レイソル「怪物不在」で勢い激減。ネルシーニョが描く今後のビジョンは

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2020年07月06日 11:52  webスポルティーバ

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 いつもは野太い声援や鳴り物で騒がしい柏レイソルのゴール裏も、この日ばかりは静かだった。

 聞こえてくるのは選手の声と、ボールを蹴る音、そして、ボディコンタクトの際に生じる痛々しい音のみだった。

 約4カ月ぶりに再開されたJ1リーグは、普段は聞くことのできない生々しいサウンドと、普段とは異なる静寂に包まれた。新鮮でありながらも、物足りない。なんとも不思議な空間だった。

 観客不在の異様な雰囲気のなかで行なわれた柏とFC東京の一戦。しかも、久しぶりの実戦である。「前半は両チームともに硬さが目立ち、ボールが落ち着かない展開だった」(FC東京・長谷川健太監督)のは致し方なかっただろう。

とりわけ、その影響をもろに受けたのはホームチームのほうだった。4カ月前の開幕戦で北海道コンサドーレ札幌に4−2と快勝を収めた勢いはそこにはなく、スタジアムの雰囲気と同様に、静かな戦いに終始した。

 もちろん外的要因だけではなく、迫力を欠いたのには、いくつかの理由があっただろう。そのひとつに挙げられるのが、大黒柱のクリスティアーノがメンバーから外れたことだ。


 ボールを持てば単騎で敵陣に乗り込み、チャンスと見れば、たとえ遠くからでも強烈な一撃を見舞っていく。開幕戦でも2アシストを記録したこの強烈なアタッカーの不在が、柏の攻撃に停滞感を招いた。

 代わってピッチに立ったマテウス・サヴィオは、力強さと技術は備わるものの、推進力では物足りない。

「クリス(クリスティアーノ)にはクリス、サヴィオにはサヴィオのよさがある。サヴィオは裏に抜けるより、足もとで受けるタイプ。そこで起点を作りながら、相手陣地深くまで進行していければという狙いがあった」

 CBの染谷悠太が言うように、個人の特徴が異なれば、チームとしての狙いも変わってくる。その分、サイドでの連動は生まれたものの、手数がかかったことで、FC東京の守備網を打ち破るには至らなかった。

 また、もうひとりの怪物、オルンガの不調も響いた。

 開幕戦では2ゴール・1アシストと強烈なインパクトを放ったが、この日は二度の決定機をふいにするなど、そのパフォーマンスは低調そのもの。FC東京のCBコンビの前に、力を発揮できなかった。


 そして決定的だったのは、もうひとりの助っ人、ヒシャルジソンのパフォーマンスだ。パワフルな対応でピンチを未然に防ぐ守備的ボランチは、相手のスピードについて行けず、後手後手の対応が目立った。

 7分にはレアンドロを倒して早々にイエローカードをもらうと、12分にはディエゴ・オリヴェイラを同じく後ろからひっかけてしまう。スピード不足は否めず、この時点で退場となってもおかしくはなかった。

 そして60分、今度はアダイウトンを倒し、2枚目の警告で退場に……。直後のFKがきっかけとなったCKから決勝点を許したことを考えれば、散々の出来だったと言わざるを得ない。

 結果的に外国籍選手のパフォーマンスが、敗戦を招く大きな原因となった。

 ツボにハマればその力は頼もしく、とりわけクリスティアーノとオルンガのふたりの攻撃は、J1でも屈指の破壊力を秘めている。しかし、彼らが不在、もしくは不調に陥れば、チーム力が一気に低下してしまう。それではシーズンを通して安定した力を発揮するのは難しいだろう。


 そうなると、求められるのは日本人プレーヤーの奮起だ。

 FC東京戦では、身体を張った守備で強烈なブラジル人トリオに対抗した染谷をはじめ、ボールに数多く絡み攻撃の起点となった江坂任(あたる)、あるいは高橋峻希(しゅんき)、古賀太陽の両サイドバックも、数的不利に陥ったなかで驚異的な走力を保ち、攻守に奮闘した。

 途中からピッチに立った3人も、可能性を感じさせるプレーを見せている。

 1ボランチとして防波堤となり、攻撃のスイッチを入れるパスを供給した戸嶋祥郎、鋭いドリブルで攻撃を活性化させた神谷優太と仲間隼斗。この3人はいずれも今季加入した新戦力だ。ほかにも呉屋大翔や大南拓磨など、ポテンシャルを秘めた新加入選手たちが控えている。

 J2のアルビレックス新潟から今季加入した戸嶋は、手応えと課題を口にした。

「より高いレベルで細かい修正や動きはだんだんできていると思うけど、監督やほかの選手からはまだまだだと見られていると思うし、僕もそう感じている。今日みたいな状況でも結果を出さないと、スタメンに入るのは厳しいと思う。


 ひとつひとつのパスやシュートに関わっていくことを工夫しないといけない。僕がスタートに入っていけばチームもより競争意識が出てくる。そこに割って入っていかないといけないなと思います」

 長い中断期間があったことで、今季のスケジュールは短期間に圧縮された。過密日程となれば、総力戦が求められてくる。そうしたなかで、チームの底上げは不可欠な要素だ。戸嶋をはじめとする新戦力がその重要な役割を担うこととなるだろう。

 J1復帰1年目で優勝を成し遂げた2011年も、レアンドロ・ドミンゲス、ジョルジ・ワグネルと、強烈な外国籍選手の存在があった一方で、酒井宏樹、工藤壮人、田中順也ら、若き日本人プレーヤーの台頭があった。同様の期待感が、ネルシーニョ監督の中にもあるのだろう。

「実質90日間、自粛したなかでのリーグ再開の初戦で、選手たちは終始ピッチのなかで与えられた役割をやり切ってくれた。決め切れなかったが、決定機もいくつか作ることができた。結果については残念だが、継続してやってきたことがパフォーマンスとして表われた、ポジティブな試合だった」

 百戦錬磨の指揮官は、敗戦のなかにも確かな光明を見出していた。

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