「Zen 2+Vega」の実力は? AMDの最新デスクトップ向けAPU「Ryzen PRO 4000シリーズ」を検証

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2020年07月30日 17:33  ITmedia PC USER

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写真トレー販売される3モデル。文字通り「トレー」に入れられて販売される
トレー販売される3モデル。文字通り「トレー」に入れられて販売される

 AMDが7月21日(米国太平洋夏時間)に発表した、「Ryzen 4000 Series Desktop Processors with AMD Radeon Graphics」。いずれも内蔵GPUとして7nmプロセスのRadeon Graphicsを採用しており、グラフィックスカードを搭載しない低コストな自作PC、ビジネス用途などでの利用が期待される。



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 今回の新APUはメーカー製PCに組み込まれて販売されるため、基本的に一般ユーザーが単体購入することできない。しかし、Ryzen PROのうち3モデルが「トレー販売」、つまりバルク品として8月8日から一般販売されることが決まっている。



 今回、バルク販売される「Ryzen 7 PRO 4750G」「Ryzen 5 PRO 4650G」「Ryzen 3 PRO 4350G」を先行してレビューする機会を得た。実際のパフォーマンスをチェックしていこう。



●デスクトップ向けAPUとしては初のRyzen 7を用意 PCIeは3.0



 Ryzen PRO 4000シリーズは、Zen 2アーキテクチャのCPUコアに、Radeon GraphicsのGPUコアを統合したAPU(開発コードネーム:Renoir)だ。



 “PRO”の名を冠することからも分かる通り、企業向けの管理機能「AMD PRO」を追加した製品であり、発売時点において「AMD X570」や「AMD B550」といったチップセットを搭載するマザーボードで問題なく利用できる。ただし、マザーボードの出荷時期によってはUEFI(BIOS)のアップデートが必要となる。



 なお、PCI Expressについては、Revision 4.0ではなくRevision 3.0となるので注意しよう。



 デスクトップ向けのRyzen PRO 4000シリーズでは、デスクトップ向けAPUとしては初めて「Ryzen 7」をラインアップしている。前世代の「Ryzen PRO 3000シリーズ」が12nmプロセスで開発されたPicassoベースの製品であったことを考えると、性能的には大きく向上しているはずだ。



●スペックは「第3世代CPU」と類似 ただしL3キャッシュは削減



 スペックを見てみると、既存の第3世代Ryzenシリーズの一部製品と似通っている部分がある。



 例えば、Ryzen 7 PRO 4750Gは「Ryzen 7 3700X」と同じコアとスレッドの構成で、動作クロック(周波数)も同一だ。ただ、GPUを内蔵したせいか、L3キャッシュの容量が削られている。そのため、類似スペックを持つCPUに“比肩”するパフォーマンスを発揮できるわけではない。



 内蔵GPUは、Ryzen 7 PRO 4750Gが8コア、Ryzen 5 PRO 4650Gが7コア、Ryzen 3 PRO 4350Gが6コアのRadeon Graphicsを採用している。コア数は控えめだが、動作クロックを高めに設定することで性能を担保している。



 APUの外観は、既存のデスクトップ向け第3世代Ryzen CPU、あるいは先代の第2世代Ryzen APUと基本的には変わりない。



 ただし、第3世代Ryzen CPUで小さくなった「位置合わせマーク」が再び大きくなり、視認性が向上した。小さくなったことが不評だったのだろうか……。



 各製品の想定販売価格(税別)は、Ryzen PRO 7 4750Gが3万9980円、Ryzen PRO 5 4650Gが2万6980円、Ryzen PRO 3 4350Gが1万9980円となっている。



