剛腕、実績ゼロ、野手から投手転向…セガサミー「高卒三本柱」が面白い

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2020年07月16日 11:42  webスポルティーバ

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 社会人の強豪・セガサミーに今年、魅力的な「三本柱」がそろった。

 森井弦斗(げんと)、飯田大翔(やまと)、草海光貴(くさがい・みつたか)。森井と飯田は入社3年目の21歳、草海は入社4年目で22歳。3人とも高卒で入社した右投手である。高卒の新人選手を積極的に採用する企業チームが減っているなか、セガサミーの陣容は異彩を放っている。

 なかでもスカウト陣の評価が高いのは、森井である。徳島の板野高に所属した高校時代は、同学年の部員は7名。強豪とは言いがたい高校に進学した理由は、第一志望校に進めなかったからだと森井は言う。

「徳島商業に進みたかったんですけど、推薦が締め切られる3日前くらいになって『とれない』と言われて。その瞬間に『野球はどうでもいいや』となりかけたんですけど、次の日に板野から誘いをもらえたんです。板野の存在すら知らなかったんですけど、『強くないチームを自分の力で甲子園に連れていこう』と火がつきました」

 中学3年時点で132キロだった球速は、高校1年夏に140キロ、1年秋に144キロ、2年春に147キロと順調に伸びた。右ヒジのクリーニング手術を挟み、3年春には150キロに到達。さらに高校最後の夏には152キロを計測した。

 身長184センチ、体重94キロの厚みのある体と、丸みを帯びた顔つきは投手というより、スラッガーを連想させる。いかにも重量感のある剛球を投げる馬力型右腕は、当然プロスカウトからも高い評価を受けていた。もし高校時点でプロ志望届を提出していれば、ドラフト指名は堅かっただろう。

 だが、森井が選んだ道は社会人だった。きっかけは、近しい関係者の言葉だった。

「ある方から『このままプロに行っても3年でクビになる。力をつけてドラフト1位でプロに行ったほうがいい』と言われたんです」

 実際に社会人で過ごしてみて、森井は「もしプロに行っていたら、本当に今年クビになっていたと思います」と語る。社会人で力不足を痛感したからだ。

「社会人をなめていた部分があって、アウト一つとるのがこんなに難しいのかと感じました。高校生なら簡単に振ってもらえた変化球が、社会人では反応もしてもらえない。社会人のバッターを抑えられなければ、プロに行っても通用しない。社会人に来て正解だと感じました」

 1年目はストレートでしかストライクを取れず、2年目は変化球で多少ストライクが取れるようになった。そして3年目、森井は「強いストレート」を求めている。

「以前の自分のストレートは回転数が2200くらいで、空振りを取れる球質ではなかったんです。ウエイトトレーニングを一からやり直して、バケツに入れた米を研いで右手の握力を上げました。あとはリリースする瞬間だけ力を入れる『脱力』の感覚を磨いてきました」

 ブルペンで投球を受けてくれた捕手や、対戦した打者から「本当にボールが強くなったね」と言われ、手応えを深めている。

 森井は表情を変えずに、淡々と自分の決意を述べた。

「プロに行くのが目標ではなくて、プロでローテーションを年間守るのが目標です」

 森井と同期入社の飯田は、ここまで公式戦での登板がほとんどない。だが、「セガサミーの飯田がいいらしい」という評判はじわじわと広まりつつある。

 本人に聞くと、「そうですか?」と複雑そうな笑みを浮かべた。

「自分では実感してるわけではないんですけど、『成長したね』とは言われます」

 どうも周囲の評価に納得していない様子に見えたため、突っ込んで探りを入れると、どうやら飯田のなかでは以前から「自分に自信はあった」ということらしい。

 長崎県佐世保市で生まれ、中学から海星中へ。海星高では2年春の選抜高校野球大会(センバツ)に出場したものの、当時は控えの外野手だった。

「1年夏に腰椎分離症になって、2年春はバッティングで結果を残したので甲子園のベンチ入りメンバーに入れてもらったんです」

 センバツ帰りの春の九州大会、投手陣の層を厚くするために先発起用された飯田は、いきなりの登板にもかかわらず富島(宮崎)を1失点に抑え完投勝利を収める。この試合で自信をつけた飯田は「プロに行きたい」という思いを強く抱くようになる。

 高校3年時には最速147キロを計測。だが、3年夏は長崎大会3回戦で敗れ、大きなアピールができなかった。社会人で3年鍛え、再びプロを目指したいと考えたところでセガサミーへの入社の話が進んでいった。

 社会人野球で驚いたことを聞くと、飯田は「社員さんがすごく応援してくれること」と答えた。セガサミーの野球部員は野球中心の生活になるが、職場に行けば同僚から「頑張ってくれよ!」と激励を受ける。昨年、社会人野球最高峰の舞台である都市対抗野球大会の東京予選で敗れた際、飯田は「熱い応援をしてくださったのに申し訳なくて、会社に行くのが怖かった」と振り返る。

