コロナでもライフライン支える人たち 国内確認から半年

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2020年07月29日 12:24  朝日新聞デジタル

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朝日新聞デジタル

写真新型コロナ禍の中、日常生活に欠かせないライフラインを支える人たち=池田良撮影
新型コロナ禍の中、日常生活に欠かせないライフラインを支える人たち=池田良撮影

 見つめるのは病院やクリニック、ドラッグストア、スーパー、コンビニ、保育施設、公共交通機関、物流、清掃業、自治体で働く人たちです。新型コロナウイルスの感染拡大の中、日常生活に不可欠なライフラインを守るため、きょうもそれぞれの持ち場に立っています。


 国内での感染者が確認されてから半年余。感染者数は3万人に達し、終息の見通しは立っていません。感染の拡大を抑える外出自粛やテレワークといった「STAY HOME」ができるのは、写真の人たちの存在があってこそです。感謝の気持ちに突き動かされ、4月から撮影を続けています。一人一人にできる感染防止策を、いま改めて考えたいです。


  医師


国立国際医療研究センター集中治療科(ICU)診療科長 岡本竜哉さん(54)


 今年1月以降、新型コロナが世界で最初に確認された中国・武漢市から帰国の日本人の診療にあたっている。直後の大型クルーズ船での集団感染では重症患者が次々に搬送されてきた。ICUを新型コロナ患者の専用病室に切り替えるなど、初めての試みに緊張が走った。


 スタッフの中には自身が感染源にならないよう家族を実家に移す人もいた。「30年、医療に携わるが命の危険にさらされたのは初めてでした」。患者の中には亡くなった人もいる。家族との面会を果たせなかったケースもあった。


 「この病気が怖いのは自分だけでなく、無意識に家族や大事な人、友人らに危機を及ぼしてしまうこともある。周りを思いやることも感染防止になります」。終息の見通しが立たず、スタッフに不安や疲れはある。そんななか、支えとなるのは使命感だ。「みながこの仕事に誇りを持っています」


  医師


松田クリニック院長 松田州弘さん(61)


 感染拡大が懸念された3月から感染の疑いを訴える人向けに発熱外来を始めた。院内感染を防ぐため、病院敷地の駐車場でワンボックス車を借りて診察している。当初、防護服はなく、かっぱで代用した。


 一回の診療ごとにスタッフ同士で消毒するため、患者1人あたりの診察に1時間はかかる。通常診療後の外来のため、終了が午後9時を過ぎることも度々だ。


 感染を危惧する一般の患者が、受診を控える動きもあった。病院経営は赤字で心身ともに疲弊している。それでも感染を疑う患者のケアにあたるのは信念があるからだ。「地域医療を閉ざすわけにはいかない」


  看護師


平成立石病院看護部長 高橋素子さん(65)


 都内で多くの急患を受け入れる病院で勤める。新型コロナの中等症から軽症者の治療にもあたる。感染者を受け入れた当初は、ベッドのシーツやカーテンの交換も看護師が担った。業者側への感染を防ぐためだ。その一方で、業者から使い捨て用のシーツなどが無償で寄せられた。「ワンチームで日々を乗り切っていました」


 所属する看護師176人にアンケートを取り本音を探った。自身への感染の不安や恐怖、長期化する病との闘いに疲労感を訴える声が多くあった。「使命感だけでは果たせないこともある。スタッフの命や生活を守るのも医療を維持するためには重要なことです」


  看護師


国立国際医療研究センター看護師長 松村由美さん(51)


 新型コロナの重症患者らの療養にあたっている。感染対策は万全を期しているが、自身や部下への感染リスクはゼロではなく不安は常にある。スタッフにも家族やプライベートの面で個々の事情があり、モチベーションの維持に気を配る。全国的に感染の広がりが見え始め不安と緊張はまだまだ続く。「日本のためにやっています。スタッフはみな、その気概で任務にあたっています」


  臨床工学技士


国立国際医療研究センター 勝岡陽和さん(24)


 新型コロナの治療で一躍、注目される体外式膜型人工肺(ECMO〈エクモ〉)を取り扱う。今は感染の第2波などに備えて、平時からECMOの扱いや運用をスタッフで情報共有している。「職種としてもこれだけ注目を受けたことはない。改めて、仕事の責任の重さを体感しています。エビデンスも増えて前よりは心構えが出来ています。医師や看護師らチーム一丸で未曽有の危機を乗り越えたいです」


  臨床検査技師


国立国際医療研究センター 荘司路さん(46)


