都知事選・小池当選の裏で“勝った”のは結局自民党、解散総選挙は秋? 立民凋落で維新が野党第一党に!?

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2020年07月15日 13:03  日刊サイゾー

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写真『保守と立憲』(スタンド・ブックス)
『保守と立憲』(スタンド・ブックス)

 現職・小池百合子の圧勝に終わった都知事選。実は、この裏で今後の国政を占う重要な選挙が行われていた。それが「東京都議会議員補欠選挙」だ。大田区と北区や調布市・狛江市と日野市などで行われていたこの選挙は、両選挙区とも自民党候補の圧勝に終わっている。

 なぜ、このローカルな選挙に熱いまなざしが注がれているのか? 政治学者の中島岳志氏に話を伺い、秋にも行われると予測される総選挙の行方を占ってもらった。

野党共闘だったのに惨敗した…

ーー中島さんは、都知事選と同日に大田区と北区で行われた「都議会議員補欠選挙」の結果に重要な意味があると考えられているそうですね。いったい、それはなぜでしょうか?

中島 まず、この選挙は当選者が選挙区で一人のため、小選挙区制で争われる総選挙の前哨戦として位置づけられます。この選挙では、両方の区で自民党が勝利しましたが、その結果の詳細を見ると、大田区は自民、維新、立憲という順位。北区では、自民、立憲、維新、都ファという順番でした。この結果は、今後の国政選挙の行方を考えるにあたってとても重要な結果だと考えています。

 自民vs立憲という構図に維新が加わることによって、立憲と維新との間で政権批判票が割れてしまった。おそらく、次回の国政選挙でも同様のことが起こるでしょう。現在、勢いに乗っている維新は、首都圏の各選挙区で軒並み候補を擁立するはず。それによって維新と立憲で票を食い合った結果、自民党候補が勝利を収めるんです。

 しかも、今回の補選では、国民民主党や社民党、日本共産党などからも出馬しておらず、野党共闘が成り立っている形でした。さらに、立憲では党首クラスが動いていたにもかかわらず、敗北を喫している。このままでは、次の国政選挙では、維新が野党第一党になる可能性もあります。

ーー立憲民主党にとっては、最悪のシナリオが予想される結果となったんですね。

中島 この結果を受けて、立憲、国民民主、社民党などは共闘するしか選択肢がない。枝野幸男氏は都知事選直後に、候補者一本化の条件は「首班指名で枝野と書くこと」と発言していますが、これは、党名や政策などの条件に関しては譲歩するというメッセージのように聞こえます。

 ただし、立憲と国民民主が統合しても多くの国民は「また民主党か」と思うだけで、世論は動かない。だからこそ、消費税5%を掲げて、共産党やれいわとタッグを組む必要がある。最低限、総選挙までにそのような動きをしなければなりません。

ーーしかし、枝野氏は消費税減税には消極的な姿勢を見せています。

中島 民主党時代、消費増税の際に経済産業大臣を務めていましたからね。しかし、コロナ禍が巻き起こったことによって、今なら「かつてとは状況が変わった」という理屈が立ちます。「消費税を5%に下げる」と言えば、それを唯一の条件と掲げているれいわ側は立憲と握手せざるを得なくなる。そうすれば、れいわによる既成野党批判はトーンダウンし、立憲にとって大きなメリットになります。

 ただ、これはあくまでも最低ラインの話です。それすらもできなければ、次の総選挙はリベラル側にとって壊滅的な結果となるでしょう。

ーーこれまでのように、反アベを掲げるだけでは不十分なんですね。

中島 「アベ政治はNO」と言うだけでは、維新と票が割れてしまい「吉村のほうがいい」となってしまいます。それを回避するためにも、安倍政権に対する対抗軸をはっきりと打ち出さなければならない。

 行き過ぎた自己責任を求める社会から、配分を重視してみんなが暮らしていけるようにする。そして、個人の内面は自由である……といった方向性を共有し、対抗軸として打ち立てれば、有権者に対して「自民を選ぶか、こちらを選ぶか」という選択を迫ることができます。

ーー共闘しながら、政権に対するアンチではなくて、政権とは異なった軸を打ち立てていく、と。しかし、これまで4年にわたって野党共闘が模索されてきましたが、いまだ実現していません。いったいどこに原因があるのでしょうか?

中島 それは、政治がわかっていないからだと思います。

ーー「政治がわかっていない」とは?

