やっぱりテレワーク定着しない? “なし崩し出社”が始まった今、マジメに考えた

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2020年07月06日 09:22  日刊SPA!

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写真緊急事態宣言解除されて初めての朝を迎え、通勤客らが行き交うJR品川駅
緊急事態宣言解除されて初めての朝を迎え、通勤客らが行き交うJR品川駅
 当初は戸惑いも見られたが、現在「緊急事態宣言解除後もリモートワークを継続したい」という声は7割にも達する。しかし実情は、“なし崩し出社”が横行。果たして、新しい働き方は定着するのか?

◆やっぱりリモートワーク定着しない

 緊急事態宣言下において急速に拡大したリモートワークは、働く人々に「満員電車のストレスから解放された」「自分のペースで仕事ができる」という喜びや新しい発見を与えた。だが、リモートによる働き方を継続したいと声を上げる人が多いにもかかわらず、宣言解除後の6月になると、都心のオフィス街には一斉に人の姿が戻ってきた。いったい何が起こったのか。

「宣言解除後の今、どうしてもリモートワークが困難な社員以外も自主的に出社しています。僕はこのままリモートを続けたいと思っていたのですが……」

 こう話すのは、都内の金融系企業に勤める皆川元太さん(仮名・34歳)。現在はリモートワークと出社を交互に織り交ぜた通勤スタイルになっているという。

「社内には『リアルなコミュニケーションが必要!』と部下を出社させている上司もいますが、まったく理解できません。でも最近は周囲が続々と出社し始めて……。僕も、なんとなく“行かなきゃな”という気持ちで出社しています」

 組織・人事に関する調査を行うパーソル総合研究所上席主任研究員・小林祐児氏は、このような会社の空気に引っ張られて行かざるを得ない“なし崩し出社”についてこう分析する。

「5月の調査では、企業のおよそ7割のリモートワーク実施者が『コロナ収束後も継続したい』と回答しています。しかし緊急事態宣言解除後には、過半数以上の正社員が企業側からのアナウンスなく、自主的に出社しているという“なし崩し出社”の実態が明らかに。日本人の働き方とリモートワークの相性の悪さがこうした現象を生んだと考えられます。緊急事態宣言解除後の正社員のリモートワーク実施率は、4月中旬の27.9%と比較すると25.7%と2.2ポイントの減少。今後さらにこの傾向が続くことが予想されます」

 逆戻りの要因は日本人特有の「同調圧力」に屈している部分が大きいようだ。小林氏が続ける。

「日本人の働き方はよくも悪くも“雑談”をベースにしている。それが、社内の廊下ですれちがったときや休憩時間、会議の前後など、今まで偶発的に起きていたコミュニケーションの場が、リモートワークによって奪われてしまった。これに孤独感や不安感を覚えた者たちが自発的に出社。それにより、リモートワークを続けたい人たちも『行きたくないけど周りが行っているから行かなきゃいけない』という気持ちになる。現状は、一部出社と一部リモートワークが混在する“まだらリモートワーク”状態と言えるでしょう」

 このまま “なし崩し出社”が続きリモートワーク実施率が低下すれば、コロナ感染が拡大しない限り、多くの企業は方針を元に戻してしまうのだろうか。

「リモートワークをうまく回すには、プロセス重視の日本の働き方は相性が悪い。新型インフルエンザの流行や東日本大震災の際も一時的に導入率は上がりましたが、事態が収束した後は軒並み戻っています。今回もおそらくそうした傾向を辿るのではないでしょうか。将来的にリモートワークを定着させるには、企業側が“言語化”“計画化”“役割固定”など、ノウハウやルールを形式化・明確化させる方向に意識を変える必要があるといえます」(小林氏)

◆「原則リモートワーク継続」にシフトした企業も

 一方で、すでに日立やドワンゴ、日本IBMのように「原則リモートワーク継続」にシフトした企業もある。

「ウチは『週2回まで』という制限がありましたが、緊急事態宣言下で一斉に出社しなくなりました」

 こう語るのは、都内の大手ITサービス企業でSEを務める大橋祐樹さん(仮名・51歳)。

「リアルな場がむしろ不便だと気づきました。例えば11時まで品川で会議後、丸の内で11時スタートの打ち合わせなど、物理的に無理だったことが、リモートワークで可能になった」

