昼間に強い眠気が襲う「過眠症」とは? 理解不足で3回以上解雇された人も

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2020年07月10日 17:00  AERA dot.

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写真※写真はイメージ(Getty images)
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「怠けている」。そんな周囲の理解不足から生きづらさを抱えているのが、“過眠症”の人たちだ。慢性的な睡眠不足による眠気との鑑別が難しいなど、診断面でも多くの課題を抱えているという。過眠症とはどんな病気なのか、体験者の声とともに紹介する。

【過眠症の種類はこちら】

*  *  *
 過眠症は睡眠障害の一つ。「昼間に耐えがたい眠気に襲われる」のが特徴で、商談中など眠るのが考えられない場面で居眠りする人もいる。普段の生活にも支障が出るが、それと同じくらい当事者を苦しませるのが周囲の理解不足だ。「規則正しい生活をすれば治る」といった不適切な助言や、「寝すぎているから眠くなる」といった偏見などのため、つらい思いをしている人が少なくない。

「過眠は病気で起こる可能性があることを、多くの人に知ってもらいたい」

 そう願うのは過眠症患者の一人、小嶋麻里奈さん(33)だ。2017年、同志の過眠症患者とともにNPO法人日本過眠症患者協会を立ち上げた。

 小嶋さんを苦しめていた症状は、強い眠気よりも、むしろ10時間前後にわたる長時間の睡眠だ。それを削ると、体調不良に襲われる。典型例ではなかったため、なかなか診断にたどり着くことができなかった。

 最初に症状が表れたのは高校1年のときだという。

「それまではむしろ、睡眠時間が短いほうだったんです。ですが、あるとき突然、原因不明のとてつもない眠気に襲われて、それから睡眠時間が長くなりました」

 初めは環境の変化で疲れていたためだと思っていたが、そうではなかった。1日の睡眠時間は短くても9時間、長いと21時間にも及んだ。平日は学校から帰宅した夜7時から翌朝7時まで睡眠を取る。休日は不足した睡眠を補うために、十数時間の睡眠。こうすれば授業中に眠気に襲われずにすむ。なんとかやりくりしながらの高校生活だった。

 当時、小嶋さんが感じていた眠気は「恐怖を感じるほどのもの」だったという。

「頭にとてつもない強力な睡眠薬を打たれて、無理やり寝かされるような眠気。呼吸が止まっていくような感じで眠りに入り、いくら寝ても同じ眠気が襲ってくる。このまま意識がすべてなくなって、永遠に起きられないのでは……と感じたことは何度もあります」

 もちろん、病気を疑った。

 最初は一般内科や精神科で診てもらった。だが、原因はわからない。それどころか、「よく眠れるとはいいじゃないですか。他の患者さんは眠れなくて悩んでいるのに」といった無神経な対応をされたことさえあった。

 その後、インターネットで調べた睡眠障害専門の医療機関で睡眠ポリグラフ(PSG)検査(睡眠の質や量を調べる検査で、睡眠時無呼吸症候群、周期性四肢運動障害などの発見に役立つ)を受けたが、異常は見つからなかった。

「結局、このときは20人以上の専門医に診てもらいました。でも、やはり原因はわからないまま。ナルコレプシー、特発性過眠症……。診断は行く先々の医療機関によって、すべて違いました(過眠症の解説は後述)」

 大学卒業後は、1日11時間程度の睡眠を取り、パートで生計を立てる。通勤時間がかからないよう、勤務先は自宅の近くにした。だが、こうした働き方さえ難しい過眠症患者は少なくないという。睡眠時間が後ろにずれる「概日リズム睡眠障害」を合併している人も多く、同じ時間に起きることができないからだ。

「患者会には職場を3回以上解雇された人もいます。切実な問題です」

 過眠症について、日本大学医学部客員教授で東京足立病院副院長の内山真医師(精神科医)はこう解説する。

「過眠症には大きく分けて、脳の機能に関連して起こるもの、夜間睡眠の質や量の低下で起こるものがあります」

 前者の代表的なものが「ナルコレプシー」や「特発性過眠症」で、後者で質の低下で起こるのが睡眠時無呼吸症候群だ。

 このほか、うつ病、甲状腺の病気、がんなど別の病気の症状の一つとして、症状が表れることもある。ちなみに、前出の小嶋さんのケースは、最終的には難病に伴う睡眠障害であることがわかったという。

 ナルコレプシーは最近の研究で、オレキシンという覚醒を維持するために働く脳内物質の不足が原因であることがわかってきた。

 睡眠障害に詳しい、すなおクリニック(さいたま市大宮区)院長で精神科医の内田直医師によると、代表的な症状は、日中に耐えがたい眠気に襲われ、眠ってはいけない状況下でも眠ってしまう睡眠発作。一方で、夜間は途中で何回も起きる中途覚醒が起こる。

「眠る直前に非常にグロテスクな怖い夢を見る、金縛りに遭うといったことも、ナルコレプシーの特徴的な症状といえます」(内田医師)

 このほか、驚いたり、激怒したり、思いきり笑ったりと、感情が高ぶった後に急に力が抜けるカタプレキシー(情動脱力発作)という症状を伴うことがある。

 もう一つの特発性過眠症とは、睡眠不足がないにもかかわらず、過去3カ月以上にわたって、昼間に強い眠気に襲われる、1日に11時間以上眠る、といった症状があった場合に考えられる過眠症だ。

 この症状に加えて、日中の眠気を診断するMSLT(反復睡眠潜時検査)で、睡眠潜時(昼寝をしたときに、実際に眠りにつくまでの時間)が8分以下など、診断基準が設けられている。

 内田医師は、過眠症の診断の難しさを次のように説明する。

「こうした基準は、睡眠不足症候群などでも満たしてしまうことが多く、単なる睡眠不足であっても特発性過眠症と誤診されてしまうことがあります。それを防いで、より正確な診断をつけるため、1週間前から睡眠を測る装置を使って睡眠状況を確認した上で、MSLTを行います」

 治療は薬物療法が中心で、ナルコレプシーではモディオダールやリタリン、ベタナミンが、特発性過眠症ではベタナミンが使われる。今年2月には、特発性過眠症に対してモディオダールが保険適用となった。ナルコレプシーに対しても、原因に着目した新しい薬の開発が進んでいる。

 とはいえ、過眠症の人たちが置かれている環境は、「10年前とほとんど変わらない」と、内山医師は打ち明ける。

「周囲の理解が得られず、何とか原因をはっきりさせて治したいと、医療機関を受診する方が大勢います。少なくとも、病気のために日中、耐えがたい眠気で困っている人を怠け者と見なさない正しい知識の啓発が必要だと思います」

(本誌・山内リカ)

※週刊朝日  2020年7月17日号

このニュースに関するつぶやき

  • ナルでも難病でもないけど薬切らしたから20時間睡眠で食欲と体力が激減してる。
    • イイネ!1
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  • 病気って、実際にかからないと、本当の意味での理解は得られないですね。
    • イイネ!67
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