山下智久、新曲「Nights Cold」で“世界の山P”へ 日本語を織り交ぜた歌詞と潔い引き算による楽曲を考察

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2020年07月15日 06:01  リアルサウンド

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リアルサウンド編集部

 「僕にしか歌えない歌にしたい」ーー7月15日発売のニューシングル曲「Nights Cold」を音楽番組で披露する際に山下智久はこう語った。


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 同曲は山下が出演するHuluオリジナルドラマ『THE HEAD』のエンディングテーマに起用されており、山下が作詞を手掛けた。世界30の国と地域で配信されている作品だけに、“世界の山P”との呼び声も聞こえてきた。


 7月13日放送の『CDTVライブ!ライブ!』(TBS系)に出演した際に、山下は「どこに行っても自分は日本人なので」と、日本語を織り交ぜた歌詞について言及。「サビって一番感情をのせる所」と、歌い手としての観点を織り交ぜながら、「僕にしか歌えない歌にしたい」と語った。


 序盤、ピアノの繊細さを保ちながらも強弱をつけた旋律と共に、静かにゆっくりとしたテンポで進行する。そこへ山下が優しさと強さを感じる歌声が重なっていく。広い空間を思わせる奥行きのある音、時折聞こえてくる効果音が闇を照らす幽かな光を思わせる。歌詞を丁寧に歌いこみ、Bメロからは叫びのような切なさを感じる。サビ前のわずかな間を経て、歌詞は日本語へとチェンジする。


 後半に向かうにつれてテンポを上げたことで、切なさや葛藤の中にも前向きさが出ていた。間奏で聞こえるチェロの波打つ低い音色は、先の見えない中であっても己を奮い立たせる意志を感じた。


 プロデューサーからは「悲しくて、冷たくて、怖いような曲」とオーダーされたという(参照:『TV LIFE』7月24日号)。全体的なトーンにミステリアスがありつつも、最後は小さな光に希望を見出す、歌詞の〈闇の中光を探して〉を表現していた。


 全編を英語で綴ることもできた中での日本語、それもサビにもってきたところは、山下の言葉通り、彼のアイデンティティ、コアの表れだろう。ピアノと弦楽器をメインにしたシンプルなサウンドは新鮮で、潔い引き算は山下らしい楽曲と言える。


 前述の番組でのパフォーマンスでは、3つのキューブ型のフレームに、ピアニスト、山下、バレリーナが配置。序盤は椅子に座り、目を閉じながら静かに感情を込めて歌った。曲の進行と共に立ち上がり、身振りも大きくなっていった。歌詞も英語から日本語へと変わり、それゆえにサビの歌いだし〈愛〉が際立った。〈君は〉の歌詞にあわせてカメラを指さす、歌詞との連動。どの角度からカメラで抜かれても美しい姿勢。最後に、ゆっくりと手を下ろすのだが、それと連動してバレリーナの手も下がり、照明、壁面のグラフィックも同じく灯りを落とした。まるで動くアート作品のようなステージだった。


 コンサートでもそうだが、山下は楽曲の持つ世界観を演出するのが上手い。歌にダンス、演技に語学、持ち前のセンス……英語と日本語を使い分け、作品で見せる演技もあれば、歌う時の表情もそう。楽曲、歌詞の持つ世界観を表現するための選択肢が多く、それを加減できるセンスを持っている。


 目標に向かって努力を続ける山下。ドラマ出演をきっかけに、俳優としてだけでなく音楽も世界へ発信した山下を誇らしく思う。常にファンへの感謝の言葉を忘れず、今回のドラマ出演に対しても、「運が良かった」と語っていたが、それが実力というものだろう。


 雑誌『ViVi』での山下の連載「P’s STYLE」では「“今”は常に夢に向かうまでの“通過点”」と答えていた。これからどんな世界を見せてくれるのか、どんな音楽に巡り合えるのか、俳優、アーティストとしての進歩があるからこそ応援したくなる。(柚月裕実)


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