動悸・息切れは年のせいじゃない!? 心臓弁膜症の可能性も

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2020年08月03日 17:00  AERA dot.

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写真(イラスト/今崎和広)
(イラスト/今崎和広)
 心臓の弁に障害が起きて、血液の流れが悪くなる心臓弁膜症。高齢者に多く発症し、加齢による衰えと思っているうちに少しずつ進行する。重症化すると心不全を引き起こすため、早期発見と適切なタイミングの治療が重要だ。週刊朝日ムック『新「名医」の最新治療2020』では、気づきにくい心臓弁膜症の予兆や、治療方法の選択肢について、専門医に取材した。

【データ】心臓弁膜症かかりやすい性別や年代は?

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 心臓はポンプのように休むことなく収縮と拡張をくり返しており、肺から送られてきた血液を全身へ送り出している。そして全身から戻ってきた血液を肺へ戻すといった、人間が生きていくために必要不可欠な、一方通行の血液循環を保ち続けている。

 そのために重要な役割を果たしているのが、心臓にある四つの部屋の出口にあり、扉の役割となる弁だ。この弁が何らかの原因で、狭くなったり、隙間が空いたりして、血液のスムーズな循環を妨げる病気が、心臓弁膜症だ。

 全身へ血液を送り出す役割を果たす心臓の左側の部屋、左心房と左心室の出口にあるそれぞれの弁、僧帽弁と大動脈弁に起こる病気が多い。症状が進むと心臓の機能が低下して、心不全になるなど命に関わる場合がある。心不全の重症度を評価するNYHA心機能分類で一番悪いとされるIV期と診断されると、安静にしていても息苦しさなどの症状が出るようになり、2年生存率は約50%となる。

 四つある弁のいずれも狭窄と閉鎖不全を発症するが、特に多いのが僧帽弁閉鎖不全症と大動脈弁狭窄症だ。

 僧帽弁閉鎖不全症では、弁がきちんと閉まらないため、左心房から左心室へ送る血液が逆流してしまう。

■自覚症状が少なく 病気が進行しやすい

 一方、大動脈弁狭窄症は、大動脈弁にカルシウムが沈着し石灰化が起こり、弁が狭くなることによって、全身へ血液が送り出しにくくなり、心臓にかなりの負担がかかることになる。
「心臓弁膜症がやっかいなのは、早期の場合は狭心症のような胸痛がないなど、明らかな自覚症状に乏しいことです。歩くと息があがる、疲れやすいという症状はあるものの、多くの人が年をとったせいだと思い、そのままやり過ごし、病気を進行させてしまうのです」

 そう話すのは、東京ベイ・浦安市川医療センターハートセンター長の渡辺弘之医師だ。テレビなどで見かける、心臓弁膜症のCMの監修にも関わっており、65歳を過ぎるころになったら、単なる年齢による衰えと片づけないで、きちんと検査を受けるべきだと渡辺医師は強くすすめる。

「今まで楽に歩いていた道を歩くのがつらくなったとか、女性の場合では、家事で難なくこなしていたこと、たとえば洗濯物を干したり、お風呂の掃除をしたりするのがつらくなったら要注意です。同じ動作が去年に比べてつらくなるといった年単位の変化や同世代の人と比較して動作が劣ってきたといったことも発症の目安になります」(渡辺医師)

 また、本人が気づかない動作の衰えなどを、家族や周囲の人が気づいてあげることも大切だという。

「狭心症のように生活習慣病が原因というような、明らかな危険因子は特にありません。加齢による動脈硬化や腎機能の低下など、長年心臓に負担をかけてきたことにより発症します。75歳を過ぎると10人に1人が発症する病気のため、ある程度年齢を重ねてきた人は意識するべき病気です」(同)

 心臓弁膜症は、できるだけ早期に発見して、医師に定期的に観察してもらいながら、最適なタイミングで手術などの根治治療をおこなうことが重要だ。

「おかしいと思ったときに受診していただければ、聴診器で音を聞くだけでも、ある程度病気があるかどうかわかります。その結果、心臓弁膜症が疑われたら、専門医のもとで、心エコー図検査を受ければ病気を発見できます」(同)

■手術が第一選択 タイミングも重要

 心臓弁膜症だとわかると、根治を目指す場合には、手術が第一選択の治療となる。現時点では、薬物療法は症状を抑えることはできても、治すという科学的根拠はないためだ。

「手術をするタイミングが大切です。慎重に決めて、患者さんご本人のライフスタイルや価値観、希望なども考慮して、手術方法を決めます。今は手術の選択肢が増えていると同時に、カテーテルによる内科治療も普及し始めています。いろいろな治療のバリエーションが考えられるようになっています」

 そう話すのは、東京医科歯科大学病院心臓血管外科教授の荒井裕国医師だ。2019年11月に開催された日本心臓弁膜症学会の会長を務めた。

「患者さんの病気の種類、病状、全身状態によって、どういう治療方法を選択すべきかを、外科と内科できちんと話し合って決めることが大切です。また、発症年齢にもよりますが、心臓弁膜症は、年月とともに再治療、再々治療が必要になる場合もあります。最初にどのような治療をおこない、その後どう治療をしていくかも慎重に決めるべきなのです」(荒井医師)

 心臓弁膜症は、今まで心臓の左側にある部屋の弁に発症した病気が重要視されてきたが、三尖弁という、肺から戻ってきた血液を右心房から右心室へ送る弁の病気も注目されてきている。

「三尖弁閉鎖不全症は、僧帽弁閉鎖不全症の手術の数年後に起こったり、不整脈の治療で入れたペースメーカーのリードが、三尖弁にある弁尖という膜にあたったりして起こることがあります。心房細動を持っている人では、弁の土台である弁輪が広がって、弁を変形させてしまうことがあり、それによって三尖弁閉鎖不全症を発症します」(同)

 三尖弁の逆流が起こると、足がむくみ、肝機能障害や腎機能障害が起こることもある。今までは利尿剤などを投与しての対症療法や、僧帽弁閉鎖不全症の手術と同時におこなうなど、三尖弁単独の手術はあまりおこなわれていなかった。

 現在は単独手術も増えており、将来的には、カテーテルを用いてクリップをかける、人工弁を埋め込む、といった治療が期待される。

 心臓弁膜症は他の心臓病との関わりも深く、これまでに心臓の病気があった人も要注意だ。動悸や息切れなど気になる症状があれば、早めに循環器科などを受診して治療を受けることが重要だと、両医師は重ねて強調している。

なお、心臓弁膜症の治療も含む心臓手術や心カテーテル治療に関して、週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2020』では、全国の病院に対して独自に調査をおこない、病院から回答を得た結果をもとに、手術数の多い病院をランキングにして掲載している。同ムックの手術数ランキングの一部は特設サイトで無料公開。
手術数でわかるいい病院
https://dot.asahi.com/goodhospital/

(文・伊波達也)

≪取材協力≫
東京ベイ・浦安市川医療センター ハートセンター長 渡辺弘之医師
東京医科歯科大学病院 心臓血管外科教授 荒井裕国医師

※週刊朝日ムック『新「名医」の最新治療2020』より

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