山田久志の「令和のサブマリン論」。アンダースローこそ本格派であれ!

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2020年07月07日 06:42  webスポルティーバ

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 約3カ月遅れで開幕した2020年プロ野球シーズン。無観客試合、過密日程など異例のシーズンを迎えたが、そんななか”絶滅危惧種”と言われているアンダーハンド投手たちが奮闘している。昨年のパ・リーグ新人王・高橋礼(ソフトバンク)、プロ3年目にして初の開幕ローテーションをつかんだ與座海人、メジャーから日本球界に復帰を果たした牧田和久(楽天)……。なかでも高橋礼と與座はともに24歳と若く、これからさらなる飛躍が期待される投手だ。彼らの可能性について、通算284勝の「伝説のサブマリン」山田久志氏に聞いた。

── 昨年、高橋礼投手がパ・リーグの新人王に輝き、今年はメジャーから牧田投手が日本球界に復帰し、プロ3年目の與座投手が開幕ローテーション入りを果たしました。また、ヤクルトの山中浩史投手も虎視眈々と一軍復帰を狙っています。アンダーハンドの投手が増えてきたという現況について、どう思われていますか。

「野球界にとってはすごくいいことだと思います。プロの世界でアンダーハンドの投手が成功すると、野球をやっている子どもたちにとっても選択肢が増えますから。ただ、アンダーハンド投手にアドバイスできる指導者が少ない。だから、アンダーハンドに興味があっても教えてくれる人がいないからやらないといった子が結構いるようなんです」

── アンダーハンドの向き不向きは、どのようにして見極めたらいいのでしょうか。

「下半身の柔軟性、関節の柔らかさはすごく重要です。しかも、ただ柔らかいだけじゃダメで、そこに強さも必要になってきます。あと腰の動きもオーバーハンドの投手とは異なってきますので、しっかり適正があるかどうかを見極めなければいけません。

 私は野球教室やヤングリーグ(全日本少年硬式野球連盟)の会長をしている関係で子どもたちと接する機会が多いのですが、たとえばオーバーハンドの投手の子がケガをしたとします。すると、指導者たちはすぐに野手に転向させてしまうんです。そうじゃなく、腕の位置を変えて投げさせてやるのもひとつの手段だと思っています。そのなかに適正のある子がいるかもしれません」

── 逆に、アンダーハンドの適正がないとケガのリスクにつながってしまう?

「オーバーハンドとは体の使い方が違いますから、体に柔軟性がなかったり、関節が硬い選手は難しいと思います。ただ単純に下から投げればいいというものではありません。本気でアンダーハンドに取り組むなら、しっかりそれに合ったトレーニングが必要ですし、覚悟もいります」

── 山田さんの目から見て、高橋礼投手や與座投手はアンダーハンドの適正はあると思いますか。

「彼らのピッチングには、ものすごく”しなり”を感じます。これは体、関節が柔らかくて強いという証拠で、適正はあると思います。実際、打者の反応を見ていると、球速以上に差し込まれていることが多い。それだけ威力のあるボールを投げられているということですので、アンダーハンドの特性をうまく生かしています」

── よくアンダーハンドの投手は技巧派と言われます。しかし、山田さんの現役当時のピッチングを見ていると、ストレートで押す本格派のイメージがあります。

「アンダーハンドは、カーブやスライダーなどの横の揺さぶりと緩急で勝負するイメージがあると思うのですが、『アンダーハンドこそ本格派であれ』と言いたいですね。アンダーハンドの投手が140キロを超えてきたらバッターは打てないですよ。

 アンダーハンドで140キロ近いストレートとカーブ、あと落ちる系のボールがひとつあれば絶対に成功します。ただ、あの投げ方で140キロを出すのが難しい。昔、アンダーハンドの投手とよく話をしたのですが、どうすればストレートを速く投げられるのか、みんな研究していました。それだけストレートが武器になるということをわかっていたんですね」

── 高橋礼投手は最速146キロをマークしたように、本格派のイメージがあります。

「(高橋)礼にはいろいろとアドバイスしていますが、まだまだ速くなりますよ。まだアンダーハンドの本当の形ができあがっていない。逆に言えば、それであけだけのボールが投げられるのはすごいことだし、才能を感じます。しかも身長が188センチあって、リーチも長い。それだけで大きなアドバンテージです」

── 本当の形ができあがっていないというのは?

