脳梗塞発症者の2人に1人は再発のおそれ リスク管理や予防が必須

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2020年07月08日 17:00  AERA dot.

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写真(イラスト/今崎和広)
(イラスト/今崎和広)
 後遺症が残って寝たきりや要介護になる可能性も高い脳梗塞。特に、過去に一度脳梗塞を起こした人は再発しやすく、より積極的な予防が必要になるという。週刊朝日ムック『新「名医」の最新治療2020』では、具体的な予防対策や発症直後の治療について、専門医に取材した。

【図表】脳梗塞の患者数は?かかりやすい年代は?

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 脳の血管が詰まって起きる脳梗塞には、三つの種類がある。高血圧が原因で細い血管が詰まるラクナ梗塞、動脈硬化によってより太い血管が詰まるアテローム血栓性脳梗塞、心臓にできた血の塊が脳へ流れて詰まる心原性脳塞栓だ。

 これらの脳梗塞を予防するには、動脈硬化や不整脈などを引き起こすリスクを減らすことが第一となる。最も重要なのは血圧の管理で、130−80を標準に少しでも高ければ、減塩や減量、適度な運動をするなど生活環境を見直す。十分な効果が得られない場合には、薬を服用して低く維持することが望ましい。

 しかし、動脈硬化が進んでいる場合や、症状がなくても検査で脳梗塞があると言われた人、過去に脳梗塞を起こした人などは、より積極的な予防対策が必要だ。兵庫医科大学病院脳神経外科の吉村紳一医師は言う。

「一度脳梗塞を起こした人の2人に1人は、10年以内に再発するというデータがあるので、しっかり予防をしてほしいと思います。リスク管理や予防を怠ると再発の可能性が高まります」

■それぞれの原因に合った薬を

 脳梗塞を予防する薬には、大きく分けて抗血小板薬と抗凝固薬という二つの種類がある。横浜市立脳卒中・神経脊椎センター脳神経内科部長の城倉健医師は、次のように話す。

「抗血小板薬は、動脈硬化によって血管が詰まるのを防ぐためラクナ梗塞やアテローム血栓性脳梗塞の予防に、また抗凝固薬は、血の塊ができるのを防ぐため心原性脳塞栓の予防に有効です。抗血小板薬ではアスピリン、抗凝固薬ではワルファリンなどが使用され、新しい薬も開発されています」

 薬剤の役割が異なるため、患者それぞれの脳梗塞の原因に合った薬剤で予防対策をすることが不可欠だ。

「検査で脳梗塞と診断された人や脳梗塞を発症した人は、必ず一度は脳外科医や神経内科医、脳卒中の専門医を受診して、自分の脳梗塞の原因が脳の血管か心臓かを調べてもらい、適した予防薬を処方してもらうことが極めて重要です」(吉村医師)

 心原性脳塞栓の場合、通常の心電図検査では不整脈が出ず、原因がわからないことも多い。そのため近年では、からだに植え込んで長期間計測できる、ごく小型の植え込み型心電図記録計なども開発されている。

■治療のリミットは最大8時間以内

 また動脈硬化が進み、首の血管が通常の50%以上狭くなっている場合などには、脳梗塞の発症を予防する目的で頸動脈ステント留置術という治療をおこなうことがある。足の付け根の血管から管を入れ、頸動脈の狭くなった部分にステント(網目状の金属のチューブ)を開いて血管を広げると同時に、血管壁から剥がれたコレステロールや血の塊を回収する方法だ。局所麻酔ででき、からだへの負担も小さい。頸動脈ステント留置術は、2008年4月に保険適用されている。

 実際に脳梗塞を発症したら、一刻も早く病院に行くことが何より重要だ。顔が左右非対称になっている、両腕を前に出したとき片方が上がらないか下がってしまう、ろれつが回らない、しゃべれないなどの症状が少しでもあったら、すぐに救急車を呼び、専門の病院で治療を受ける。

「ちょっとおかしいけど一晩様子を見ようか、というのは絶対にダメです。脳梗塞は広がります。仮死状態でまだ生きている周囲の神経細胞は、すぐ治療をして詰まりを解消すれば救えます。しかし時間が経てば、あっという間に死んで、機能が戻らなくなってしまうのです」(同)

 発症直後の治療には、t−PAという薬剤を点滴して詰まった血栓を溶かす方法(血栓溶解療法)と、血管に管を通して詰まった血栓を回収する方法(血栓回収療法)がある。

 血栓溶解療法は、発症から4.5時間以内であれば治療可能だが、検査に1時間程度はかかるため、実質的には3.5時間以内に病院に到着する必要がある。

 しかし、独居で人目がないところで倒れたり、寝ている間に発症したりして間に合わないことのほうが多い。また太い血管が詰まった場合には、t−PAだけで溶かすのは難しい。

 一方、血栓回収療法は発症から8時間以内で、太い血管にも有効だ。頸動脈ステント留置術と同様、足の付け根から血管内に管を通し、詰まった部分でステントを広げ、血栓を引っかけて回収する。

「血栓回収療法のあるなしで、自宅復帰率が20%違うといわれています。また、血管の開通が30分遅れると死亡率が19%増加し、回復(軽度の障害があっても日常生活は自立)する人は22%減少するというデータもあります」(同)

 血栓溶解療法と血栓回収療法は、状況によって両方おこなう場合もある。

 ただ実際には、時間的なことだけでなく、患者の状態や近隣の病院に治療ができる医師がいないなどさまざまな理由で、これらの治療ができないことも多い。そのような場合でも、脳梗塞がそれ以上進行しないよう予防し、脳細胞を保護して血栓が飛ぶのを防ぐなど、患者の生命を救い、後遺症をできるだけ軽減するための治療がおこなわれる。

「脳梗塞の治療は、発症直後の血栓溶解療法や血栓回収療法だけでなく、薬物による進行予防や細胞の保護、早期からのリハビリ、リスク管理や予防治療も含め、トータルで考える必要があります。失われる部分をいかに少なくし、失った機能をいかに回復させるか。そのすべてが、大切な治療なのです」(城倉医師)

 脳梗塞治療の底上げを図るため、日本脳卒中学会は20年4月から、24時間365日血栓溶解療法ができる医療機関を一次脳卒中センターとして認定する方針だ。

(文・梶葉子)

≪取材協力≫
兵庫医科大学病院 脳神経外科主任教授 脳卒中センター長 吉村紳一医師
横浜市立脳卒中・神経脊椎センター副病院長 脳卒中・神経疾患センター長 脳神経内科部長 城倉 健医師


※週刊朝日ムック『新「名医」の最新治療2020』より

このニュースに関するつぶやき

  • 逆に、残りの約半数に「再発のおそれが無い」のにびっくり・・・と思って記事を読んでみたら、タイトルと記事内容が一致していないようだ
    • イイネ!1
    • コメント 0件
  • 新型ウイルス感染の入院患者、3分の1に危険な血栓 https://www.bbc.com/japanese/52752565 新型コロナ症候群(COVID-19)では、脳梗塞など血栓症の多発が報告されている。
    • イイネ!2
    • コメント 1件

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