 CPUクーラーが付属しない分、価格は割高に見えるが、グラフィックスカード(外部GPU)を物理的に装着できない小型の自作PCなどでは人気が出そうだ。



●デスクトップ向けRyzen PRO 4000シリーズの実力をチェック



 ここからは、デスクトップ向けRyzen PRO 4000シリーズのパフォーマンスをベンチマークテストを通して確認していく。



 先述の通りトレイ販売品には本来CPUクーラーは付属しないが、今回のレビューキットにはAMD純正のCPUクーラー「Wraith Stealth」が付属していたので、それを利用した。マザーボードのUEFIバージョンは、原稿執筆時点で最新の「2407」で、GPUドライバはβ版の「Adrenalin 20.10.20」を導入している。



 なお、CPU部分のベンチマークでは、比較対象として「Ryzen 3 3700X」のスコアを合わせて計測している。



CINEBENCH R15/R20



 まずは、CPUを使ったレンダリング性能を計測するベンチマークテスト「CINEBENCH R15」「CINEBENCH R20」の結果を見てみよう。



 いずれのAPUも、アーキテクチャの刷新によって第3世代Ryzen CPUに近い水準のパフォーマンスを発揮できていることが分かる。



 CINEBENCH R15のスコアを見てみると、CPUのコア数、スレッド数や動作クロックが同一であるRyzen 7 PRO 4750GとRyzen 3 3700Xはほとんど誤差といえるほどに“肉薄”している。



 最も性能の低いRyzen PRO 3 4350Gでも、マルチスレッドテストでは旧世代のハイエンドCPU並みのスコアが出ている。オーソドックスなビジネス用途では十分すぎるほどの性能のPC環境を構築できそうだ。



 CINEBENCH R20での結果もR15と同様の傾向だ。Ryzen 7 PRO 4750GとRyzen 3 3700Xの差はほとんどない。Ryzen 7 PRO 4750Gと比べると、Ryzen PRO 5 4650Gは70%程度、Ryzen PRO 3 4350Gは45%程度のマルチスレッドスコアとなった。



 CINEBENCH R20では、3回連続でテストを実行した場合の平均実効クロック(Average Effective Clock)と、CPU温度の推移も計測した。



 ベンチマーク中の実効クロックは、Ryzen 7 PRO 4750Gがおおむね4.23GHz前後、Ryzen PRO 5 4650Gが4.1GHz前後、Ryzen PRO 3 4350Gが4.08GHz前後となった。



 温度に関しては、Ryzen PRO 3 4350Gが60度以下で推移した一方で、Ryzen PRO 5 4650Gが62〜77度、Ryzen 7 PRO 4750Gが61〜80度とやや高めの数値で推移した。



 今回使ったCPUクーラー(Wraith Stealth)の冷却性能は、それほど高いわけではない。Ryzen 7 PRO 4750GとRyzen PRO 5 4650Gに関しては、もう少し冷却に気を配りたい。ただし、そこそこ冷える空冷タイプのクーラーで十分だろう。



V-Ray Next Benchmark



 もう1つ、CPUを使ったレンダリングテストとして「V-Ray Next Benchmark」も試してみよう。こちらは、GPU性能も合わせてテストできるものだ。



 GPUのテスト結果は、GPUコアの数の差がリニアに出ているので、特にいうことはない。しかし、CPUテストに関してはCINEBENCHでは誤差程度の差しかなかったはずのRyzen 7 PRO 4750GとRyzen 7 3700Xの差がやや開いた。



 Ryzen 7 PRO 4750GはL3キャッシュが8MBと、Ryzen 7 3700Xの32MBと比較して4分の1に削減されている。この差がスコア差につながったものと思われる。



PCMark 10



 続いて、PCの総合的な性能を計測するベンチマーク「PCMark 10」の結果を見てみよう。



 総合スコアは、順当にRyzen 7 PRO 4750G、Ryzen PRO 5 4650G、Ryzen PRO 3 4350Gという順位となった。



 テスト別のスコアをよく見てみると、アプリ起動やWebブラウジングの性能を測る「Essentials」テストや、オフィススイートなどの作業性能を測る「Productivity」テストにおいて、Ryzen PRO 5 4650Gの健闘が目を引く。



