意味がわかると怖い話:「旧友からの連絡」

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2020年07月05日 21:07  ねとらぼ

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写真ある日届いた「旧友からの連絡」――「意味がわかると怖い話」を紹介します
ある日届いた「旧友からの連絡」――「意味がわかると怖い話」を紹介します

 普通に読んでいればなんてことないお話。だけどひとたび気づくと、全く違う光景が見えてくる……「意味がわかると怖い話」を紹介する連載です。



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●旧友からの連絡



 長らく放置していたFacebookのページに、大学時代の友人から友達リクエストが来ていた。



 就職で地元に帰ってしまい、3年ほども会ってない懐かしい名前。プロフィール写真を見ると、ぴしっとスーツを着て真面目な顔をしているが、本人に間違いなかった。リクエストを承認すると、すぐにチャットからメッセージが届いた。



『久しぶり! 同じサークルだったYです。覚えてる?』



 すぐに返信した。『覚えてるに決まってるじゃん! 3年ぶりだね!どうしたの?』



『実は結婚するんだ。式に出てほしい友達に連絡して回っててさ』



 「宗教とかマルチの勧誘だったら嫌だな……」と、少しだけ思っていた俺は安堵し、同時に旧友のおめでたい報告に、うれしくてつい饒舌になった。



『おめでとう! 絶対行く! 相手はどんな人?』



『こっちに戻ってから付き合い始めた地元の子。今度写真送るわw』



『あんなに遊び回ってたYも結婚か。なんかびっくりだよ』



『おい、彼女まじめな子だから、会ってもあの話とか絶対すんなよ。やばいからさ』



『あの話ってなによ(笑)心当たりがありすぎて分からんわ』



『俺がお前に「あの話」って言ったら1つしかないだろ』



 ああ……と思い至り、俺は苦い気分になる。



『ナンパした人妻と酔っぱらって3Pしたこと?言う訳ないじゃん(笑)こっちまで人格疑われるよ』 



 冗談めかして書いたが、後味の悪い思い出だった。「恋愛心理学を試す」なんて言ってバーで声をかけた女性に、旦那がいるからと拒まれたのが癪(しゃく)だったのか、Yは馴染みの店員に言い含めて彼女の飲み物に度数の高い酒を混ぜさせて酩酊させ、強引にホテルに連れ込んだのだ。意気地がないと言われるのも、「チャンス」をふいにするのも嫌で、俺もYを止めなかった。



 あの夜のことはしばらく、わだかまりとして俺の中に残っていたのだが、Yにとっても掘り返したくない出来事だったのだと知り、ちょっとだけ安心した。



 その後、招待状の送付先として住所を教え、『今度、東京に出るから久しぶりに飲もう』と約束してその日は終わった。



 Yが死んだと共通の友人から知らされたのは、3日後のことだ。



 ニュースサイトを確認すると、Yは帰宅途中に夜道で殴り殺されたらしく、犯人はまだ捕まっていないという地方紙の報が引っかかった。



 ついこの間、絡んだばっかりだったのに……。つらくなってFacebookのページを開くと、Yからの未読のメッセージが届いていた。



『これで確信が持てた。ありがとう』



 ――ピンポーン。呼び鈴が鳴った。









●解説



 メッセージを送って来たのは、Yに成りすました誰か――おそらくは強引に関係を持たれた女性か、その関係者だったのです。受けた屈辱の復讐のために、2人を探していたのでしょう。



 犯罪行為に加担するほど仲の良い店員がいる常連客だったのですから、バーで証言を引き出し、Yを特定するのは容易かったでしょう。



 「犯人」は彼の「共犯者」を探すために、Yの名前でFacebookのページをつくり(「ピシッとスーツを着た真面目そうな写真」は、勤め先のホームページにでも載っていたのかもしれません)、年齢が近く同じ大学のサークルやゼミ等に入っていた人間に片っ端からメッセージを送り付けていたのです。それに語り手が引っかかり、2人の罪を「自白」してしまった。



 語り手は、友人の死の直接の引き金を引いてしまったばかりか、「犯人」に自分の住所まで伝えています。つまり……。



●「加害者にされる」恐怖



 今回は、「中学時代の友人だったS」という有名コピペをモチーフに、発展形を目指して書いてみました。



 「中学時代の友人だったS」は、出会い系サイトで中学時代の旧友が登録しているのを見つけ、公開されていたアドレスにメールして昔話に興じていたら、実は相手は旧友のストーカーで、彼女に成りすましてアクセスしてきた「友人たち」を誘導し、情報を集めていたことがラストで分かる……という話です。



 この話のキモである「知らぬ間に加害者側になってしまう」恐怖に、「自身にも危機が迫っている」恐怖も織り込み、より語り手に迫った怖さを目指したのですが、元のコピペの方が、被害者−加害者の関係に対して語り手の距離がある分、「巻き込まれる」「加害者にされる」恐怖が、より直接的に感じられて怖いという人も多いと思います。



 この「炎上時代」には、「加害者にされる」ことが、あるいは一番の恐怖かもしれません。



 ところで、「SNS等で知っている人と思って話していた相手が別人だった」という怪談の話型のルーツは、おそらく「山彦伝承」まで遡れるのでしょう。



 岐阜県の山間部など、「ヒトのふりをして怪異が呼びかけてくる」伝承がある地域では、「怪異は同じ言葉を繰り返せないので、互いに声をかける時は二度繰り返して呼ぶ」という「攻略法」が同時に伝わっているそうです。山中で作業をする林業従者による、(現象としての)山彦などによる指示の聞き間違いをなくし、事故を防止するための言い伝えだったのでしょうね。



 ちなみに電話口で「もしもし(申し、申しと重ねて言う意)」と言うのも、互いが人間であることを証明し合う一種の魔除けだと説明されることがありますが、こちらはガセ。単純に、最初期の電話は音質が悪かったので、聞こえているかの確認のために複数回呼びかけるのが通例だったというだけで、みんな勝手に「おいおい」とか「こらこら」とか言っていたようです。電話口の挨拶としての「もしもし」を考案したのは、電気技術者の加藤木重教さんだと言われています。



(ねとらぼGirlSide/白樺香澄)



プロフィール:ライター・編集者。在学中は推理小説研究会「ワセダミステリ・クラブ」に所属。クラブのことを恋人から「殺人集団」と呼ばれているが特に否定はしていない。怖がりだけど怖い話は好き。


このニュースに関するつぶやき

  • 『おそらく「山彦伝承」まで遡れるのでしょう』 おもしろいっ!
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  • 怖いですね。
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