「礼は体と手が同時に倒れるというか、すぐ下に潜り込ませたがるんです。そうではなくて、速い球を投げようと思えば、もっと反動を使わなくてはいけない。反動をつけるためには、腹筋、背筋をもっと鍛えないといけません。あとは膝の力を強くするようにとアドバイスしました」

── 與座投手についてはどうですか。

「これまでのピッチングを見る限り、まだ技巧派ですね。どちらかというと、打者とのタイミングを外すことに重点を置いたピッチングになっているように思います。たしかに、変化球のキレもいいですし、緩急の使い方もうまい。あの変化球があれば、あとストレートが2、3キロ速くなるだけで、もっとピッチングの幅が広がります。140キロは難しいとしても、130キロ台中盤を投げられたら十分です。まずはそこを目指してほしいですね」

── 近年、マウンドの硬い球場が増えています。それによる影響はありますか。

「いろんなタイプがいると思うんですけど、私は硬いマウンドのほうが好きでした。踏み出し足を着地させる際、その反動を使って投げていたので、しっかりスパイクで噛めるほうが強いボールがいきました。マウンドが柔らかいと着地のときに緩んでしまって、勢いのあるボールが投げられない。それにマウンドが掘れてしまうと、だんだん体も沈んでいくので疲れがたまりやすいんです。だから本拠地の西宮球場も、私が投げる時は硬くしてもらっていました(笑)」

── 投げづらいバッターはいましたか。

「小柄でミートしてくるタイプの打者は苦手でしたね。島田誠(元日本ハム)や大石大二郎(元近鉄)、弘田澄男(元ロッテなど)……的が小さいから投げづらいというのもあったと思うのですが、バットを短く持って合わせにくるバッターとの相性は悪かった。とくに私のボールは、ベース上で変化したり、加速したりしていたので、その前でとらえられるとなかなか厳しかったですね。

 逆に、振ってくるバッターは投げやすかった。もちろん、タイミングが合って芯でとらえられたらホームランになりましたけど、抑えられる確率は高かった。これまで渡辺俊介や牧田和久が世界相手に好投したことからもわかるように、アンダースローは振ってくる打者にはとくに有効なんです」

── 最後に、高橋礼投手、與座投手へのアドバイスをお願いします。

「これから対戦を重ねていくと、当然、打者の目も慣れてきてこれまでのようにいかなくなります。ただその時に、何度も言いますが、変化球ではなくストレートを磨いてほしい。ふたりともまだ若いですし、30歳まではストレートの速さ、質を追求してほしいですね。そうすれば、これから先のピッチングがもっと楽になる。投球術は30歳を超えてからで十分。まだまだ可能性を秘めた投手ですし、野球界のためにも頑張ってほしいと思います」

山田久志氏プロフィール
1969年ドラフトで阪急に1位指名され入団。76年より史上初の3年連続MVPに輝き、12年連続開幕投手など名実ともに阪急のエースとして活躍。88年に現役を引退し、その後はオリックスのコーチ、中日の監督などを務めた。歴代7位の通算284勝を挙げ、球界関係者から「史上最高のサブマリン」と称されている。

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  • 山田さん、オリックスの監督を、検討して下さいexclamation ��2なんちゃって���ä����١�
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  • 別にアンダースローやから遅くていい、な訳ないしな。渡辺俊介からおかしくなってる。 https://mixi.at/abpS1J3
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