再開後のJ1で攻撃型チームの明暗が分かれている要因を探る

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2020年07月22日 06:42  webスポルティーバ

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福田正博 フットボール原論

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■J1はリーグ再開から4試合が終わり、各チームの序盤の良し悪し、戦い方の傾向が見えてきた。福田正博氏は、その戦い方の傾向の解説と、ボールを保持して攻める、攻撃型チームの分析をしてもらった。

 今季のJリーグは降格がなくなったことで、再開後はボールポゼッションからアグレッシブに戦うチームが増えるのではと予想された。だが蓋を開けてみれば、守備を固めてカウンターというスタイルのチームも多く、上位に進出している。

 これは、チーム練習再開からリーグ再開まで準備期間を十分に取れなかったことがある。また、リーグ再開のタイミングが、サッカーをするにはもっとも不向きな梅雨から夏に向かう季節になったのに加え、日程も、中3日、中3日、中5日という、変則的かつタイトなスケジュールになっている点も影響しているだろう。

 好スタートを切って上位につけているFC東京、名古屋グランパス、セレッソ大阪、浦和レッズなどは、守備安定型のチームだ。しかも、昨年から監督が変わらず、戦術がチームにより徹底されている。

 上位陣のなかでリーグ再開後4連勝で首位に立つ川崎フロンターレだけが、ボールポゼッションを志向する攻撃型のチームだ。アンカーをひとり置く4−3−3で前線からプレッシャーをかけながら、ハーフコートで試合をしようとしている。

 前半から飛ばしていくため、後半になるとガソリン切れになるのが気がかりではあるものの、再開初戦は鹿島に2−1で勝利すると、その後はFC東京に4−0、柏レイソルに3−1、横浜FCに5−1と連勝。昨シーズンはフィニッシュのところで精度を欠いて勝ち切れない試合が多かったが、今季ここまでは攻撃をしっかりとゴールに結びつけている。

 中村憲剛不在の穴も、脇坂泰斗がしっかりと埋めて、チームからの信頼も高まっているのが伝わってくる。ここに憲剛が戻ってくれば、2年ぶりのリーグタイトルは盤石になっていくだろう。

 一方、川崎と同様に攻撃的なスタイルを取る、昨季王者の横浜F・マリノスと天皇杯優勝チームのヴィッセル神戸。この2チームは、カウンタースタイルの相手チームの狙いどおりにやられている試合が多い。

 横浜FMは、結果は敗れているものの、内容に目を向ければ、彼らがほとんどの時間帯で相手を押し込み、チャンスも数多くつくっている。しかし、昨年の川崎がそうだったが、攻撃的なチームはゴールが奪い切れないと相手チームのカウンターを食らいやすい。

 ただ、アンジェ・ポステコグルー監督は、昨年同様の戦いをしていては勝てないと理解しているはずだ。選手層が厚くなった今季は、コンディションのいい選手を使いながら、まだメンバー構成のベストな形を模索している段階にあると感じる。

 つまり、10月にアジアチャンピオンズリーグ(ACL)が控えていることも考慮して、勝負どころはまだ先にあると踏んでいるのではないか。メンバーを固めてチームがマンネリ化しないようにマネジメントをしている。裏返せば、まだそれだけ余力があるということだ。

 神戸は、アンドレス・イニエスタを毎試合使わず、4節大分トリニータ戦などはメンバーを大胆に変えて臨んだ。このあたり、彼らもまたACLを見据えた戦いをしているようだ。

 また、今季は降格がないだけに、軸足をACLに置きながら、世代交代も推し進めようとする狙いも感じられる。しかし、こうした方針は決して敗戦の言い訳にはならないのがプロスポーツの世界だ。

 ここまでは、自分たちのミスから喫した失点が目立っている。ボールを保持しながら相手を圧倒するには、チーム全体のクオリティーを高めていかなければ厳しい。どれだけスペシャルな選手がいようとも、味方のなかにひとり、ふたりリズムの合わない選手がいるだけで、チーム全体のリズムが崩れてしまうからだ。

 いい時はいいが、悪い時は脆い。この点を打破するのが、神戸がさらに上位クラブへと成長していくために求められることだろう。

 リーグ再開後に新たなことにトライしているなと感じたクラブが、横浜FCだ。下平隆宏監督の采配からは、自分たちがボールを保持して主導権を握ろうとする意思が伝わってくる。

 中断期間中にシステムを3バックに変えて、DFラインから丁寧につないでビルドアップするスタイルにチャレンジしている。そうしたなか、スタメン起用された選手たちが躍動している。

 再開初戦のコンサドーレ札幌戦は1−2で敗れたが、内容的には横浜FCが勝利していても不思議はないほど。FWの一美和成と斉藤光毅は攻撃だけではなく、前線からプレッシャーをかけるなど、守備でも貢献している。

 再開2戦目の柏戦は、3−1でJ1復帰後の初勝利を飾った。つづく3戦目のベガルタ仙台戦は、先制しながら1−1で引き分け。だが、メンバーの若返りを図り、戦い方も大きく変えながら、結果を残している横浜FCの今後は、楽しみなところだ。

 そのほかのチームの様子も伝えたいが、いま最も気がかりなのは、サポーターの観戦スタイルだ。7月10日から5000人までの観客入場を解禁したが、試合を重ねるごとに各会場で新型コロナウイルス感染拡大防止のための観戦ガイドラインが守られていないケースが目につく。

 サッカーの観客がスタジアムに行くのは、クラシック音楽を聴くのとは異なり、エモーショナルな部分を求めているのは理解している。だが、まだ予断を許さない状況下にあることを肝に銘じてもらいたい。

 5000人までの入場制限は、当初の予定から延びて8月10日まで行なわれ、その後状況を見ながらスタジアムの収容人数は最大50%にまで増える予定だ。たとえば浦和の埼玉スタジアムなら3万人まで収容できる。わずか5000人で守れないルールが、3万人に増えた時に守れるとは、とても思えない。

 新型コロナウイルスについて、さまざまなことが言われているが、ひとつはっきりしているのは、このウイルスの全貌はいまだ明らかになっていない点だ。未知の部分が多い状況では、決められたルールを守ることが重要になる。

 思わず声が出てしまうことはある。しかし、Jリーグがようやく戻ってきて、観客がスタジアムに入って熱量も高まっているなか、ふたたび日常からサッカーを失わないためにも、すべてのサポーターが一丸となるべき。もう一度、気を引き締めて新たな観戦ルールのなかでJリーグを楽しんでほしい。

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