「兄を家族として認められたかも」両親の介護で変わった、生活保護の43歳・兄との関係

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2020年08月02日 21:12  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

“「ヨロヨロ」と生き、「ドタリ」と倒れ、誰かの世話になって生き続ける”
――『百まで生きる覚悟』春日キスヨ(光文社)

 そんな「ヨロヨロ・ドタリ」期を迎えた老親と、家族はどう向き合っていくのか考えるシリーズ。

 中村万里江さん(仮名・35)の父博之さん(仮名・68)は4年前、クモ膜下出血で高次脳機能障害を発症し、今は有料老人ホームに入居している。母の晃子さん(仮名・68)は、2019年にステージ4のがんが見つかり、今年になって主治医から終末期に入っていることを告げられた。両親の今後のことを考え、家族信託について調べていた中村さんは、晃子さんの通帳から多額のお金がネットワークビジネス運営会社に振り込まれているのを見つける。

 しかも、同じ会社が関係する瞑想グループにも入り、その仲間が精神的な支えとなっていたのだ。晃子さんと話し合った結果、ネットワークビジネスをやめることはできたが、瞑想グループから抜けることはできず、中村さんの心労は続いている。

(前回はこちら:ネットワークビジネスの仲間を断ち切れない母――「怒りが湧く。自宅に来るのが怖い」介護する娘の心労

終末期の母のために家族が集まった

 現在、晃子さんは自宅で療養しており、中村さんは夜は実家で寝るようにしている。

 晃子さんのこれからについて、中村さんはいくつかの選択肢を調べているところだ。そのひとつがホスピスだ。

「母はホスピスに対して、死ぬところというイメージを持っているようですが、見学してみるとこれまで入院してきた外科とはまったく違いました。母は明確に『最期は自宅で』と意思表示しているわけではないので、本当につらくなってから決めるというのでも、いいかなと思っています」

 そして、晃子さんが博之さんともいつ会えなくなるかもしれないと、家族で集まることにした。

「まず、私一人で父のホームに行って、母の病状を説明して、いつ最期になるかもしれないことを伝えました。その後に、関西から帰ってきてくれた兄と母を連れて、父のところに行きました。兄には母が終末期であることを伝え、帰ってきてくれないか聞いたら、アルバムを持って帰ってきてくれたんです。みんなでアルバムを見て、思い出話もできました」

 ところが、博之さんは晃子さんの病状を理解したせいか、余計に「家に帰りたい」病が出てしまったという。

「もう、父の『帰りたい』にも慣れた気がします。母が自宅にいるというと、パニックがひどくなるので、今は母が病院にいることにして、『家には母もいないし、鍵も持っていないから帰れないよ』と伝えています」

 晃子さんも、博之さんが一時帰宅すると、「もうホームに戻らない」と言い出して手が付けられなくなることがわかっているので、一時帰宅に前向きではないという。とはいえ、晃子さんの免疫療法の結果次第では、博之さんを一時帰宅させることも検討するかもしれないと、揺れる気持ちを語ってくれた。

「先日、父が家に帰ろうとしてホームから抜け出そうとすることについて担当医に相談しました。すると、先生から『一時帰宅させてみてはどうか』と提案されたんです。先生が父に一時帰宅の話をすると、表情が明るくなったということでした。でも父がいったん帰宅すると、『もうホームに戻らない。家にいる』と言い張るだろうし、大きな声を出して暴れるでしょう。母もそれを懸念しています。一番体調の悪い母が父の一時帰宅を前向きに考えられない限り、実現は難しいと思います」

 ただ中村さんが気にしているのは、博之さんがパニックを起こしてホームに迷惑をかけているんじゃないか、ということだ。隙を見て逃げ出そうとする博之さんを、中村さんが止める責任があるのではないか。そんなプレッシャーがあるのだと明かす。

「そんな思いをあるスタッフにこぼしたら、その方が『ここにいるほとんどの方が帰りたいと言われます。そのたびに声をかけて対応しているので、慣れています。大丈夫ですよ』と言ってくださったんです。ああ、ホームにお任せしていいんだと安心できました」

 ほんのちょっとした言葉で、家族は救われる。

兄は協力できる家族の一員

 さて、中村さんが家族で集まりたいと言ったときに、素直に帰ってきてくれた兄(43)だったが、兄のことは相変わらず中村さんの不安材料になっている。当シリーズ初回の記事で書いたように、一時期引きこもっていた兄は現在生活保護を受けながら、関西で暮らしている。

「頼んだことについては、前向きにはやってくれていますが……。でも、どうも親が亡くなったら、遺産がもらえると思ってあてにしているフシがあるんです。だからこちらに帰ってきたときに、我が家の現状をはっきり伝えたんです。母がネットワークビジネスに大金をつぎ込んで、貯金はほとんど使い果たしていること。父のホームには月に40万円も払っていて、お金が底をついたら家も売らないといけないと考えていること……。兄は生活保護を受けているのを恥じていて、できれば抜けたいとも思っているようですが、生活保護でも自立して生活できていることは立派なことなんだと、伝えました」

 今も兄のことをそんなに好きではない、という中村さんだが、これで兄との距離が少し近づいた気がしている。

「兄のことを、協力できる家族の一員として認めることができたかな」

 大人だ。大人すぎる……。しっかりした妹の役割を果たそうとして、中村さんが自分を追い込まないとよいのだが。

 それは大丈夫、と中村さんは言い切った。

「困ったことがあると、仲間に頼るようにしているんです。一人で考えていても出ないアイデアも出るんです」

 2回目の記事で述べたが、今取り組んでいる東南アジアでのコミュニティづくりのように、日本でも家族以外の仲間に子育てや介護を頼ることのできるコミュニティがあればいいと考えている。

「30代で、親の介護を経験している人はそういません。壁にぶつかってどうにも動けなくなった、私と同じような状況の人とつながりたいと思って、インスタグラムもはじめました。発信するだけじゃなく、自分の記録にもなるし、友達もできる。自分の生活と介護のバランスを取るための手段でもあるんです」

 ありきたりだが、中村さんにとってこの経験は、絶対に糧になる。そして、中村さんに救われる人も、きっといる。誰かのためにがんばった人は、いつか必ず報われる。

 中村さんに平穏な日が訪れますように、と祈らないではいられない。

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  • 神奈川県綾瀬市では大勢のホームレスを横浜市から仕入れ、生ポ費ピンハネの貧困ビジネス。無料低額宿泊所入所者の万引き・空き巣・傷害事件を行政が擁護し、地域住民には隠して第二の君野康弘を育成してる。
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