼピンで効果がでない場合には、ほかに数種類ある抗てんかん薬や抗うつ薬など、患者の病状や状況に応じて薬が選択される。

 ただし、薬物は全身に作用するため、眠気やめまい、ふらつきといった副作用が出ることがあり、その症状が強い場合には、薬物療法では限界がある。

「状況に応じて、患者さんと相談し、脳神経外科での手術を勧めることもあります。手術は根治的治療だからです。ただ、全身麻酔による開頭手術ですから、一定のリスクはありますし、高齢者や他の病気を持っている人の場合はできないこともあります。さらに、わずかながら、周囲の神経を傷つけての麻痺などが残る場合もあります」

 他には、ガンマナイフやサイバーナイフといった脳に放射線を照射する治療もある。この治療が奏効する確率は6〜8割あるが、痛みが再発したり、顔面全体に痺れが出ることもある。

 薬物療法と手術の中間的アプローチとして要注目なのが、ペインクリニックでおこなう神経ブロック療法だ。

「神経ブロック療法は根治的治療ではありませんが、奏効すれば、薬を全部やめられる可能性があります。一回のブロック治療で、2年くらいは症状を抑えることができます。4〜5年抑えられている人もいます」
 
 現在、安部医師らがおこなっている神経ブロック療法は、42度以下の高周波(ラジオ波)でおこなうパルス高周波法だ。

「パルス高周波は、知覚神経を破壊するのではなく、42度への過熱と電磁波の断続的なオンとオフの繰り返しによって、神経伝導に影響を与え、痛みをおさえるのです」

 同科では、25年前までは、99.5%のアルコール(エタノール)で神経を焼く、アルコールブロックをおこなっていた。10年以上という長期間の有効性があったものの、知覚低下や知覚消失を生じることがあったため、その後、新たに高周波熱凝固法を採用した。

 高周波熱凝固法は、針先端の接触した部位のみ発熱するため、安全性が高い。知覚低下やしびれ感という副作用があるが、温度を90度から70度へと下げることなどで対応してきた。
 
 そして、さらに現在のパルス高周波へと至った。

 現在、神経ブロック療法には、患部局所をブロックする末梢枝ブロックと、三叉神経の大本をブロックするガッセル神経節ブロックがある。

「頭蓋底(とうがいてい)という脳の奥深くにおこなうガッセル神経節ブロックは難しい治療ですが、ほかのブロック治療より麻痺が少ないです。麻痺が少なく噛む力が戻ると、QOL(生活の質)を良くします。ブロック療法の利点は、痛みの除去のみならず、患部の血流を改善できるという点もあります。薬剤では痛みを取る以外には血流の改善がありません。合併症としては局所的な出血や感染が皆無とは言えませんが、ほぼ安全にできます」
 
 そして神経ブロック治療は、近年ではMRIとエックス線の画像を重ね合わせて診断することで、より精度の高い治療が可能となっている。

 三叉神経痛では、初発、再発でも痛みが発症したときの応急処置としては、患部を温めることが大切だという。

「電子レンジでチンして蒸しタオルを作り、痛みのある部位に当てたり、お湯を口の中に含んだりして、痛みを鎮めたら、一刻も早く痛みを取り除く治療を受けてください」

 そして、痛みが改善したとき、痛みが出たときの状況を、記録しておくことも大切だと安部医師はアドバイスをする。
(文・伊波達也)

このニュースに関するつぶやき

  • 加齢じゃなくて、若くてもなるよ。私は27くらいのときに発症して、10年くらい我慢した。私の場合は痛みが続くし、テグレトール(カルバマゼピン)もあまり効かなかった。
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  • 私は22歳の春にこれになりました。目の奥、鼻の横から耳にかけてと後頭部に強烈な痛みが定期的に起こり、1ヶ月寝たきり。神経内科を探してやっと治して貰いました。
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