「コロナには負けまへん」 八ツ橋も白い恋人も全国銘菓メーカーの奮闘

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2020年07月18日 16:00  AERA dot.

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写真「気づけば拭いている」という長崎の松翁軒。アルコールのにおいで満ちそうだが常時換気しているため問題なし(写真:各社提供)
「気づけば拭いている」という長崎の松翁軒。アルコールのにおいで満ちそうだが常時換気しているため問題なし(写真:各社提供)
 手土産需要も、旅行客や外国人観光客も激減した。何十年、何百年と銘菓を作ってきたメーカーは売り上げ減に苦しむなか、気丈に前を向いている。AERA 2020年7月20日号の記事を紹介する。

【ギャラリー】コロナには負けまへん!奮闘する全国の銘菓を写真で紹介

*  *  *
「お客さまに『今日はやってません』とは言いたくなかった。一人も買いに来なくても仕方ないと思いつつ、毎日焼き続けた。売り上げは、『減った』としか言いたくない」

 1890年創業の紀文堂総本店5代目の手塚雄介さんは、そう語った。東京・浅草雷門を正面にして3軒目に人形焼の店を構える。

 外国人観光客は激減し、賑わっていた街は静かになった。さみしい気持ちはもちろんある。ただ、紀文堂は地元客も多く、「まだいいほう」。土産物中心の商店街・仲見世は「うちよりきついのではないか」と気遣った。

 でもね、と力強く続ける。

「浅草寺はここにあるんだよ。雷門も、あるんだよ。それは事実でしょう。その門前で商売をさせてもらっている以上は、やるべきだと思った。だから店を開けさせてもらった」

 なぜ、“させてもらっている”なのか。

「人が自然に集まる浅草寺や雷門っていう場所に店を開くことができたのは、そもそもありがたいことだと思うんだよ。だからいつも商いを続けさせてもらってると感謝していて。ほらね、つい“もらってる”って言っちゃう(笑)。コロナでこういう気持ちは強くなった」

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、観光客や手土産需要が減り、全国の銘菓メーカーが窮地に立たされている。

「通りに人が歩いていない。一部店舗では開店休業状態」(北海道・六花亭)、「バスツアー予約がほぼキャンセルに」(山梨県・桔梗屋)、「4月中旬から生産量を9割削減」(愛知県・餅文総本店)、「来客数が7割減」(広島県・高津堂)……。

 だが、来客数も売上高も激減しているにもかかわらず、取材した19のメーカーは、通販サイトに力を入れ、キャンペーンを実施するなど前向きな取り組みが目立った。「電話での配送注文が増えてありがたかった」(前出の紀文堂総本店)、「売り上げの一部を医療機関へ寄付しました」(北海道・ISHIYA)など、コロナ禍によって感謝の気持ちも深くなったという。

 訪れる人々に配慮して、店舗の清掃も徹底している。1681年創業のカステラの元祖、松翁軒(長崎県)の従業員は言う。

「店舗のあらゆる場所をアルコール入りスプレーで拭き上げています。まだ皆さん不安な時期ですから、回数が多すぎるということはない」

 誰もが一度は食べたことのあるような銘菓が主力商品だが、新しい味も知ってもらいたいと、新商品の開発に着手したメーカーも多かった。福島県の老舗・柏屋では、伝統の薄皮饅頭(まんじゅう)に“168年目の新商品”として、宇治抹茶味を投入した。

 贈答品だけではなく、家庭のおやつとして気軽に食べてほしいと、家庭消費に目を向けたメーカーもある。創業110年という福井県・村中甘泉堂代表の村中洋祐さんは言う。

「看板商品の羽二重餅は、売り上げの9割が贈答や手土産需要。心機一転、家庭のおやつ商品を作ることにしました。コロナ禍にちょうど修業期間を終え、入社した5代目(村中さんの息子)が習得した技術で開発を急ぎ、『うましろ団子』『上生菓子 アマビエ様』などを相次いで発売しました。5月の直営店売上高は前年比98.5%まで戻り、直近の6月15日では160%と大きく伸びています」

