陰謀論は実在するのか、それともトンデモ論か!? 衝撃の告発『誰がハマーショルドを殺したか』

1

2020年07月24日 15:12  日刊サイゾー

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

日刊サイゾー

写真サンダンス映画祭で監督賞を受賞するなど、世界各国で話題を呼んでいる『誰がハマーショルドを殺したか』。
サンダンス映画祭で監督賞を受賞するなど、世界各国で話題を呼んでいる『誰がハマーショルドを殺したか』。

「悪の秘密結社は実在する」と話したら、あなたは信じるだろうか。「映画の見過ぎだよ」と笑うのではないだろうか。映画『誰がハマーショルドを殺したか』(英題『COLD CASE HAMMARSKJOLD』)は、飛行機墜落事故で亡くなったダグ・ハマーショルド国連事務総長の死の謎を追ったドキュメンタリー作品だ。事故の真相を追ううちに、秘密結社の存在が浮かび上がり、さらに国際的な陰謀論へと繋がっていく。思いがけない展開に、あなたは唖然となってしまうだろう。

 ハマーショルド国連事務総長が亡くなったのは、1961年9月。コンゴ動乱の調停に向かう途中、ザンビアで国連チャーター機が墜落。チャーター機に乗っていた乗客16人が全員亡くなっている。事故の原因はパイロットの操縦ミスと報じられたが、当時から暗殺説は囁かれていた。この怪事件を、国連職員を父に持つスウェーデン人のヨーラン・ビュークダールとデンマーク人のマッツ・ブリュガー監督が改めて調査することになる。

 マッツ監督たちは事故現場を訪ね、解決の手がかりが残されていないか探して回る。地元の人たちによると、事故が起きた夜は空に閃光が走り、大きな音がしたという。チャーター機は爆撃された可能性が高いことが分かる。それにも関わらず、事故当時に墜落機は詳細に調べられず、うやむやのまま済まされてしまった。マッツ監督たちは事故現場にまだ埋れているかもしれないチャーター機の残骸を掘り出そうと試みるが、徒労に終わってしまう。

 マッツ監督たちの調査は紆余曲折し、なかなか前には進まない。そんな中、重要な手がかりとなるのが「南アフリカ真実和解委員会」が残した資料だった。アパルトヘイトに関する数々の犯罪を記録した資料の中に、「南アフリカ海洋研究所」(通称サイマー)という名前が見つかる。実はこの「サイマー」は民兵組織、諜報機関であり、ハマーショルド暗殺計画を企てていたことが明るみになる。「サイマー」とは一体どんな組織だったのか?

 調べていくうちに、「サイマー」の恐るべき実態が判明する。「サイマー」は白人至上主義団体で、外国政府からの支援で運営されていた。アフリカ各国の独立運動に協力的だった国連のハマーショルドは、白人社会にとっては目障りな存在だった。ハマーショルドが乗っていたチャーター機は、やはり傭兵によって爆撃されていたのだ。この事件に「サイマー」は深く関わっていたようだ。

 秘密結社「サイマー」の恐ろしさは、それだけではなかった。アフリカ各地に診療所が設けられ、エイズ予防ワクチンと称して、実はエイズウイルスに汚染されていたワクチンを黒人たちに接種していたというのだ。黒人をこの世から絶滅させるための生物兵器として、エイズウイルスは利用されていた。そして、この事実を公表しようとした「サイマー」の若い女性職員も不可解な死を遂げていた。

 映画の後半、「サイマー」の内情を知る男性ジョーンズが登場し、物語はいっきに佳境を迎える。顔出しでカメラの前に立つジョーンズは、「サイマー」で実際に工作員として活動していたという。「サイマー」について口にするのは危険だが、真実を打ち明けたかったと語るジョーンズ。彼の証言をもとに「サイマー」の組織内部が、アニメーション化されて描かれる。

「サイマー」の准将だと自称する白人男性キース・マクスウェルが現場を指揮し、キースは英国海軍のようにいつも白い服を着ていたという。医者だと偽り、エイズウイルスを貧民街で暮らす黒人たちに接種していたのもキースだった。

