国鉄時代はたくさんあった循環列車  時刻表でぐるり一周、懐かしの面影をたどる

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2020年07月11日 17:00  AERA dot.

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写真循環列車の代名詞ともいえる山手線 (c)朝日新聞社
循環列車の代名詞ともいえる山手線 (c)朝日新聞社
 ぐるりと一周する列車といえば、山手線や大阪環状線が有名だけど、実はそうした路線は全国で10線区にのぼる。一方、路線や線区とは関係なしに周回する列車もあり、かつては国内各地で活躍してきた。そんな“循環列車”の面影を「時刻表」に追ってみた。

【写真】1968年当時の循環急行「しろがね」はこちら

*  *  *
■各地で活躍するぐるり一周列車

 2020年6月現在、わが国において循環ないし環状運転をしている線区は10カ所を数える。もっともわかりやすい例が東京の山手線(JR東日本)と大阪の大阪環状線(JR西日本)だろう。「時刻表」に掲載されている路線図などを見れば路線そのものが周回しているのが一目瞭然。旅客列車の大半が環状運転をしており、通常の上り・下りではなく「外回り・内回り」で案内されているのも特徴だ。両線とも環状運転列車のほか車庫への入出庫や他線との直通列車も多数運転されているものの、環状路線の代表格であることは間違いない。

 ここで、「環状」と「循環」との区別がややこしいが、この両線に見られるように、単純に一周するのではなく「ぐるぐる」と周回運転を続ける路線や列車を「環状」、それ以外の起点に戻る列車を「循環」とすることができる。山手線などで「環状運転」中は特定の行き先を示さず「外回り・内回り」としているのもそのためで、「循環列車」のケースでは行き先がハッキリとしているという違いもある。

 現在、以下の10路線で「環状・循環運転」が実施されている。

 ・札幌市電      
 ・山手線
 ・ディズニーリゾートライン
 ・大阪環状線
 ・名古屋市営地下鉄名城線
 ・地方鉄道富山軌道線
 ・都営地下鉄大江戸線
 ・山万(やままん)ユーカリが丘線
 ・神戸新交通ポートアイランド線        
 ・伊予鉄道松山市内線

 このうち、名城線は1965年に日本最初の環状線地下鉄として開業、全長26.4キロメートルは大阪環状線の21.7キロをしのぐ。札幌市電は2015年に延伸によって環状化されたもので、環状ルートとすることで利用者増をはかっている。

 各線とも環状線を持つものの、大江戸線以下は運転系統としては「循環運転」に近い。大江戸線は全長40.7キロのうち27.8キロの環状部分を持つが、山手線のように環状部分のみの周回運転は実施されていない。富山軌道線は1973年以降環状運転が途絶えていたが、富山市がまちづくりにあたり公共交通を生かす施策を打ち出し、2006年に富山ライトレールを開業、2009年に環状運転の復活へとつなげている。

■ルート探索も楽しい循環列車あれこれ

 ここで過去にタイムスリップして循環列車を見てみよう。残念ながら(?)このスタイルの定期列車はわが国では現在運行されていない(クルーズ列車等で設定されるケースがある)。そこで、国鉄時代の時刻表を何冊か手繰り、1965年4月ダイヤをもとにその実態を探ってみることにした。
 
 この時代に運行されていたのは別表のとおり。主要都市に位置する拠点駅を起終点に、複数の本線系統とその間を結ぶ連絡路線を巧みに生かしてルートを形成している例が目立つ。例外を挙げるとすれば、大半がローカル線となる「そとやま・五葉」(盛岡発着)と複数の本線またぎで周回する「しろがね・こがね」(名古屋発着)だろうか。

 いくつか列車を見てみよう。「いぶり」は倶知安(くっちゃん)〜伊達紋別(だてもんべつ)を胆振(いぶり)線経由で結び、札幌発着の周回ルートとしていた列車だ。比較的長寿をまっとうしたが、胆振線廃止(1986年11月)を前にした1980年10月に姿を消した。拠点が大都市・札幌で、ルート上に小樽や東室蘭などの都市や登別などの観光地を擁していたため、利用者に恵まれていたに違いない。一方、旭川の拠点とする「旭川」は、石北本線と名寄本線、宗谷本線という本線筋を辿ってゆくものの、沿線のめぼしい街としては紋別が目立つ程度で、どのような利用状況だったのだろうか。列車は1962年5月から1968年10月という短命に終わったが、名寄本線も1889年5月に廃止されてしまった。