 福岡県の二鶴堂は、全国の人に地元の味を知ってもらいたいと、人気商品の「博多の女(ひと)」を含め、とんこつラーメンや明太子の菓子など10品を詰め合わせた「家族団らんセット」の販売を始めた。価格は通常より約30%安い5千円で送料無料。おまけとしてフェイスシールド2枚とシールをつける。段ボールに詰める作業は従業員が行う。

 特に観光客が多い京都は、影響が大きかった。京都の井筒八ッ橋本舗の広報を担当する木下貴史さんは、初心に戻ろうと心を切り替えたという。

「京都のいろいろな文化財を見てもらうお手伝いをするのも仕事のうち。京の歴史や風習を伝えていきたいです」

 京都では6月に疫病退散の願いを込めて、「水無月」という菓子を食べる習慣がある。水無月とは、ういろうに小豆をのせて固めたものだ。井筒八ッ橋本舗では、6月から水無月の販売をスタートした。これも、京の風習を伝える活動の一環だ。

 家族で3時のおやつを食べてほしいと、菓子を詰めた「おやつ缶」も作った。

「食べ終わったら、他の店のお菓子を詰めてもいいと思うんですよ。みなさんの生活に寄り添う形でやっていけたらと。コロナには負けまへん」(木下さん)

 この強さはどこから来るのだろうかと考え、気づいた。

 菓子を作り続けて何十年または何百年。幾度となくやってきた不景気や災害、数々の苦難と向き合ってきた。戦禍をくぐり抜けた店もある。肝の据わり方が違うのだろう。銘菓はこれからも、きっと続いていく。

●取材した19のメーカーの通販やキャンペーンなど前向きな取り組み

北海道
マルセイ バターサンド
六花亭/10個入り 1300円
ネット通販の送料は格安
一部店舗では開店休業状態。送料はクール代金200円だけいただく「通販おやつ屋さん」をスタートしました(六花亭文化広報部・渡辺洋子さん)

北海道
白い恋人
ISHIYA/36枚缶入り 2646円
限定セットを販売 一部を病院に寄付
空港免税店の売り上げもほぼ無くなりました。賞味期限が近くなった商品を詰め合わせて半額以下で販売し、売り上げの一部を医療機関へ寄付しました(石屋商事商品部・上出侑香さん)

岩手県
かもめの玉子
さいとう製菓/9個入り 1215円
黄味餡入りの生地をチョコでくるん
5月10日まで全店休業し、前年比70%の売り上げ減。通販で送料無料キャンペーンを行い、6月からイベントも少しずつ再開しています(さいとう製菓販売本部長・平野亨さん)

宮城県
萩の月
菓匠三全/10個入り 2000円
お月さまみたいな菓子を通販で
移動自粛もあって宮城県になかなかお越しになれない方のために、期間限定で「萩の月」のオンライン販売を開始しました(菓匠三全事業開発部・工藤瞳さん)

福島県
柏屋薄皮饅頭
柏屋/こしあん8個入り 1080円、つぶあん8個入り 1080円、宇治抹茶8個入り 1166円
日本三大饅頭を店でもネットでも
売り上げは半分以下になりましたが検温や消毒など可能な感染防止策を実施しながら営業再開しました。通販でも買えます(柏屋マーケティング部・菅野伸夫さん)

山梨県
桔梗信玄餅
桔梗屋/6個布袋入り 1095円、10個箱入り 1711円など
スタッフブログで情報発信
バスツアー予約がほぼキャンセルに。店では新商品やアウトレット品の販売、「直営店ブログ」や「企画室ブログ」などでスタッフの生の声を発信(桔梗屋代表取締役・中丸純さん)

東京都
人形焼 黒あん 顔型
紀文堂総本店/10個入り 1150円など
おなじみ七福神の饅頭を電話で
余計なものが入っておらず賞味期限が製造から7日なので通販の積極的な宣伝はしませんでした。電話での配送注文が増えてありがたかったです(紀文堂総本店代表取締役・手塚雄介さん)

東京都
たいよう
空いろ/12個入り 1857円など
ぎんざ空也の技術が生きたどら焼き
6月からの全店舗営業再開まではネット通販に注力。「お家で作るつきセット」というクッキーサンドの材料を販売し、喜ばれました(空也代表取締役・山口ひこゆきさん)

