『ハイキュー!!』菅原孝支は“烏野の母”だ コートの外からチームを支える副キャプテンの存在感

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2020年07月05日 09:01  リアルサウンド

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 バレーボールに青春をかける高校生たちを描く『ハイキュー!!』。今回ピックアップするのは烏野高校の副キャプテン・菅原孝支だ。


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 影山たちが入学してくるまでは正セッターとして公式試合も戦ってきた。チーム全体をよく見ており、チームメイトたちにも多くの助言をしている。


 3年生になってからは控え選手であるが、チームメイトにとってプレー面、精神面においても菅原の存在は大きく、相手チームに「何かやらかす奴」という印象を与えるようにもなった。そんな菅原孝支の魅力に迫る。


■セッター菅原に立ちはだかる壁


 全く人の話を聞かない新入生たち(主に影山と日向)に喝を入れて締めるキャプテン澤村のそばで、おだやかに微笑み、サポートとフォローをするのが副キャプテンである菅原だ。影山と日向が入部前に特訓を行っていたときも、こっそりとサポートとアドバイスを行っていた。


 そんな菅原が抱えているひとつのトラウマ。影山たちが入部する前、徹底的にエース東峰がブロックされた伊達工業高校との試合。その試合をきっかけにして、東峰は部活に出なくなってしまう。もちろん、ブロックをされ続けるエースの精神的ダメージは大きい。ただ、ブロックでダメージを受けるのはセッターも同じ。ほかのセッターたちも言うように、菅原もまた自分がセットしたボールがブロックされたことに責任を感じていた。


「俺のトスで、またスパイカーが何度もブロックに捕まるのが怖くて…圧倒的な実力の影山の影に隠れて、安心してたんだ」


 そこで、菅原が安心して進化することをやめていたら、おそらく東峰はバレー部に戻ってこなかっただろうし、戻ってきたとしても、成長することはできなかっただろう。菅原は責任を感じることも、努力もやめなかった。


 影山も口にした、一朝一夕では築けない人望と信頼。それは菅原が積み上げてきた選手としての財産だった。


■活躍する1年生たちの陰で「選ばせない強さ」


 東峰が戻り、チームのメンバーが揃う久しぶりの音駒戦。鳥飼コーチは、セッターを影山と菅原のどちらにするか迷う。実力なら影山。エース東峰との連携、チームとの信頼関係から考えれば菅原。そして、3年生である菅原をできるだけ多くの試合に出してやりたい、という気持ちもあった。そんなコーチの迷いを断ち切ったのは菅原だった。


「ひとつでも多く勝ちたい」
「(次へ進む切符が取れるなら)迷わず影山を選ぶべき」
「3年生なのに可哀想って思われても、試合に出られるチャンスが増えるならなんでもいい」


 正セッターじゃなくても試合に出ることはあきらめないし、努力もする。そのためには勝ち進んでたくさんのチャンスが欲しい。鳥飼コーチの指導方法やスタメンの選び方に、選手が口を出すことはなかった。面と向かって意見をし、その意見を認めさせたのは菅原だけではないだろうか。


 控えだからこそ、試合の流れやチームの雰囲気を変えるために投入されることが多く、その分、求められることも多い。菅原は言葉通り、努力することをやめなかった。セッターにも関わらず攻撃に参加できるようスパイクの練習も始めたし、サーブでの攻めも強気になっていく。


 春高1回戦、マッチポイントでのサーバーとしての投入。春高予選の決勝、白鳥沢学園高校とのファイナルセット。春高準々決勝、東峰が自分の呪縛から逃れる1点をとるための投入。……チームの大切なシーンにはいつも菅原がコートにいた。


 そして準々決勝、ファイナルセット。鳥飼コーチは、もう一度迷う。月島の怪我による交代。山口か、菅原か。高さ、ローテ的には山口。サーブ、総合力と経験なら菅原。コーチであり、自らも控えセッターだった経験をもつ鳥飼コーチは、こう思うに決まっている。“3年生はこれで最後だ”と。そんな迷いを、菅原はまた一言で断ち切る。


「学年なら関係ないんで。」


 コートに立っていなくても、チームを支える。「孝支」という名前があまりにもぴったりではないか。


■烏野高校のムードメーカーとしての存在


 東峰がチームに復帰して以降の、菅原はどこか吹っ切れたように見える。それとも、影山が正セッターとなり、自分がやるべきことが決まったのか。


 それまでどおりのサポートはもちろん、檄を飛ばし、みんなのテンションを上げ、選手たちをリラックスさせる。ときには飛ばす檄が強すぎて、澤村を「お、落ち着け」とうろたえさせ、主審ににらまれるということもあった。


 すべては、できるだけたくさん試合をしていたかったからこそだ。コートの外にいるからこそ、見えてくるものも、感じることもある。もどかしさを感じたこともあっただろう。でも決して弱音を吐かず、後輩たちを育て続けた。もしかしたら本人はそんなつもりがないのかもしれないが、自然とその役割をこなしていたように見える。


 最たる例が影山だ。影山が春高敗退時に「このチームでもっと上に行きたかったです」と言った際、菅原は涙をこぼしこう答えた。


「お前からそれを聞けただけでここに来た意味がある」


 影山と日向が入学してきたときから、全部見てきた菅原だ。影山の苦しみは、同じセッターだからこそ言わなくても伝わっていた。そんな後輩の成長を見せつけられたら、菅原は泣くに決まっている。


 ちなみに菅原は影山と日向のVリーグ対戦時にも、影山が子どもと手を繋いでいるのを見て「影山とキッズ……」と泣いている。澤村には「スガは親なの?」とツッコまれているが、そんな澤村に唯一ビシッと厳しいことを言えるのも菅原だけだった。菅原は「烏野の母」だったのではないだろうか。


 そんな菅原は小学校の先生になったことが第43巻で明らかになった。菅原ならきっと教室にいる生徒全員を見つめてまるっと愛してくれるだろうし、一緒になってはしゃいでくれるだろう。想像するだけで微笑ましい。


 これは筆者の願望だが、できれば、ときどき大人げなく子どもたちとバレーをしていてほしい。


(文=ふくだりょうこ)


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