 一方で、画像や動画の製作などクリエイティブ用途の性能を見る「Digital Content Creation」テストでは、Ryzen 7 PRO 4750Gの成績が圧倒的だ。ここは、ひとえにGPU性能の差だろう。



3DMark



 続いて、3Dグラフィックスの描画性能を計測する「3DMark」を実行した。今回はDirectX 12を用いる「Time Spy」テストと、DirectX 11を用いる「Fire Strike」テストの2つのみを実施している。



 こういったゲーム系のテストでは、GPU性能の違いが顕著に現れやすい。とはいえ、いずれも独立した高性能GPUを想定したテストであるため、いうまでもなく結果自体は控えめで、高負荷なゲームプレイには厳しい。



 ただし、Ryzen 7 PRO 4750Gでは、Fire Strikeの「Graphics Test 1」において20fps前後のフレームレートが出せている。これなら、負荷の軽いFPSタイトルや、MOBAタイトルであれば、それなりにプレイできそうな感じだ。



Lightroom/Handbrake



 次に、画像編集や動画編集向けのクリエイティブアプリにおけるパフォーマンスをチェックしよう。今回は、写真編集アプリ「Lightroom Classic CC」と、オープンソースの動画エンコーダー「Handbrake」を使って実際に作業をした際に掛かった時間を計測する。



 Lightroom Classic CCでは、299枚のNEFファイル(7360×4912ピクセル、容量12.5GB)を最高画質のJPEG画像に書き出すまでの時間を計測した。



 やや負荷が高めの作業だったが、Ryzen 7 PRO 4750Gは7分4秒、Ryzen PRO 5 4650Gは8分7秒、Ryzen PRO 3 4350Gは9分50秒と、いずれも10分以内に処理が完了した。



 この手のクリエイティブな作業をたしなむのであれば、従来のAPUよりもコア構成にアドバンテージがあるRyzen 7 PRO 4750G、もしくはRyzen PRO 5 4650Gをお勧めする。



 Handbrakeでは、再生時間7分41秒の4K(3840×2160ピクセル)動画を、「Fast 1080p30」設定で、フルHD(1920×1080ピクセル)のMP4ファイルにエンコードするまでの時間を計測した。



 こちらはRyzen 7 PRO 4750Gが7分52秒、Ryzen PRO 5 4650Gが9分36秒、Ryzen PRO 3 4350Gが13分50秒と、Lightroomによるデジタル現像よりも大きな時間差が生じた。



 やはり8コア16スレッドのRyzen 7 PRO 4750Gは、APUとして一段高い性能を備えており、刺さる人には強く刺さる製品となりそうだ。



消費電力



 最後に、システム全体の消費電力をチェックする。起動後10分間何もせずに安定させた場合の値を「アイドル時」、CINEBENCH R20を動作させた際の最高値を「高負荷時」としてワットチェッカーで計測した。



 アイドル時の消費電力はいずれも25W前後と、まずまず省電力だ。高負荷時については、Ryzen 7 PRO 4750Gのみ実測125Wと100Wを超えた。Ryzen PRO 5 4650Gは99W、Ryzen PRO 3 4350Gは、CPU使用率を高めても65W前後までしか上がらない。



●Zen 2ベースの高い性能はやはり魅力的



 デスクトップ向けRyzen PRO 4000シリーズは、アーキテクチャを刷新することで高いCPUパフォーマンスを獲得し、それに内蔵GPUも付いてくるという“順当進化”といえる魅力的なAPUだ。



 単純に外部GPUを積まないローコストPCを組むのにも良いし、内部スペースが限られた小型マシンで高いパフォーマンスを確保するために使用するのも大いに有効だろう。仮定の話だが、Mini-STXフォームファクターの小型PCで対応製品が出れば、グッと人気が高まりそうだ。


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