 ハマーショルドの遺体の襟元には、なぜかトランプのカードが一枚挟まれており、そのカードは「死のカード」を意味するスペードのエースだった。ジョーンズによると、それはCIAの名刺代わりなのだそうだ。なぜ、CIAは証拠になるようなトランプをわざわざ残したのか。はたして、ジョーンズの証言はどこまで信用できるのか。

 1963年のジョン・F・ケネディ米国大統領の暗殺事件以降、世界中でさまざまな陰謀論が語られるようになった。だが、陰謀論をエンターテイメントではなく、ジャーナリスティックな形でまとめることは容易ではない。黒幕についての推測は成り立つものの、具体的な物証を見つけることは困難だ。また、見つけたとしても、その物証の信憑性を証明することはさらに難しい。事件の内情を知るという関係者が名乗り出ても、どうも胡散臭い話のことが多い。陰謀論を真剣に探れば探るほど、闇が広がり、全体像がぼやけてしまう。

 迂闊に発表するとトンデモ論者扱いされ、世間の信頼を失うことになる。おそらくマッツ監督たちも、頭を抱えたに違いない。「サイマー」の存在は、あまりにも安っぽいサスペンスドラマじみていると。

 本作を観た人の中には、ドキュメンタリー作家・森達也監督が執筆した『下山事件 シモヤマ・ケース』(新潮社)を思い浮かべる人もいるだろう。GHQ占領下の1949年7月、下山定則国鉄総裁は出勤途中に行方不明となり、翌朝になって綾瀬駅近くの線路上で礫死体となって発見された。この未解決事件を、ドキュメンタリー映画『A』(98)や『FAKE』(16)で知られる森監督は独自の視点から掘り起こしている。

 昭和の怪事件として名高い「下山事件」を、森監督はドキュメンタリー作品にするつもりだったが、GHQ下のさまざまな秘密機関が暗躍したこの事件の真相を、取材撮影することは難しかった。結局のところドキュメンタリー映画化は頓挫し、取材が迷走した過程も含めた形でのノンフィクション本として2004年に発表している。謎に近づけば近づくほど、別の謎も次々と見つかり、謎はさらに大きくなっていく。取材者は距離感や方向感覚を失い、ぬかるみ地獄から抜け出せなくなる。陰謀論をノンフィクションの俎上にのせることは、極めて難しい。

 劇場に足を運んだ観客もまた、迷宮の中に迷い込むことになる。「サイマー」の中心人物だったキース・マクスウェルは衝撃的な内容の回顧録を書き残しているが、晩年は心を病んでいたという。回顧録の内容は信用できるのか。本人が書いたという確証はあるのか。「サイマー」の内幕に詳しいジョーンズは、はたして何者なのか。「サイマー」はCIAだけでなく、英国の諜報機関MI6とも関わっていたというのは本当なのか。観客も、陰謀論という名の底なし沼にずぶずぶとはまってしまうことになる。

 複雑に入り組んだ国際社会をあまりに簡略化して理解することは誤った世界観を招きかねないが、難航しながらも本作はとてもシンプルな答えに辿り着いたように思える。非常に排他的で好戦的な、白人至上主義者たちがいるということ。そして、ダイヤモンドやレアメタルなど資源豊かなアフリカ大陸の利権を求めている権力者や企業も存在するということ。その両者の利害関係が一致したとき、事件は起きた。一体、ハマーショルドの命の値段はいくらだったのだろうか。ハマーショルドには死後、ノーベル平和賞が贈られているが、黒人社会と白人社会との仲介役を失ったアフリカは、今も混乱の時代が続いている。

『誰がハマーショルドを殺したか』

監督・脚本/マッツ・ブリュガー 出演/マッツ・ブリュガー、ヨーラン・ビュークダール 

配給/アンプラグド 7月18日より渋谷シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開中

(c)2019 Wingman Media ApS,Piraya Film AS and Laika Film & Television AB

http://whokilled-h.com

このニュースに関するつぶやき

  • 陰謀論は実在するのか???若手俳優が自殺したのも◯◯が失政を隠すためにやったぁぁとかまだいうのがいててもう病院入れとっていうのがうろうろしてるな
    • イイネ!0
    • コメント 0件

つぶやき一覧へ(1件)

ニュース設定