『ザ・ノンフィクション』“家族結束”を説き、子どもの生き方を奪う父親「お父さんと13人の子ども 前編〜7男6女 闘う大家族〜」

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2020年07月13日 21:42  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。7月12日は「父さんと13人の子ども 前編〜7男6女 闘う大家族〜」というテーマで放送された。

あらすじ

 大阪の7男6女の大家族・澤井家。一家は、梅田のビル地下街で居酒屋を経営している。父の淳一郎は居酒屋を経営しながら家事、育児にも協力的で、休日は子どもたちの空手の応援にも駆けつける。しかし3年前、淳一郎が跡継ぎにと決めていた長男が何も言わず突然家を出ていってしまう。また、進学校に通い成績優秀の三男も、家の事情に鑑みて大学進学を諦めるが、居酒屋で仕事をすることに迷いを感じている。それを察した淳一郎は三男を叱責、100万円を渡し「旅させたほうがええんちゃうか」と突き放す。そんな中、新型コロナウイルスの影響が、澤井家の店も直撃してしまう。

出て行った長男、自分の意見を言えない三男

 淳一郎は子どもたちの面倒をよく見ている。大阪・梅田という繁華街で居酒屋を18年続けている点からしても、頭のいい人なのだろう。しかし、それでも大家族の親は嫌いだ、と淳一郎を見てあらためて思った。

 淳一郎は、進学を諦めて、居酒屋で働き続ける生活に疑問を抱く三男を、家族全員が揃う場で糾弾する。なぜ、父と息子二人きりで話をせず、「家族会議」の形をとるのだろう。すでに店で長年働いている兄や姉を前にし、三男が「店以外で自分の可能性を試したい」などとは言えないだろう。その糾弾の場で、「家族団結の必要性」を淳一郎は説き、三男個人の問題を家族の問題にすり替えていた。淳一郎は、子どもを「家族」としては見ているが「個人」としては見ていないように思えた。

 さらに気になるのが、淳一郎の話し方だ。家族会議では、ひたすら淳一郎が話し続け、たまに子どもたちへ「どっちだ?」で迫る。それに対し「違う!」「そうだ!」と、淳一郎が判断する形で進められていた。「子どもの話を聞く」という選択肢が、そもそも淳一郎にはないのだろう。これでは「会議」でも「話し合い」でもなく「演説」だ。

 これでは子どもは、この人になにを言っても無駄だと諦めてしまうように思う。大家族の親を見ていて、いつも思うのは「子どもに諦めさせるスキル」の高さだ。これまで『ザ・ノンフィクション』で見てきた大家族の親は、ここに関して皆判で押したように同じ性質がある。諦めることに慣れる前に家を出た長男を私は応援するし、三男も迷いがあるなら家から出ていったほうがいいように思う。

 淳一郎は、バブル時代で景気のよかった自分の若い頃と違い、今の若い人の置かれた状況は厳しいのだから家族の結束こそが大事だ、と語っていた。前半は同意するが、後半の「家族の結束こそが大事」については、どうだろうか。それは選択肢の一つでしかないだろう。何があるかわかならいこれからの時代は、「多様性」も選択肢にあるではないか。家と店から出た長男が、淳一郎の思いもつかない方法で家族を支えることもできるかもしれないのだ。

 また淳一郎は長男の失踪後、店を継いでほしいという願いを次男と三男に託すが、なぜ娘たちではダメなのだろう。淳一郎の男女観は古いのではないか。店は、やる気と店への愛情がある人が継げばいいし、子どもが全員店を継ぎたくなければ他人が継いだっていいはずだ。コロナ禍で飲食店の置かれた状況が非常にシビアである以上、全員が消耗する前に店をたたむ、という選択肢も検討していいだろう。

 澤井家の娘たちは番組内で見る限り父親と家族にとても従順に見えた。淳一郎自身はそうは思っていないのだろうが、番組を見る限り「永遠に自分の意見に従順であること」が淳一郎の理想の子ども像に私には思えて、げんなりとした。

 次週のザ・ノンフィクションは今回の後編。コロナ禍が店を直撃するだけでなく、淳一郎自身がコロナで倒れてしまう。

ジョンマキのヤラセ告発に思うこと

 ところで、『ザ・ノンフィクション』では、とても気になる問題が起きている。人気シリーズ「マキさんの老後」に出ていた名物コンビ「ジョンマキ」の二人が、番組内で過剰なやらせがあったと7月7日発売の「週刊女性」(主婦と生活社)で告発しているのだ。

 私も同誌の告発記事を読んだが、記事からは12年続いた人気シリーズの多くが「演出」というレベルを超えた「嘘」の領域であったとある。この検証、実態の報告こそ『ザ・ノンフィクション』でやってほしいと願うが、残念ながらメディアという業界は、伝えることが仕事でありながら、他社の失敗は喜々として伝えるが、自社の失敗はその詳細までは伝えない傾向があるため、期待できないだろう。それはフジテレビに限らず、また、テレビに限らずウェブメディアにもその傾向はある。

 「マキさんの老後」は大好きなシリーズだったのだが、二人が嫌々それに協力していたということが悲しい。制作スタッフと出演者が楽しく同意できるレベルなら、演出の範疇ともいえるが、出演者が嫌な気持ちになるような「嘘」は見たくない。

このニュースに関するつぶやき

  • こっちも"演出"が問題にならないように、しっかり注意して下さいね。"演出"には充分注意して下さいね。
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