湘南vs札幌ではっきり見えた。コロナ禍のJ1はクラブ格差を明確に示す

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2020年07月14日 07:11  webスポルティーバ

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 後半開始に向け、選手たちがピッチに姿を現し始めたときである。コンサドーレ札幌のベンチ前で動きがあった。

 今季新加入のFWドゥグラス・オリベイラが、チームスタッフから何事か指示を受ける。体の大きな背番号33は、ウンウンとうなずきながらも、早くプレーしたいと急く気持ちを抑え切れない様子だった。

 前半の札幌は、相手ディフェンスを巧みにはがす本来の攻撃ができていなかった。ボールを保持してはいても、相手ゴールへ向かえない。攻撃陣のテコ入れが行なわれることは、決して意外なことではなかった。

 だが、ピッチ脇に目を向けると、ドゥグラス・オリベイラとは別に、すでに交代出場を待つふたりの選手が立っていた。

 ハーフタイムにして一気に3枚代え――。それでも驚きの一手ではあったが、その後ろには、さらにもうひとりの交代選手が待っていたのである。

 J1第4節、湘南ベルマーレvs札幌でそれは起きた。

 札幌は後半開始に合わせ、先発出場のDF進藤亮佑、MF荒野拓馬、MF深井一希、MFチャナティップに代え、MF宮澤裕樹、MF金子拓郎、MF高嶺朋樹、FWドゥグラス・オリベイラを投入。ハーフタイムにして、一気に4枚代えである。

 今季、Jリーグでは中断明けの第2節から、選手交代についての特別ルール、すなわち、1試合に交代できる選手を3人から5人に増やすことが採用されている。選手の体調面に配慮した今季限定の措置だ。

 従来のルールであれば、一度に4人の選手を交代させることなどできず、昨季までに前例があるはずもない。今季においても、一度に3人の交代はすでにいくつかの試合で行なわれてはいたが、同時に4人交代となると、この試合の前日に行なわれた大分トリニータvsヴィッセル神戸で、後半30分に神戸が一度行なったのみだった。

 しかし、札幌のそれは、神戸の”記録”を30分も短縮するハーフタイムでのこと。驚きは前日の出来事以上に大きかった。

 とはいえ、札幌のミハイロ・ペトロヴィッチ監督に”記録更新”の狙いはなかっただろう。歴戦の知将は「1週間での3試合目で選手たちに疲労があった。(もともとは)途中で入った選手を先発出場させることも考えていた」と言い、こう語る。

「動きのキレがよくない選手を代えようと思っていた。本来なら(ハーフタイムに)3枚交代させようと思っていたが、チャナティップが太ももに問題があり、大事を取って交代させたので4枚になった」

 この交代に合わせ、MF駒井善成が右シャドーから右DFへ、さらにはDF田中駿汰をリベロからボランチへと移したため、結果的に札幌は6つのポジションで選手が入れ替ることになった。かなり大胆な変更ではあるが、指揮官の言葉に従えば、戦術的な狙いうんぬんというより、選手の疲労を考慮した面が大きかったようだ。

 実際、試合の流れを変えるという意味で、この大胆策が功を奏したのかと聞かれれば、すんなりうなずくのは難しい。

 後半開始からしばらくは、ドゥグラス・オリベイラとFWジェイという個人能力に優れた選手が前線にいることで、早いタイミングで縦にボールを入れる攻撃が形になった。後半9分にはふたりの連係から、ジェイが左ポストを叩く強烈なシュートを放ってもいる。

 しかし、札幌は時間とともに攻め手を失い、あまり工夫のないクロスを放り込むしかなくなった。その一方で、湘南のロングボールに手を焼き、DFラインの背後を突かれてピンチを招くケースが増えた。ゴールの匂いは一向に漂ってこなかった。

 同じことは、湘南にも言えた。

 湘南は4枚代えこそなかったものの、後半13分と27分にそれぞれふたりずつ選手交代。湘南の浮嶋敏監督は、「後半は押し込む回数や時間が多かった」と語っていたが、そこにどれほど得点機があったのかは疑わしい。指揮官が「ペナルティーエリアに入ってくるプレーを多くしないと、ゴールは割れない」とも話したとおりだ。後半39分に最後の交代カードを切り、すべての交代枠を使い切ったが、結局、得点には結びつかなかった。

 湘南は前節の横浜F・マリノス戦で、先制点を奪いながら相手の3枚代えをきっかけに逆転を許し、2−3と敗れている。今回はその分を取り返したかったところだろうが、どうにか開幕戦からの連敗を3で止め、勝ち点1を確保するにとどまった。

 連戦の疲労が蓄積しているなか、選手交代を活用しながらギアを一段上げる。それが難しかったことについては、両チームに共通した。だとすれば、スコアレスドローは妥当な結果だったと言わざるを得ない。

 今季J1が再開されるにあたり、「過密日程」と「交代枠増」がキーポイントになることは、十分に予想されたことである。

 中3日程度で試合が続くとなれば、同じメンバーですべての試合を戦い続けることは不可能に近い。当然、選手に疲労が蓄積しないよう、ひいては大きなケガにつながらないよう、メンバーを入れ替えながら連戦をこなしていく必要がある。

 つまるところ、重要なのは「選手層」。ときにメンバーを大きく入れ替えることがあろうとも、それでもなお、チーム力を落とさないだけの戦力を有している必要がある。それは、札幌や湘南だけの課題ではない。

 交代枠が増えたことによって、戦略変更やそれに応じた選手起用がより重要になるという見方もあるだろう。いわば、監督の手腕が問われる、というわけだ。

 しかし、どんなに優れた戦略であろうとも、それを実践できる駒がいなければ、机上の空論に過ぎない。監督がやれることには、チーム事情に応じた限界もある。

 時計を1日前に巻き戻せば、現在首位の川崎フロンターレは柏レイソルとの試合(3−1で勝利)で、それまで先発出場していたMF大島僚太、MF田中碧をベンチに置き、逆に控えだったMF守田英正を先発させた。

 大島、守田はA代表、田中は五輪代表選手である。その豪華さに、際立つ選手層の厚さを感じずにはいられない。

 ペトロヴィッチ監督は達観したようにこう語る。

「札幌は資金力のあるチームではなく、代表選手がベンチにいるようなチームではない。(田中、金子、高嶺ら)大学を出た新卒の選手たちがここまでよくやっている。そういう選手を育てながら、チームとしてさらに成長させていきたい」

 今季J1は4カ月以上に及んだ長期中断が明け、ようやく再開にこぎ着けた。だが、例年とは別の意味で、厳しく難しいシーズンになる。それは、誰もがわかっていたことではあるだろう。

 再開からわずかに3節を消化したばかりの現在、早くもその兆候は見えている。

このニュースに関するつぶやき

  • 選手枠ひとつ空けておいたうえに、野手を全部使い切って投手を代打に送るという失態をやらかした球団もあるからね。選手起用と交代枠には気をつけよう。
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