藤井聡太七段は「一人だけ小数点第2位まで見えている」 佐藤天彦九段が語る「強さの秘密」

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2020年07月08日 17:00  AERA dot.

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写真王位戦七番勝負の第1局は、2日目、藤井聡太七段が木村一基王位を95手で破り勝利した/7月2日、愛知県豊橋市(写真:日本将棋連盟提供)
王位戦七番勝負の第1局は、2日目、藤井聡太七段が木村一基王位を95手で破り勝利した/7月2日、愛知県豊橋市(写真:日本将棋連盟提供)
 将棋の藤井聡太七段が棋聖戦で、最年少タイトルに王手をかけた。さらに王位戦でも初戦に勝利した。その驚異的な強さについて、自らも対戦経験のある佐藤天彦九段が語った。AERA 2020年7月13日号から。

【写真】「他の棋士とは違う」と語った佐藤天彦九段はこちら

*  *  *
 6月28日に行われた将棋のタイトル戦の一つ、棋聖戦五番勝負第2局。藤井聡太七段(17)は、渡辺明三冠(36)に圧勝し、2連勝した。もし次局で勝てば、史上初の17歳タイトル保持者となる。

──藤井さんの勝ちぶりを、どうご覧になりましたか。

 まさに圧勝でしたね。正確に相手の攻めを受けていって、中盤以降は差を大きく広げての勝利。本格的な戦いに入ってから藤井さんが放った「3一銀」という手が話題になりましたが、普通、ほとんどの棋士には「見えない手」なんですよ。そもそも考えないという類いの手だと思います。まず、選択肢として意識に浮上してこない。なんか、棋士の感覚からすると気持ち悪い形なんですよ(笑)。

 それに、その前の手順の組み立てが巧妙でした。飛び道具として大切な武器のはずの飛車を、王様の頭に回して、王様の近くでの接近戦を誘発。よほど読みの精度に自信がないと指せない形です。前もって知っていても多くの棋士は選ばないでしょう。実戦の藤井さんの指し回しも、先入観に捉われず、彼の「読み」の裏づけがあって指し手を重ねていったというのが顕著でした。

──棋聖戦の第1局も名勝負でしたね。

 第1局では、藤井さんが101手目で「8七香」という手を指しまして、ここが勝負の分かれ目だったと思いますね。その直前は、藤井さん側から見ると、やや形勢が良くない流れで、彼にとっては予定外の進行という局面だったんです。ですが、そこからうまく王様の周辺の守りを固めて、相手の攻めに対して着実な対応をしていった。そのことで再び形勢を揺り戻したんです。

 この時点で残り時間も少なかったんですが、そんな中でも冷静に、先入観に捉われない対応をするのは、さすがだと思いましたね。予定外の進行の中でもちゃんとリカバリーできる。若手ながら、すでに円熟味を感じさせる一局だったと思います。

──藤井さんはもう一つのタイトル戦、王位戦七番勝負でも7月1、2日の第1局、2日にわたる激戦を制しました。彼の強さを「異次元」と形容する人もいますが、その秘密は何だとお考えでしょうか。

 圧倒的な計算力でしょう。よく、「プロ棋士は何手くらい先を読むんですか」と聞かれますが、プロ同士の戦いでは微妙な均衡を保ったまま、暗闇を手探りで進むような難解な局面が続きますから、先を読むって言っても、詰将棋とは違う大変さがあるんですね。なのに藤井さんの場合は、プロ同士の難解な局面においても、10手、20手先まで読んでいる感じがするんです。将棋の歴史の中でもこれだけ先を読める人がいたのかなと思うぐらいです。

 算数の四則計算に例えてみれば、他の棋士が計算力を駆使して「240ぐらいだ」と概数で計算値を割り出すのに、藤井さんだけは「241.51だ」みたいに、小数点第2位くらいまできっちり答えてくるような(笑)。アバウトなところがほぼない印象なんです。(ノンフィクションライター・古川雅子)

※AERA 2020年7月13日号より抜粋

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