小池百合子はテレビ討論から逃亡で戦わずして勝利、左翼共闘失敗よりも不気味な桜井誠の17万票

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2020年07月14日 21:03  日刊サイゾー

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写真小池百合子
小池百合子

 366万票を獲得し、得票率では6割近くの支持を集めた現職・小池百合子氏。下馬評通り、今回の都知事選は、彼女の圧勝に終わった。

 コロナ禍の最中に行われた今回はテレビでの討論会が実施されず、小池に立ち向かった立憲民主党、日本共産党、社会民主党の支援する宇都宮健児氏は約84万票、れいわ新選組代表の山本太郎氏は約66万票という結果に終わっている。

 はたして、この選挙結果はどのような意味を持つのだろうか? 政治学者の中島岳志氏に、今回の都知事選を振り返ってもらった。

コロナ禍を「都合よく使った」小池百合子

ーー今回の都知事選は小池百合子の圧勝に終わりました。この結果について、中島さんはどのように振り返るでしょうか?

中島 新型コロナウイルスへの対策や東京オリンピックの延期への対応など、小池氏は現職として数多くテレビに露出していました。小池圧勝という結果は4月頃から既定路線とされていました。

 また、小池氏が非常にうまくやったのが、安倍内閣の新型コロナ対策に対して厳しく迫る構図をつくったこと。通常、危機のときには与党が強くなりますが、今回のコロナ禍で安倍内閣は大きく支持率を下げています。その代わり、内閣を突き上げる姿を見せることによって、小池氏は自分の支持を集めることに成功したんです。

 その一方、いろいろなものが見えなくなってしまった選挙であったと思います。通常の選挙であれば、「4年間の東京都政の中で公約は果たされたのか? どのような仕事がなされたのか? といったマスコミでの議論や検証を通じて、有権者は投票する候補を判断します。これまで、石原慎太郎氏や猪瀬直樹氏でも行っていたことです。しかし今回、「公務に専念する」としてコロナ禍の状況を都合よく利用した小池氏は、そのような機会から逃げ、いくつかのネット討論会に参加したのみ。ネットでリモート出演できるならば、テレビにも出られるはずですよね?

ーーコロナを口実にして、小池氏はテレビ討論会から逃げた、と。

中島 複数のテレビ関係者から聞いたのですが、コロナの問題で小池氏がテレビ出演する場合、質問事項は限定されてしまうそうです。彼女は4年間の都政で、記者クラブを自らの広報のような存在に変えました。小池氏も記者クラブで自分が指名した人にしか質問をさせないし、記者の側もこの先の関係を考えて、小池氏の意をくんだ質問しかしない。そうすると、記者に迫られてしどろもどろになるような姿がカメラに映らなくなります。その結果、世間の関心は「小池さんのマスクが素敵」といったイメージだけに終始してしまい、政策の話がなされなくなってしまうんです。

ーーでは一方、小池氏に対抗する宇都宮健児氏や山本太郎氏の結果についてはいかがでしょうか?

中島 彼らの得票率を合わせると、およそ25%ほどになります。今回の投票率が55%だったので、都民全体で見れば彼らに投票した人は1割強といったところ。この結果から、野党に対する魅力が全体として低下していることを率直に見なければならないでしょう。

 実は、この結果を受けて満足しているのは安倍内閣ではないかと思います。都知事選によって、野党の求心力が低下していることがはっきりした。きっと彼らは、安倍4選で解散総選挙をすることができると思ったのではないでしょうか。

 新しい政治を生んでいくためには、野党が強くなければなりません。政権交代は難しいとしても「安倍のままでは選挙に勝てない」と自民党の側に思わせなければ現状は全く変わりません。コロナ禍で安倍内閣に対する支持率は落ち、浮上するきっかけもつかめないにもかかわらず、自民党側が「トップを替えなくても大丈夫」と安心できるくらい野党が弱いことがはっきりした。それが、都知事選の一番の問題だったのではないかと思います。

ーーしかし、宇都宮氏と山本氏では経済政策のほかに大きな違いはなく、リベラルな有権者の票を割り合ったのではないかと言われています。

中島 いえ、山本氏が出なかったほうがひどい結果になっていたかもしれないと思います。おそらく、宇都宮氏だけでは1/4を取ることはできなかった。というのも、選挙結果を見ると、山本氏は30〜40代の支持を集めています。彼に拮抗しているのが維新推薦の小野泰輔氏。維新とれいわでは投票する年齢層は意外と重複しているんです。その一方、宇都宮氏を支持しているのは、圧倒的に高年齢層のリベラルです。宇都宮氏と山本氏ではそもそも層がずれています。むしろ、山本氏が出ていなかったら、多くの人が維新に流れた可能性もあります。小野氏が勢力を伸ばして、宇都宮氏の上に来る可能性すらあったかもしれません。

 また、山本氏が出馬したことによって、リベラル側が活性化した側面もありました。宇都宮氏だけの出馬であれば、全く盛り上がることもなく投票率も下がっていたはず。事前調査ではそれぞれ6〜7%だった支持率が、結果的に宇都宮氏が13%、山本氏が10%の得票率と底上げされていた。相乗効果があったと見るほうが適切でしょう。

ーーただ、山本氏が出馬したことによって、「共闘できないリベラル」という印象がついてしまった側面もあるのではないでしょうか?