中島 そもそも、世の中は、簡単にはわかり合えない他者と一緒に社会を作っていかなければならないものです。この社会には、信じる宗教が異なった人もいるし、アニメ好きな人もいればスポーツ好きな人もいる。そのような多様性によって成り立っています。しかし、これを一枚岩にしようとすると、戦前の「一君万民」やファシズムのような状況が生まれてしまう。

 価値観を一枚岩にしようとするのではなく、わかり合えない人々が社会をやっていくためにルールや制度を調整し、それぞれの人が幸福を追求できる環境を整える。それが政治なんです。しかし、与野党とも、まるで子供のように自分の意見を押し付けるだけ。それは政治ではありません。

ーー全員が「ほどほどに幸せである状態」ではなく、理想を押し付けるだけになっている、と。

中島 かつての自民党には、小渕内閣で官房長官を務めた野中広務をはじめ、リベラルな考えを持った人々も存在していました。彼らは、世の中には弱者も存在しながら複雑に成り立っているということを理解していた。だから、お金を配分をしながらみんなが生きやすい社会をつくろうとしていたんです。

 現在の状況は、政治なきディストピアといえます。国民をひとつの思想にまとめようとする自民党は中国共産党やスターリンが行ってきたことと変わらないし、それぞれのわずかな違いを認められない野党がやっているのはただのイデオロギー闘争。いずれも政治ではありません。

ーーでは今後の政局を占う上で注目のポイントはどこにあるでしょうか?

中島 まず、秋に総選挙が行われるとしても、率直に言ってリベラル側がそう簡単に政権交代できるとも思えない。政権交代するのであれば、長期政権を目指す体制が整っていなければなりません。仮に今政権交代をしても、ガタガタになってすぐに終わりとなる可能性が高いように思います。その後には、より深い絶望が待っています。10年をかけて政権を奪取した民主党ですら数年でばらばらになってしまったんだから、準備に長い時間をかけないと長期政権は望めません。

 一方で、僕は安倍政権には退陣してもらわないと困ると考えている。そのためには、「野党は強敵だ」と思わせることによって、自民党の中を動かしていく必要があります。安倍で選挙に勝つことができないという危機感が強くなれば、自民党は石破茂氏を担ぎ上げる必要に駆られるでしょう。

 かつて、石破氏はリスクを個人化し、再配分には消極的な新自由主義的な考え方の持ち主でした。しかし、安倍総理の逆張りとして、新自由主義を捨て、再配分を重視する方向に傾いています。現状では、バラバラで信頼関係を築けていない野党が政権を取るよりも、石破内閣を組閣することのほうが現実的でしょう。そのためにも野党が強くなければならない。与党に脅威を与える存在にならなければなりません。

ーーでは、今後、リベラル勢力が育つためにはどのようなことが必要でしょうか?

中島 左翼がちゃんと「政治」をすることでしょうね。

 立憲民主党の支持者もれいわ新選組の支持者も、少しの違いによって争い合い「あいつらはクソだ」と内輪もめを始めてしまう。そんなことをしているから支持を取り付けられないんです。れいわのほうはまだ新興勢力という側面がありますが、少なくとも立憲側は横綱相撲をとり、若い人に批判されたとしても「まあまあ、よくわかるよ」といさめる余裕を持つことが必要です。

 左翼には「自分が正しい」と思い込み、その正しさを他人に押し付ける悪い風習があります。その一方で、かつての保守主義者は「自分は間違うかもしれない」という前提に立ちながら、自分の能力を過信せず、論敵の言い分に耳を傾ける懐の広さを持っていました。

 左派の人々は、これまでとってきた傲慢な態度を反省したほうがいい。そうしなければ、次の選挙でも2割程度の得票率で惨敗することになると思います。

中島岳志(なかじま・たけし)

1975年大阪生まれ。大阪外国語大学卒業。京都大学大学院博士課程修了。北海道大学大学院准教授を経て、2017年8月から東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授。専攻は南アジア地域研究、近代日本政治思想。05年、『中村屋のボース インド独立運動と近代日本のアジア主義』で大佛次郎論壇賞を受賞。著書に『インドの時代』『秋葉原事件』『パール判事』『「リベラル保守」宣言』『血盟団事件』『ナショナリズムと宗教』『アジア主義』『自民党 価値とリスクのマトリクス』など。

このニュースに関するつぶやき

  • 海外は減税して安倍政権はこんな時でも増税。過去一度も増収してないのに。自民は日本人から基本的人権、国民主権、平和主義を奪うと言っててこんな事態を招いたのに…いつもの自作自演?
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