パーキンソン病は今や「不治の病」ではない 薬と運動で日常生活の質を維持

1

2020年07月05日 17:00  AERA dot.

  • 限定公開( 1 )

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

AERA dot.

写真薬物療法における基本的な選択
薬物療法における基本的な選択
 手足のふるえなどの症状がみられ、進行すると歩けなくなったり、認知機能の低下がみられたりすることがあるパーキンソン病。かつては不治の病と言われることもあったが、現在は医学の進歩で、長期にわたり通常の日常生活を送ることもできるようになってきた。週刊朝日ムック『新「名医」の最新治療2020』では、薬物療法と運動療法について専門医に取材した。

【患者数は?かかりやすいのは女性?パーキンソン病データはこちら】

*  *  *
治療の基本は、薬物療法だ。パーキンソン病は、神経伝達物質の一つであるドパミンが減ることによって発症する。このため、治療では不足したドパミンを薬で補充することで、症状を軽くし、通常の日常生活を送れるようにする。関東中央病院脳神経内科の織茂智之医師はこう話す。

「別の病院で『パーキンソン病は不治の病』と言われて泣きながら来院する方もいます。けれども現在は薬物療法の進歩で、薬を適切に使いつつ、運動療法もおこなえば長期にわたって日常生活の質を保てて、天寿を全うできるのです」

 パーキンソン病の治療薬にはさまざまな種類があるが、最も効果が高いのが「L−ドパ製剤」だ。L−ドパはドパミンに変化する一つ前の物質で、脳内でドパミンに変化する。ドパミンを補うことで、ふるえやこわばりなどの運動症状が改善され、スムーズにからだを動かせるようになる。ただし、あくまで症状に対する治療で、病気を根本的に治すわけではない。薬は生涯飲み続けることになる。

 L−ドパを長期間服用していると、「ウェアリングオフ」といって薬が効いている時間が短くなる現象が起こりやすい。初期には1日3回の食後に服用すれば一日中効果が持続していたのが、治療期間が長くなると次に薬を飲むまで効果が持続しなくなるのだ。動きにくくなる、からだが重く感じるといった症状が出る。

 この現象を解消するために薬の量を増やすと、「不随意運動(ジスキネジア)」といって、自分の意思とは関係なく、手足や首、肩などがくねくねと動く症状が出やすくなる。

「65歳未満の若い人は、ジスキネジアが早く出やすいと言われています。このため、若くて症状が軽い人は最初からL−ドパを使用せずに『ドパミンアゴニスト』、もしくは『モノアミン酸化酵素B(MAOB:マオビー)阻害薬』を使うことがあります」(織茂医師)

 ドパミンアゴニストは、ドパミンを受け取る部分(ドパミン受容体)を刺激して、その働きを活性化する薬で、L−ドパに比べて薬効の持続時間が長く、ウェアリングオフが起きにくい。ただし、吐き気や食欲低下、眠気、突発性睡眠、めまい、幻覚など、副作用が起きやすい。

■治療薬の選択には時間をかけることも

 ドパミンアゴニストより副作用が少なく、新しい種類の薬が次々と登場して注目されているのがMAOB阻害薬だ。脳内のドパミンが分解されて減少するのを抑える作用がある。症状が軽いうちはどちらかを単剤で使用し、それだけでは症状を抑えられなくなってきたら、L−ドパと併用する。併用することでL−ドパの量を減らせるので、副作用のジスキネジアを抑えることにもつながる。

 順天堂大学順天堂医院脳神経内科の西川典子医師はこう話す。

「若い人であっても仕事に支障が出ないように確実に症状を抑えたいということであればL−ドパ、症状が出ているのが利き手ではなく日常生活に大きな支障がないということであればドパミンアゴニストかMAOB阻害薬、というように、症状や生活、年齢に合わせて薬を選択していきます」

 治療薬を選択するために、生活状況や家族構成、仕事の内容など患者の情報を細かく知る必要があるので、初診は時間がかかる。

「難病と診断されれば誰でも不安を感じます。非運動症状の一つであるうつ症状によって不安を感じやすくもなっています。薬の副作用を心配している方もいます。しかしパーキンソン病は薬とは長い付き合いになるので、いい印象をもった状態で治療を開始することが肝心です。それが治療効果を左右することもあります。不安が強い方にはいきなり薬物治療をせず、まずは不安解消を優先する場合もあります」(西川医師)

 同じ一人の患者でも、症状の変化やライフイベントに合わせて、薬の種類や組み合わせを変えていく。L−ドパ、ドパミンアゴニスト、MAOB阻害薬の3剤を基本に、副作用を抑えたり、基本の薬の効果を高めたりする「COMT阻害薬」「ドパミン遊離促進薬」など補助的な薬を組み合わせる。また、非運動症状はドパミンを補充する治療だけでは効果がない場合もあるので、それぞれの症状を改善する薬も処方する。

「パーキンソン病の薬物治療は複雑で、研究も進んでいるので、専門的な知識が必要です。治療の効果を感じられない場合などは、パーキンソン病を専門的に診ている脳神経内科医を一度受診してみてください」(同)

 できるだけ長く日常生活を支障なく送るためには、薬物療法と同時に運動療法が大切となる。

■運動することで薬の効果が高まる

 同じ薬を使っていても、運動をしている人のほうが、治療効果が出やすいこともわかっている。薬物療法は薬で症状を抑えることで、運動をしやすくするという意味合いもある。

「いくらエンジンオイルを補給しても車体が錆びついていたら車は動かないのと同様に、薬でドパミンを補充しても筋肉や骨などがもろくなっていたら、からだは思うように動きません。パーキンソン病の人は気持ちもからだも引きこもりがちになりますが、初期から積極的にからだを動かすことが大切です」(同)

 進行すると転倒しやすくなるため、主に理学療法士の指導を受けて、ストレッチや筋力トレーニングをおこなうが、初期は運動の種類に制限はない。

「ヨガやスキー、スキューバダイビング、ゴルフ、ウォーキングなど、趣味の延長で楽しく続けることが大切です」(同)

(文・中寺暁子)

≪取材協力≫
関東中央病院 脳神経内科統括部長 織茂智之医師
順天堂大学順天堂医院 脳神経内科 西川典子医師

※週刊朝日ムック『新「名医」の最新治療2020』より

    あなたにおすすめ

    ランキングライフスタイル

    前日のランキングへ

    ニュース設定