アジカン後藤正文×origami PRODUCTIONS対馬芳昭スペシャル対談【前編】「音楽がリスペクトされる世の中に」

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2020年07月05日 17:02  ウレぴあ総研

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4月7日の緊急事態宣言の発令の前に、あるステートメントが多くの音楽関係者に勇気を与えた。origami PRODUCTIONSによる無償楽曲提供「origami Home Session」そして同代表の対馬芳昭氏が設立した基金「White Teeth Donation」だ。そこに素早く反応したのが、Gotchだった。

【画像ギャラリー】アジカン後藤氏×origami PRODUCTIONS対馬氏ロング対談

アーティストとして、レーベル/マネージメント代表として、それぞれのやり方を貫いて交差した“音楽への思い”を語る、スペシャル・セッション。

■根本の部分で、音楽自体がもう少し世の中でリスペクトされるものであってほしい

── まず、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、それぞれの立場、仕事で最初に感じた危機感というのはどのようなものでしたか?

対馬 最初に「ライブハウスでクラスターが発生」という言葉が飛び込んできて。その時はどんな条件でどんなふうにウイルスが蔓延していくのかよくわからない状況だったんですけど、とにかくライブハウスは危険だ、というような世間の反応自体にまずは危機感を持ちましたね。

Gotch 僕はやはりスタッフまわりですよね。ライブが止まるということは、すなわちそこに関わっている人たちの仕事がなくなるということですから。どうやって仲間たちと仕事をすればいいんだろうって、わからなくなっちゃいましたよね。

それまで普通に集まっていたのが、できなくなって、そうなるとそこから先がなかなか想像できなくなるじゃないですか。

── Gotchさんがブログで指摘されていましたけど、ライブに関わる仕事をされているのは、大抵が専門職の方たちばかり。

Gotch そうなんですよ。じゃあ他のことをやろう、とはなかなかなれない。だからそこに対しては、早急に助けが必要なんじゃないかという思いを強く持ちました。

僕たちの立場で、どういう仕事が作れて、どういうことができなくてっていうのを整理する必要があると思いましたね。

── 多くの業界が苦難に直面している状況ですが、とくにエンタテインメント業界は、真っ先に公演の自粛を決断し、そしておそらく再開も最後になる。

その再開の目処もなかなか見通しづらいという我慢の時が続きますね。

対馬 そうですね。例えば台湾の状況を見てみると、エンタテインメントも徐々にではありますけど元に戻りつつある。そういった事例を参考にしつつ、少しずつでもいいから前に進めていかないといけないなと思いますね。

この閉塞的な状況をこの先もずっと続けるわけにはいかないですから。いろんな意味で免疫を高めてウイルスと共存していくしかありませんよね。

Gotch 複雑というか、奥の深い問題ですよね。

僕が感じるのは、音楽をはじめ文化的なものの順位がこの国では低いんだなということです。重要度というか。そこはミュージシャンたちも考えなきゃいけないことだと思います。

すぐに解決するような話でもないから、20年30年かけて考えなきゃいけない。例えばニューヨークに行ったらすぐにわかるんですけど、音楽やミュージカルというものが、人々の生活の大事な位置を占めているんですよね。

この人たちは音楽なしには生きていけないんだな! とか、それほどまでにミュージカルが好きなのか!っていうのがわかる。

だって、そこらじゅうにホールが軒を連ねて、コンサートをやったりミュージカルをやったりしている。ジャズバーやクラブ、そしてストリートにも音楽が溢れている。それを肌で感じるんです。

それと比較すると、日本は文化って添え物、生活を彩るもの、くらいの認識のされ方しかしていないような気がするんです。

── とくに今回それがはっきりしましたね。

Gotch そうですよね。僕たちももう少しアピールしなければいけない。音楽ってスペシャルなものなんだよっていうのを演奏や楽曲で示さなきゃいけない。

もちろん普段の態度や行動でも示さなければいけないんだけど。すごく簡単に言うと、リスペクトしてもらうようなことをしなきゃいけないですよね、やっぱり。そんな気がします。

「僕たちは社会と関係なく外側で勝手にやってるんで」みたいな態度でいると、アリとキリギリスのキリギリスみたいに思われて、何かあった時にみんなも助けたくないって思っちゃう。