 また、ITベンチャー企業の経営者・桜井亮太さん(仮名・58歳)は、「コロナ以前から、我が社では出社・リモートを自由に選べるシステムを取り入れていた。『出社拒否症で職場を辞めた』、『車いすだから移動が困難』、『地方に住んでいる』など、実力はあるのに出社困難という理由だけでくすぶっているのはもったいない。ウチは、そんな人材を積極的に採用しています。コロナ禍で、やっと時代が追いついた」と、誇らしげな表情で語った。

 今後、このような企業は段階的に増えてくるのだろうか。

「緊急事態宣言をきっかけに、リモートワークがニューノーマル(新しい常態)な働き方として注目されました。HRテクノロジーの発達により、リモート業務が標準化される時代はすでにきています」

と見るのは、HR事業を手がけるjinjer HR Tech総研所長の松葉治朗氏だ。

「現状、リモートワークへの不満の声として『相手の気持ちがわかりづらい』といったものがありますが、働き方を、プロセスより成果重視の『ジョブ型思考』に変えれば、働き方の価値観も変わるのでは。また、今はVRやARなどのテクノロジーは常に進化しています。3年以内には、あたかも会議室でミーティングをしているかのような最新のツールが登場するでしょう。これを企業側が積極的に取り入れれば、将来的にリモートワークは定着するのではないか」

 時代はすでに「With/Afterコロナ」に突入している。国内企業にリモートワークが定着するには、最新テクノロジーの活用や、新しい働き方への意識改革など、企業側の工夫が必要になってきそうだ。

◆これからの管理職は「ジョブ型」 マネジメント力が必須?

 企業のリモートワーク導入に伴い一気に加速したWeb会議システムやチャットツール、ファイル共有ツールなどのICTツールの活用は、ワークスタイルを大きく変革させた。「With/Afterコロナ」の時代に突入した現在、ICTシステムサービスはますます競争が激化し、日々有用なツールが生まれている。しかしこのことが、社内の管理職に大きな危機をもたらすかもしれないのだ。

「社内会議ではZoomを利用しているが、上司が使い方に戸惑っていて、先に進まない」

 都内企業に勤める横山雄太さん(仮名・36歳)は、ため息交じりにこう語った。

「今、管理職以外は全員リモートワーク。上司は毎日印鑑を押すためだけに出社しています。はっきり言って『いなくてもいいんじゃないかな』なんて同僚と話していますよ(笑)」

 前出の松葉氏は、将来の管理職に求められるべき能力について次のように語った。

「リモートワークが定着し、企業がプロセスより個人スキル重視の『ジョブ型』にシフトすれば、管理職の業務の質も変わってきます。現在、人事管理システムはどんどん進化しています。さらに発達すれば、今まで管理職が行っていた人事管理や部下のマネジメント業務はHRテクノロジーによって代替されていくでしょう」

 それでは将来の管理職になりうる人たちはどういった意識を持てばよいのだろうか。

「これからの管理職は、単なる部下のマネジメントではなく、データを活用した経営視点でのマネジメント力を問われる。対応できない管理職は淘汰されていきます。また、今後HRテクノロジーの発達に伴い、管理職は今よりも広い視点で全体をマネジメントするオペレーション能力も必要になるでしょう」

 Web請求書や電子帳票システムなど、今まで紙ベースで行ってきた業務が徐々にデジタル化していく社会。管理職は、これから与えられる課題と真剣に向き合わなければならない。

【小林祐児氏】
パーソナル総合研究所上席主任研究員。主な研究領域は働き方改革・ミドル・シニア層の活性化。著書に『会社人生を後悔しない40代からの仕事術』(ダイヤモンド社)など

【松葉治朗氏】
ネオキャリアのプロダクト戦略に特化したプロダクトデザイン部の部長。人事向けクラウド型サービス”jinjer”のCPOを務め、jinjer HR Tech総研所長

取材・文/櫻井れき 写真/朝日新聞社 時事通信フォト Adobe Stock グラフ/パーソナル総合研究所のデータを元に作成
※週刊SPA!6月30日発売号より

このニュースに関するつぶやき

  • 『リアルなコミュニケーションが必要!』と部下を出社させている上司……寂しいので駄々をこねているだけだww
    • イイネ!3
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  • 僕はテレワークではできない業務をこなしていますが、働き方改革のためにも、テレワークは是非定着してほしいと願っています。
    • イイネ!9
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