 房総の準急「外房」「内房」は、姿を変えながらも比較的後年まで現役にあった。外房線と内房線では1972年7月の電化を機に特急「わかしお」「さざなみ」が設定されたが、同時に急行「みさき」「なぎさ」が房総一周列車として登場、1975年3月まで運行されていた。面白いことに、勝浦〜館山は普通列車としての運転で、私自身は「急行券なしで急行(165・163系)に乗れる!」と喜んでいたのを思い出す。

■循環走行距離540.9キロメートル。ワイドスケールの循環列車も!

 この房総一周列車の走行距離は301.4キロに及ぶ。「わかしお」などの房総特急が当時としては違例なまでの短距離特急として話題になったものだが、房総そのものは意外と長い路線を持っていることがわかる。ただし、これらの房総一周列車は蘇我を接続点とする「ラケット型」運転で、純粋な環状運転となっている「いぶり」や「旭川」などとは同列にしづらい面もありそうだ。

 では、ロングラン第1位の列車はというと、名古屋を拠点に高山や金沢、米原などを辿る「しろがね」「こがね」が540.9キロでその座を獲得。高山本線を全線カバーするとともに、ルート上に複数の主要都市を持つことから意外な区間に直通旅客がいたのかもしれない。1972年3月に役目を終えてしまった。なお、臨時列車になるが、1971年から翌年にかけて大阪発着で設定されていた急行「アルペン」は東海道本線〜北陸本線(直江津)信越本線〜篠ノ井線〜中央本線〜東海道本線という大周回コースが組まれ、962.6キロに及ぶロングラン列車であった(大阪〜米原は重複)。

 九州でもスケールの大きな循環列車が活躍していた。大分発別府ゆき準急「ひまわり」、別府発大分行き準急「火の山」などと記すと、「たった12.1キロしかないけど?」と思われそうだが、わざわざと言おうか、博多や熊本などを辿ってくる摩訶不思議な列車なのであった。走行距離は478.6キロに及ぶが、沿線には起点の大分はもちろん、博多や小倉など大都市が点在するほか、観光地も擁しており、乗客を入れ替えながらもそこそこの利用者がいたのではないかと推察できる。

 現在は、大分〜博多、博多〜熊本、熊本〜大分それぞれに特急が設定されているが、当時は車両の絶対数の関係などからひとつの列車(編成)で複数の役割を持たせていたとも考えられる。また、現在と比べ移動を鉄道に頼る割合が高かったため、複数の線区をまたぐ直通列車の利用価値がいま以上にあったに違いない。

 ちなみに、外国でも環状路線や循環列車を見ることができる。比較的訪問しやすい例としては韓国ソウルの地下鉄2号線が環状路線で環状運転を実施しているほか地下鉄6号線にラケット型の環状部分がある。

 また、台湾には台北を起終点とする一周列車が運行されている。「環島之星」と呼ばれるツアー列車だが、一部が「@光号1・2列車」として一般発売されており、ツアー外でも乗車可能だ。およそ13時間30分に及ぶ長旅になるが、私自身も海外渡航の制限が解除されたら機会をつくって乗ってみたいと考えている。(文・植村 誠)

植村誠(うえむら・まこと)/国内外を問わず、鉄道をはじめのりものを楽しむ旅をテーマに取材・執筆中。近年は東南アジアを重点的に散策している。主な著書に『ワンテーマ指さし会話韓国×鉄道』(情報センター出版局)、『ボートで東京湾を遊びつくす!』(情報センター出版局・共著)、『絶対この季節に乗りたい鉄道の旅』(東京書籍・共著)など。

このニュースに関するつぶやき

  • 「列車は1962年5月から1968年10月という短命に終わったが、名寄本線も1889年5月に廃止されてしまった」‥‥列車より路線が先に廃止っておかしいだろ(※名寄本線の廃止は1989年)。
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  • 編成的にきついけど、十三〜石橋〜宝塚〜西宮北口とぐるっと回る電車があると面白そうな。
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