だから僕たちも社会活動に積極的に関わって、音楽が意義のあるものだということを理解してもらうようにしなきゃいけない。そして何より重要なのは、「これは誰にでもできるものじゃない」っていうスペシャルなものを提供することですよね。

音楽は誰にでもできるし、それが音楽の素晴らしいところではあるんですけど、一方で、誰しもが特別なものを作れるわけじゃない、というのも事実。その特別なものがさらに素晴らしいものになるには、より多くの人たちが関わる必要がある。

エンジニアもそうだし、プレーヤーもそう。そうした構造というか生態系みたいなものも含めて音楽なんだということを、それこそ対馬さんのような立場の人、僕みたいな立場の人、それぞれに音楽に関わる立場の人たちがプライドを持って作業のレベルを何段階も上げていかなきゃいけないっていうのを痛感しました。

今回の新型コロナウイルスのことで、音楽が後回しにされますっていうのは、別に僕たちは嫌じゃない。人が死ぬんだったらやめますっていう覚悟は持っています。

けれど、順番の問題のそのもっと奥というか、根本の部分で、音楽自体がもう少し世の中でリスペクトされるものであってほしいなっていう望みが、ひとりのミュージシャンとしてはあります。

■誰か任せではいけない。僕らがちゃんとアピールしていかないと

── 対馬さんが4月3日のnoteに書かれたステートメントがとにかく印象的で多くの人に感銘を与えたと思うんですけど。

自己資金2000万円のうちの半分を困っている音楽関係者への寄付「White Teeth Donation」に充て、もう半分を将来のために音楽業界の構造を変えていくようなアクションのために使用したいと。

それはいまGotchさんのおっしゃった、音楽の地位の向上、ということとも大きく関係していますよね?

対馬 まさにそこだと思います。音楽の地位というのは、この国においてはやっぱり低いんだなということを痛感したんですよね。

ただそれは、有事の時に毎回思うんですよ。3.11の震災の時もそうでしたし。そういう事実に直面した時に思うのは、国や国民に対してというよりも、これは自分たちの問題だなということです。

まさにGotchさんがおっしゃったように、僕らがちゃんとアピールしていかないといけないことであって、誰か任せではいけないんだと。

だからGotchさんの活動って、今回のコロナだけではなくて、ずっと一貫しているし、筋が通っていますよね。そういうアーティストやレーベル、プロダクションなんかがたくさん増えていくことが何より大切だと思います。

もちろんビジネスという側面も大事なんですけど、全部のベクトルが「売れるため、売るため」になってしまうと、何と言うか、合戦というか領土の奪い合いというか……ちょっとね。

やっぱりカルチャーである以上、ビジネスとそうじゃない部分というのは両立しないといけないと思います。つまりそこをどうにかしなきゃいけないっていうのをずっと考えているんですよ。

今回のコロナのことで、いろんなものが表面化しましたよね。音楽や文化的なものに対する国の態度とか、あるいは企業における経営者と社員の関係とか、良くも悪くもいろんなことが炙り出された。

そこで悪い面ばかりに注目して、そこを叩くことに精力を傾けるよりも、もっと良い面に目を向けて、こんな素晴らしいことを考えている人がいるんだ、とか、同じことを考えて行動している仲間がいるんだ、ということを知れた。

そこをポジティブに捉えたいし、大事にしていきたいなって思いますね。そしてそれが、次のアクションにつながるものだと信じています。

■各回更新!

音楽関係者に向けたドネーション(寄付)「White Teeth Donation」について語る、アジカン後藤正文×対馬芳昭(origami PRODUCTIONS)スペシャル対談(中編)

「多様性」とこれからの「音楽シーン」について語る、アジカン後藤正文×対馬芳昭(origami PRODUCTIONS)スペシャル対談(後編)

Gotchの『Stay Inside feat. Mabanua』『Mirai Mirai feat. Shingo Suzuki』は、「OTOTOY」から購入できます。

そのほかリリース情報はGotch(ASIAN KUNG-FU GENERATION)公式サイトをご覧ください。

対馬芳昭(origami PRODUCTIONS)が立ち上げた「White Teeth Donation」の詳細はorigami PRODUCTIONSや、noteをご覧ください。

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