中島 そもそもれいわと立憲では、狙う有権者の層が異なります。通常の選挙結果では、2:5:3の法則といって、野党が2割、無党派が5割、与党が3割の配分となる。立憲側が野党支持の2を固めることを狙う一方で、山本氏は2を固めるのではなく、無党派層の5を掘り起こすことを狙っている。

 これと同様の戦い方をしたのが小泉純一郎でした。彼は、自民党支持者である3を固めず、むしろ「既得権益」として名指しすることによって5の無党派層を取りに行った。

 山本氏は、パソナの竹中平蔵をはじめ、与党の既得権益を攻撃しますが、同時に野党側にも注文をつけます。彼の目からは、旧民主党の政治や労働組合などは、時に硬直化した既得権益層に見えるのでしょう。彼は明らかに無党派層を取り、自民党政治による地方の窮状などを論点とすることによって与党側を崩そうとしている。しかし、野党側の支持者を奪うことにはあまり関心がないんです。

ーー野党支持者の票は、山本氏の眼中にない、と。

中島 参院選後に彼にインタビューをしたのですが、その時の答えがとても印象的でした。「左派ポピュリストと言われることをどう思うか?」と質問したところ、「ポピュリストが多くの人の意見を聞き、反映させるという意味なら、ポピュリストと言われることに関してはその通りだ」と答えていました。しかし、その一方で「左派」ではないと否定しています。自らを左派と位置づけると、無党派層や与党支持者に逃げられてしまうことをよく認識しているのです。

 山本氏には、リベラル野党支持者の票を宇都宮氏から奪おうという狙いはありません。だか今回の選挙戦でも宇都宮陣営に対してほとんど言及していない。「宇都宮氏と票を割り合っているのではないか」という批判は、彼にとってはあまり関心がなかったのではないでしょうか。それよりも野党が勝つためには、これまで与党に投票していた人を反転させなければならない。その方法を第一に考えているのだと思います。

ーー日本第一党党首で元在日特権を許さない市民の会会長の桜井誠氏についてはいかがでしょうか? 前回も都知事選に出馬していた彼は、11万票から17万票へと得票数を拡大しています。

中島 17万票というのは都議選でも当選が視野に入る数字ですよね。区議会議員なら複数区で当選者が出る規模でしょう。まず、彼らがそういうボリュームになってきていることは世の中も自覚すべきです。

ーー彼の投票数が拡大したことは、関東大震災時における朝鮮人虐殺の問題を軽視しながらも366万票を獲得した小池氏を支持するムードと一致するのでしょうか?

中島 小池支持の中でも、一部にはそのような歴史観から投票した人もいたかもしれませんが、今回の選挙ではほとんどの候補は「価値観」という軸で勝負をしていない。論点はコロナ対策を中心とした金の分配の問題であり、LGBTや歴史問題といった価値の問題についてはほとんど語られなかった。歴史観や価値観に賛同して小池氏に票を投じたのは少数派でしょう。

 その一方で、桜井氏のような候補に対する人々の支持が拡大していることと、昨今のコロナ対策には接点があります。それが、自粛警察という動き。大阪府知事・吉村洋文氏の人気が高まったのが、パチンコ店の実名公表がきっかけでしたよね。しかし、これまでパチンコ店でクラスターは発生していません。にもかかわらず、世間から攻撃の矛先が向けられているんです。これは、関東大震災時における虐殺のように、「あいつらは何だ」という、マジョリティが普段から持っていたネガティブな印象が暴力へ転化した構図に似ていると思います。

ーー小池氏も、積極的に「夜の街」における感染拡大を強調していますね。

中島 パチンコ店もホストクラブも世間が好印象を持っているとはいえない施設ですよね。それを攻撃することによってマジョリティの鬱屈に訴えかけている。吉村氏、小池氏、桜井氏らは、特定のターゲットを作り、それを攻撃することで連帯感を生み大衆を動かしているんです。

ーー今後、都政としてはどのようになっていくことが予測されますか?

中島 今回のコロナ禍でかなりお金を使ってしまったため、今後、政策の幅は限定されていくでしょう。次の波が来た時に配分する余裕があるかといえば、難しいでしょう。しかもその先には五輪が待ち受けています。

 しかし、小池氏は、都政が行き詰まっても、スケープゴートを見つけ出し「このような人がいるからこうなってしまった」という構図を作り続けていくでしょう。そうして、特定の人々に責任を負わせ、彼らを指導する立場を貫きながら自らの存在感を示す。そうやって、自身の失政を見えないようにするのではないでしょうか。

中島岳志(なかじま・たけし)

1975年大阪生まれ。大阪外国語大学卒業。京都大学大学院博士課程修了。北海道大学大学院准教授を経て、2017年8月から東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授。専攻は南アジア地域研究、近代日本政治思想。05年、『中村屋のボース インド独立運動と近代日本のアジア主義』で大佛次郎論壇賞を受賞。著書に『インドの時代』『秋葉原事件』『パール判事』『「リベラル保守」宣言』『血盟団事件』『ナショナリズムと宗教』『アジア主義』『自民党 価値とリスクのマトリクス』など。

このニュースに関するつぶやき

  • 差別主義者にして歴史修正主義者が上手く立ち回って大差で再選し、真正のレイシストが17万票以上も獲得。大いに危惧!!
    • イイネ!3
    • コメント 5件
  • ネット討論で小池は山本太郎や小野にケチョンケチョンにされていた。 山本太郎は負けたが日銀の地方債買取をやらせる流れにしたのは凄い。小池はカメラの前でしか仕事しない。
    • イイネ!36
    • コメント 0件

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