東京五輪の「暑さ」対策は大丈夫なのか? スポーツ医に聞いてみた

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2020年07月13日 07:00  AERA dot.

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写真※写真はイメージです(写真/Getty Images)
※写真はイメージです(写真/Getty Images)
 1年延期になったとはいえ、来年夏に開催される東京2020オリンピック・パラリンピック大会に向けて、「暑さ」対策は重要な課題です。アスリートたちは、暑さの中でも最高のパフォーマンスを発揮するために、それぞれ対応策を講じていることでしょう。また、世界各地から集まる観客や、大会を支えるスタッフやボランティアの安全を確保し、熱中症を予防するための取り組みが進められています。現場でどんな準備がされていたのか、また参加者はどんなことに注意すればよいのか、日本スポーツ医学財団理事長の松本秀男医師に聞きました。

*  *  *
 例年、酷暑が続いている東京で、オリンピック・パラリンピックが開催されることが決まって以来、「暑さ」への対策の必要性が叫ばれてきました。新型コロナウイルス感染症の影響で、開催は1年延期となりましたが、ちょうど1年後の夏に本番はやってきます。

 暑さに備えて、危険な熱中症の発生をできる限り少なくすること、そして発生した場合には適切な対応が取れるような体制づくりが求められています。

 東京の暑さを見据えて、IOCはすでに対策を打ち出しています。競技を、朝から正午までの間、あるいは夕方の涼しい時間帯におこなうよう要請が出されました。また、昨年11月にはオリンピックを代表する競技であるマラソンと競歩の開催地が、東京から気温が5、6度低い札幌へと変更されました。9月に中東のカタール・ドーハで開催された世界陸上選手権で、酷暑を避けるため深夜におこなった女子マラソンで、4割もの選手が棄権する事態が起こったのが理由だといわれています。突然の開催地変更で大きな混乱が生じましたが、選手の健康を考慮しての決断です。

 また、東京都でも、東京2020オリンピック・パラリンピックにおける「暑さ対策」を目的とした、東京都「暑さ対策」推進会議が設置されました。ここでも、アスリートが最高のパフォーマンスができるよう、そして観客が快適に観戦できるようにするため、さまざまな対策について協議をおこなっています。

 熱中症を予防するためには、体温を下げるための工夫が必要です。そこで、「からだを冷やす氷や保冷剤の配布」「競技会場周辺や人が多く集まる場所に、テントや冷風機、クールミスト噴射などを備えたクールエリアの設置」「観客席への屋根の設置」「木陰の確保」などが提案されました。ボランティアの人たち用に、両手が使えるかぶるタイプの日傘なども、考案されています。

 また、万が一の事態に備えて、会場には必ず、観客1万人あたり医師1人と看護師2人が待機する診療所が設置されることが決まっています。

 熱中症から身を守る取り組みの重要性については、メディアを活用した情報提供がおこなわれています。

 一方、選手たちは、暑さの中で自身のコンディションを調整し、メダル獲得を目指すことになります。多くの選手たちが、各競技団体のスポーツドクターやコンディショニングコーチの指導の下、栄養・水分補給状況や体重変化などを管理して、個別に水分補給計画やクーリングによるコンディション調整、暑さを想定したトレーニングなどを実施しているでしょう。最近のスポーツ科学により、運動時にはタイミングよくからだを冷やすことでパフォーマンス低下を抑制できるという研究結果をふまえて、専用のクーリングジャケットを活用している選手もいます。

 パラリンピックでは、いくつかの競技に頸髄(けいずい)損傷などによる四肢麻痺の選手が参加しています。この障害の特性として、体温調整が難しいため、選手はベンチに下がった際に頸部などをアイシングすることが必要で、チームトレーナーがそれをおこなっています。またベンチ内には、選手の体温を下げるための大型扇風機なども設置されます。

 熱中症というと、屋外の炎天下でなるものと思いがちですが、じつは蒸し暑い室内でも起こります。熱中症には、気温だけでなく湿度も大きく影響します。ヒトは汗をかくことで体温を下げて調節しますが、湿度が高いと汗をかいても蒸発しないため気化熱が奪われず、体温が下げられないのです。

 また、脱水や塩分バランスの崩れも発汗ができなくなる大きな原因です。熱中症を防止するためには、こまめに水分と塩分を補給することを忘れてはいけません。

 熱中症になりかけたときは、涼しい場所に移り、からだを氷などで冷やすと有効です。初期症状としては頭痛やめまい、倦怠感(けんたいかん)などが見られ、重症になるとけいれんや意識障害が起きて、最悪の場合には死に至ることもありえます。もし、意識がなければすぐに救急車を呼びましょう。

 こどもや高齢者、障害のある人は、体温調整がうまくできないことがあり、熱中症になるリスクが高いため、特に近くにいる人が注意してあげてください。

 熱中症対策は、自分でおこなうのが基本となります。みなが熱中症に対する正しい知識を持って十分な対策を取り、真夏のオリンピック・パラリンピックに向けて万全の準備をしておきましょう。

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