 新型コロナ感染の疑いを調べる遺伝子検査、PCR検査で検体を採取し調べている。今は「夜の街」対策もあり、1日200件余の採取と1千件余の検査を処理する。作業中は飛沫(ひまつ)感染の恐れがあり常に緊張が走る。防護服姿での作業は、暑さで体力も奪われる。「子どもの検査では防護服を見て泣き出す子もいます。マスクごしでも、笑顔で少しでも不安を取り除いてあげたいです」


  公共交通機関


京成バス運転手 鈴木穂奈弥さん(26)


 緊急事態宣言中、コミュニティーバスの運転では、日用品を買い求めるお年寄りの乗車があった。地域の足を支える重要な仕事だと改めて体感した。乗客はほぼマスク姿で、会話が控えられがちな車内には緊張感が漂う。自身が感染する不安がないわけではない。だからこそ思う。「笑顔でお客様をお出迎えしたいです」


  公共交通機関


JR東日本駅員 森東平さん(37)


 世界でも有数の利用客を抱える新宿駅を担当する。緊急事態宣言中は乗降客が激減し、日々の景色が一変した。先の見えない不安でいっぱいだったが、生活の根幹を支える輸送サービスの提供を継続していく使命感と誇りを持ち、日々の業務に臨んでいる。その支えとなっているのは、利用客から掛けられる感謝の言葉や励ましだ。


  物流


ヤマト運輸セールスドライバー 遠藤克也さん(39)


 感染の防止で人々の在宅生活が増え、宅配便の需要は一気に高まった。緊急事態宣言下、配送中に市街地を走る車の通行量は激減し社会の危機を体感した。感染の不安もあるが、きょうもサービスを待っている人がいる。「お客さまの期待が、使命感とモチベーションにつながっています」


  薬局


マツモトキヨシ 山地雪乃さん(27)


 一時、マスクや消毒液、トイレットペーパーなどを買い求め、多くの人が開店前に並んだ。社会の変化を体感するなかで、商品を届けられないもどかしさがあった。不安や焦りが伝わり、接客中は緊張の糸が張った。体力や精神を削られる感覚だった。だが、つらい中でも来店客からの励ましで奮起してきた。店は原則、年中無休だ。「スタッフみなで、この困難を乗り越えていきたいです」


  保健所


東京都墨田区保健所長 西塚至さん(50)


 緊急事態宣言が発令された4月は一日300件余りの相談が寄せられ、電話がひっきりなしに鳴った。不安と焦りの声にも冷静に対応し、正しい情報を届けることに努めた。今では半分の150件ほどの問い合わせで推移しているが、新たな感染の広がりで予断を許さない。管内では7月、保育所での感染事例があり、園に出向いてPCR検査を実施している。そんな時は、防護服姿に子どもが驚かないよう配慮する。「変身してきたよ」。戦隊ヒーローを演じ、子どもたちの不安を和らげる。


  スーパーマーケット


生鮮市場アキダイ社長 秋葉弘道さん(51)


 3月、初めて外出自粛要請が出た直後から、日常の景色が変わった。開店前の行列や買いだめ、日持ちする商品が完売するなど、人々の不安が店のあちこちに現れていた。多くの買い物客の来店はありがたいが、「3密」の防止で入場制限を設けたこともあった。「商いをするものとして、こんなジレンマはない」と振り返る。「鮮度と安さに、『安心』も求められる時代になった。これからも地域の食卓を支えていきたいです」


  コンビニエンスストア


セブンイレブンオーナー 馬場寛孝さん(39)


 緊急事態宣言下では他の店が臨時休業する中、コンビニは変わらず営業を続けた。多くの来店者に応対するなかで、なじみの客からは「いつもありがとう」と激励の声が寄せられた。24時間毎日、営業を続けるこの仕事の役割を再確認した。「日々、感染の予防策に努めて安心してサービスを提供したいです」


  保育所


なかよし保育園園長 吉田陽子さん(48)


 緊急事態宣言中、自治体から登園自粛の要請もあったが、定員の3分の1の30人余りの子どもたちを毎日預かってきた。最も頭を悩ませたのは子どもたち同士に社会的距離を強いることだ。「何より保育の本質は『密』です。接することで社会性を育みます」。宣言の延長で、登園を控える保護者から多くの相談を受けた。感染防止策に努め、最大限、子どもたちを受け入れている。「コロナ禍でもできる保育を追究していきたいです」(池田良)


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  • アカヒ新聞はライフラインを邪魔する人達。
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