静岡県
クリスタルアイスケーキ チーキーワンワン
春華堂/1ホール(直径12センチ) 4104円
うなぎパイの老舗からアイスケーキ
新幹線や高速道路の利用激減により売上高は前年比6割減。自粛期間中は貴重な充電期間ととらえ、新商品の開発や人材育成に力を入れました(春華堂経営管理室・手嶋千恵さん)

愛知県
献上外良(ういろ)
餅文総本店/白、黒、抹茶 各1棹 864円、栗 1404円
名古屋ういろの元祖が新たな挑戦
4月中旬から生産量を9割削減。一部店舗で宅配サービスを始め、6月からはSNSをスタート。新商品「ラムネういろ」も発売(餅文総本店代表取締役・鈴木泰広さん)

福井県
紅白羽二重餅
村中甘泉堂/2枚1包×12包入り 972円など
米と砂糖でできた絹織物のような餅
売り上げの9割が贈答・手土産需要だったので、家庭で楽しめるおやつ商品の開発を急ピッチで進め、5月に相次いで発売しました(村中甘泉堂代表取締役・村中洋祐さん)

京都府
生八ッ橋夕子
井筒八ッ橋本舗/ニッキ、抹茶詰め合わせ10個入り 594円など
生八ッ橋は餡なし、「夕子」が餡入り
観光客や地元の方による売り上げが激減したため、家族で食べる3時のおやつ用に、お菓子がたくさん詰まった「おやつ缶」を発売しました(井筒八ッ橋本舗・木下貴史さん)

岡山県
元祖きびだんご
廣榮堂/10個入り 432円
お取り寄せならではのセットあり
通販サイトに力を入れ始めました。期間限定の商品や詰め合わせなど、今まで掲載していなかった商品を販売しています(廣榮堂社長室長・小西祐貴さん)

広島県
元祖もみぢ饅頭
高津堂/8個入り 1080円
1906年の焼き型を復刻して手焼き
来客数が7割減。店舗の定期的な消毒はもちろんお客様用の消毒液を常備し、レジ前にビニールシートを設置。ネット通販も可能です(高津堂代表取締役・加藤宏明さん)

福岡県
博多の女
二鶴堂/20個入り 1123円、「家族団らんセット」 5000円
博多名物を詰めた家族団らんセットも
売上高は前年比7割減。ネット通販に力を入れている。「博多の女」も含めとんこつラーメンなどの名物を詰め合わせた「家族団らんセット」を発売(二鶴堂代表取締役・橋本由紀子さん)

佐賀県
元祖丸房露
佐賀 鶴屋/14枚入り 1386円
大隈重信がお気に召した卵たっぷり茶菓
通販サイトを見やすく、買いやすくするリニューアルをしています。今後はSNSでも情報発信を図りたいです。まだまだ道半ばですががんばります(鶴屋菓子舗・堤一博さん)

大分県
豊後銘菓やせうま
やせうま本舗 田口菓子舗/5個入り 540円、11個入り 1080円など
きな粉餡+求肥の半生和菓子
「今は我慢のとき」と考え、ツイッターやインスタグラムでの告知に挑戦。今後はネットでもしっかり宣伝をしたいと思います(やせうま本舗 田口菓子舗専務取締役・田口永依子さん)

宮崎県
なんじゃこら大福
お菓子の日高/3個入り 1420円
つぶあん、苺、栗、クリームチーズ!
土産の需要がほぼ無くなり、通販を強化。商品代金に応じてクーポンを進呈。毎年6月開始の送料半額キャンペーンを前倒ししました(お菓子の日高代表取締役・日高久夫さん)

長崎県
五三焼(ごさんやき)
松翁軒/化粧箱入り 1本2916円、桐箱入り 1本3348円
卵黄と砂糖が多い贅沢カステラ
前年同月比8割減の売り上げでしたが、店舗では母の日や父の日のイベントなどを開催。お取り寄せのお客さまへも季節の案内をお届けしました(松翁軒代表取締役・山口喜三さん)

(ジャーナリスト・向井翔太、編集部・中島晶子)

※AERA 2020年7月20日号

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