 飯田は身長178センチ、体重82キロととりたてて大柄なわけではない。だが、高いリリースポイントから投げ下ろす投球フォームを売りにする。

「角度はみんなより高いので、意識して持ち味にしたいと考えています」

 ボールに強烈な縦回転をかけ、変化球も縦変化のフォークやカーブを有効に使う。それが飯田のピッチングスタイルである。

 だが、角度を武器にする投手は、えてしてボールが抜けやすい。飯田も同様の傾向があり、時に球筋が暴れる。それでも、飯田は「コントロールが悪い」と見られることに抵抗を覚える。

「ボール球が多い自分が悪いんですけど、『ボールが多い』と言われてもしょうがないと思ってしまうんです。ボール球を減らすための、体のバランスをよくするアドバイスをいただけるなら、まだわかるんですけどね」

 サッカーボールで遠投し、体を大きく使って投げる練習や、投球に必要な動作をメディシンボールで反復するなど、努力はしている。だが、「試合になると空回ってしまう」という昨年までの飯田は、首脳陣からの信頼を得られなかった。

 森井ばかりが注目されることも「面白くないですよ」とはっきり口にする。「それは自分が勝っている思いがあるから?」と尋ねると、飯田は「全然あります」と続けた。

「森井もそうだと思いますけどね」

 野心家の右腕・飯田大翔は、密かに爪を研いでいる。

 高卒三本柱「第三の男」の経歴は異色だ。何しろ、昨年夏から投手に再転向しているのだ。

 草海光貴の名前を記憶している高校野球ファンは多いだろう。2015年夏の甲子園、上田西(長野)の2年生エースとして出場した草海は、宮崎日大を6安打完封。大会完封一番乗りの快投を見せた。

 身長168センチと小柄ながら最速143キロを計測し、フィールディングセンスは抜群。そんなマウンド姿は敦賀気比(福井)時代の東出輝裕(元広島)を彷彿とさせた。

 そんな草海も、セガサミー入社後は内野手に転向する。遊撃手として高く評価するスカウトがおり、「もともと野手が好きだったから」という本人の意思もあった。

 プロ解禁となる高卒3年目の昨季は、春先の東京スポニチ大会で遊撃手のレギュラーとして出場する。だが、草海は高い壁を感じていた。

「ずっとバッティングに悩んでいたんですけど、最後までついていけませんでした。高校までとはピッチャーのボールがまるで違って、全然飛ばないんです」

 プロ注目投手の剛球を打席で目の当たりにして、草海は「無理だ」と悟ってしまったという。3年目の都市対抗予選を控えとして終えると、草海は自ら「ピッチャーをさせてください」と首脳陣に申し出る。もともと入社時から「野手がダメだった場合はピッチャーに転向する」という話もあった。

 投手に再転向した草海は、水を得た魚のように練習に取り組んだ。

「野手のときは、バッティング練習がイヤになった時期もあったんです。でも、ピッチャーになって解放感がありました」

 高校時代とは感覚が別物になっており、投球フォームは一から再構築した。だが、草海は恐るべきセンスで自分の投球感覚を見つけていく。夏場のオープン戦では早くも結果を残し、中心投手の仲間入りを果たした。

 そして昨年8月31日、日本選手権関東代表決定戦、草海はHondaとの初戦で先発投手という大役を任される。「先発は森井か飯田だと思っていた」という草海だが、それでも大きなチャンスに意気に感じてマウンドに立った。

 ところが、立ち上がりから制球に苦しみ、わずか2回で4失点を許して降板。チームは1対9とコールド負けを喫し、都市対抗に続き日本選手権の出場権も逃した。草海は「自分をコントロールしきれず、舞い上がってしまった」と振り返る。

 現在は雪辱に向けて、己の力を磨く日々を過ごしている。武器は投手としての総合力。最速145キロのキレのある速球に、多彩な変化球を駆使してプロ入りを狙っている。

 身体的にも能力的にも優れる森井や飯田に対して、草海は「正直言って、嫉妬はあります」と打ち明ける。

「でも、ピッチングを見て勉強になります。今は森井を見にスカウトが見に来てくれますけど、今に自分の力でスカウトを呼べるようにしていきたいです」

 3人ともユニホームを脱げば気の合う友人のように付き合い、時には草海の部屋に3人が集まってピザを食べることもあるという。

 今季からセガサミーの監督に就任した西田真二監督は、四国アイランドリーグ・香川オリーブガイナーズ監督時代に20人以上の教え子をNPBに送り込んだ名伯楽である。「もし森井、飯田、草海の3投手がドラフト指名を受けたら?」という質問に対して、西田監督は「そりゃあ、喜ばしいですよ!」と答えた。

「9月末からの都市対抗予選でアピールして本戦出場を決めて、10月のドラフトで指名されて、11月の都市対抗でひと花を咲かせる。それなら万々歳じゃないですか」

 セガサミーの高卒三本柱にとって、勝負の季節は間もなく訪れる。

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  • 唐川、益田、内の千葉3老害と入れ替えたいですな。
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