『ザ・ノンフィクション』84歳食堂店主の心を支える人「おなかも心もいっぱいに 〜はっちゃんの幸せ食堂〜」

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2020年08月03日 21:52  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

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日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。8月2日は「おなかも心もいっぱいに 〜はっちゃんの幸せ食堂〜」というテーマで放送された。

あらすじ

 群馬県桐生市の中心から少し離れた、無人駅のそばにある小さな食堂「はっちゃん500円ショップ」はいつも大勢の客であふれている。500円で食べ放題ながら、カレイの煮付け、焼き鮭、イカの煮物、具がごろごろと入った筑前煮、揚げたての天ぷらなどが大皿で並ぶ採算度外視の豪華さだ。店主の84歳の田村はつゑ、通称はっちゃんは年金を切り崩しつつ、一人で店の切り盛りをしている。

 はっちゃんは終戦直前に母親を亡くし、魚屋に奉公に出され朝から晩まで働き通しで小学校にも通わせてもらえなかった。その後、結婚し3人の子どもを育て上げたあと、自分の人生を生きたいと57歳で一念発起。スーパーカブで日本一周をする。旅の途中、福岡で宿が見つからず途方に暮れていたはっちゃんを自宅に泊めた「マンセイさん」の優しさに感動し、自分も人に親切にしたいと22年前に食堂を始める。

 はっちゃんは漢字が読めないため、マンセイさんという名字の漢字も住所もわからず、お礼を言えないことを悔やんでいたが、23年ぶりに福岡を再訪。写真を手掛かりにマンセイさん(実際は満生と書いて「マンショウ」)と再会を果たす。

 しかしはっちゃんの食堂も新型コロナの影響で客足が途絶え、4月から休業を余儀なくされる。すっかり気落ちしたはっちゃんだったが、6月15日から食堂を再開。客足は以前の半減程度になったものの、県をまたぐ移動自粛が解除されると客足も復調、満生さん親子もサプライズで食堂を訪れ5年ぶりの再会にはっちゃんは涙する。

はっちゃんにとって満生さんとは

 番組では群馬の隣県、栃木からはっちゃんの食堂に足しげく通い、自室にはっちゃんの写真や掲載誌の表紙を額に入れて飾るほど熱烈な、はっちゃんファンの秋山さんが出てくる。秋山さんははっちゃんと年齢も近く、奉公に出された境遇も似ており意気投合したのだという。はっちゃんの店が再開した際も、秋山さんは食堂を訪れ皿洗いの手伝いまでしていた。

 秋山さんというファンのいるはっちゃんも、旅先で宿が決まらなかった自分を泊めてくれた満生さんに熱い思いを抱いている。旅先で良くしてくれた人のことは、誰でもみな感謝するだろうが、はっちゃんの満生さんへの思いは「感謝」という言葉では足りない、もっと深くて特別なものだ。

 はっちゃんは福岡で満生さんに再会できたときは号泣し、食堂に九州から満生さんが娘2人を連れてサプライズ訪問した際は、しばらく固まっていた。その姿は、まるで聖書や仏教の言い伝えで出てくる「聖人を目の当たりにして感動してしまう民衆」のように見えた。

 よく、オタクが推しの良さを語るときに「尊い」という言葉を用いるが、はっちゃんにとって満生さんはまさに尊いのだろう。そして「はっちゃんは立派」と話す秋山さんにとっても、はっちゃんは尊いのだ。なにより、「満生さんへのはっちゃんの思い」「はっちゃんへの秋山さんの思い」の根底には「尊敬」があるように思える。尊敬が根っこにある関係は強い。はっちゃんも秋山さんも尊敬する「推し」がいて、見ている私まで幸せな気分になった。尊敬という感情が持つ前向きで大きな力を感じた回だった。

 面白いのが、尊敬する側の熱意に対し、尊敬されている側は無自覚なところだ。満生さんは、宿がなくて困っている人がいたら、よく自宅に泊めてあげていたそうで、満生さんにしてみたら、それがまさか一人の人生を大きく変えるまでの出来事などとは思っていなかっただろう。満生さんの優しさが、桐生の有名人を生んだのだ。思いがけないところで人は人に影響を与えている。

 休業中のはっちゃんは生きがいを無くしたようにしょげてしまっていて、食堂再開後も半分に減少した客足、残った食べ物を前に浮かない日々が続いていた。そんな中での満生さんの訪問は、どれだけはっちゃんの心に火をつけ、励みになったことだろうと思う。はっちゃんの涙に、人が人に与える影響力の大きさを感じた。

 次週のザ・ノンフィクションは『東大生の僕が手に入れたもの〜「東京大学相撲部」悩める青春〜』。クイズ番組に出てくる、気の利いたことをさらっと言えるスマートさがあって、モテモテであろう今どきの東大生たち。「あれが全体って見られると厳しい。そこはしっかりと伝えておきたい」とアツく語る、ある東大生たちの青春。

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