三菱のクルマは生き残れる? 新中期経営計画を読む

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2020年08月04日 08:02  マイナビニュース

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2020年度の連結最終損益は3,600億円の赤字に――。三菱自動車工業が発表した今期の業績予想は衝撃的な数字だった。三菱重工業の自動車部門として誕生し、「パジェロ」や「ランサーエボリューション」などの人気車を送り出してきた三菱自だが、この局面を乗り切ることはできるのだろうか。

○数々の危機を経験してきた三菱自動車

三菱自動車工業は2020年度第1四半期の決算発表で今期の業績予想を発表した。連結最終損益は3,600億円の赤字を見込む。これは、日産自動車からの出資を受け入れてルノー・日産連合に加わって以降、特にここ数年の拡大路線が収益性の低下を招き、さらには新型コロナウイルスの感染拡大により、販売が急減していることによるものだ。

三菱自は2019年度の連結業績で257億円の赤字を計上していたが、今期はさらに赤字幅が拡大する。3,600億円の赤字予想のうち、「パジェロ」を生産する子会社「パジェロ製造」の閉鎖や欧州での新型車投入凍結などにより、工場の減損損失と合わせ特別損失が2,200億円にふくらむ。

同社が三菱重工業の自動車部門から独立したのが1970年。自動車メーカーとしての歴史は浅いがブランドとしての歴史は古く、かつては軽自動車から小型・中型・大型乗用車にトラック・バス(ふそうブランド)まで、幅広い商品バリエーションをそろえた世界にも類を見ない総合自動車メーカーであった。

1990年代後半には米国工場のセクハラ事件や総会屋問題などの不祥事が発生、さらには再三にわたるリコール隠し問題などが重なり、2000年代初頭に三菱自は業績不振に陥る。その後、一時は独ダイムラーと資本提携したが、ダイムラーはトラック・バスの三菱ふそうを子会社化して三菱自との提携を解消した。2005年3月期にはリコール隠し問題で4,747億円の赤字を計上。その際には三菱重工、三菱商事、三菱東京UFJ銀行(現・三菱UFJ銀行)を主力とする三菱グループが支援した経緯がある。

ようやく経営が立ち直った矢先の2016年には燃費不正問題が発覚。日産から34%の出資を受け入れて同社の傘下となり、必然的にルノー・日産の日仏連合に仲間入りすることとなった。当時は日産の会長だったカルロス・ゴーン氏が三菱自の会長も兼務し、日産主導による三菱自の再建が進められた。

三菱自の歴史を振り返ってみると、1970年代には米クライスラーと資本提携し、2000年代初頭にはダイムラーとの提携から三菱グループの支援、さらには日産傘下入りと紆余曲折を経てきた。2017年からの三菱自は、日産主導によるV字回復を目指した。当初は順調に進んでいたかに見えた三菱自の再建だが、2019年度には再び赤字に転落してしまった。拡大路線は固定費を拡大させ、新型コロナで傷口が広がることになってしまったのだ。
○かつての巨艦が目指す「小さく美しい」自動車メーカー

「グローバルシェア拡大に向けた前中計の全方位積極政策により、固定費が膨張してしまった」。三菱自の加藤隆雄CEOは、2020年度第1四半期の決算発表会見で反省の弁を述べた。この会見で発表となったのが、三菱自動車にとっては生き残りをかけた“最後の砦”ともいえる3カ年新中期経営計画だ。

2020年度から2022年度までを期間とする新中計の名称は「Small but Beautiful」。経営基盤を安定させるため、コスト改革と収益力の改善に重点を置く内容だ。かつては巨艦だった三菱自が中計に「スモールバットビューテイフル」と名づけたのは、考えてみれば皮肉なものである。

新中計では固定費の20%以上を削減し、集中投資で収益力を向上させ、経営資源はアセアンに集中して同市場のシェアを11%超に拡大、アセアンに続く第二の柱としてアフリカ、オセアニア、南米を開拓するとの方針を掲げる。2022年度までには新型車投入により、環境対応車(電気自動車とプラグインハイブリッド車)のラインアップを強化。2022年度以降もアセアンでピックアップトラック、SUV、MPV(多目的車)などの新型車を投入していくとする。

固定費を大幅に削減し、経営資源をアセアンに集中させる意向の三菱自だが、結果的にはリストラに大きく踏み込まざるを得なくなる。かつて「幻の三菱ベストセラーカー」といわれたパジェロを生産する「パジェロ製造」(岐阜県)の閉鎖や、欧州における新型車投入計画の凍結を決めたのも、縮小路線を進まねばならないゆえだ。

三菱自といえば、かつては「ミラージュ」や「ランサー」、「ギャラン」に、“丸の内カー”といわれた「デボネア」まで、各クラスで確固たる地位を確立していたブランドである。

中でもパジェロはジープ型RVとして人気を博し、かつての三菱自のトップが「ウチの隠れたベストセラーカーだ」と自慢していたほど一世を風靡したクルマだ。小型車「パジェロジュニア」や軽自動車「パジェロミニ」などの派生モデルが登場し、それぞれの市場を開拓していった時期もある。そのパジェロを生産していた子会社「パジェロ製造」の閉鎖は厳しい決断だが、三菱自の現状にあっては背に腹は代えられないということなのだろう。

得意とするアセアン地域に経営資源を集中し、三菱商事との連携強化により海外で第二の柱を育てるという戦略の成否が三菱自の今後を左右しそうだが、ホームマーケットである日本ではどんな未来を思い描いているのだろうか。軽自動車については日産との連携により、水島工場での生産を維持できるはずだが、三菱自の独自性、ブランド力の復活という観点から見ると、具体策に乏しいといわざるを得ない。

盟友の日産も、今期の業績予想は6,700億円の赤字と先行きが不安だ。三菱自を助けるどころか、自力復活すら困難な情勢である。

クルマの電動化が進む中で、三菱自は浮上のチャンスをつかめるだろうか。同社には、日産よりも前に量産EVとして軽自動車「i-MiEV」を市場投入した実績がある。現状では得意とするプラグインハイブリッド車(PHVあるいはPHEV)が中心となるようだが、トヨタが先ごろ発売した「RAV4 PHV」の評価が高いので、この市場はもはや、三菱自の独断場とはいえない。

三菱自が今後の投入を予定する「エクリプスクロス PHEV」や次期型「アウトランダー」は、三菱車ブランドの維持、そして浮揚という重要な使命を帯びる。その成否は、何といっても商品力にかかっている。これからの時代、かつての巨艦・三菱自動車には、スモールバットビューテイフルと評価されるブランドとして再浮上してくれることを期待したい。

○著者情報:佃義夫(ツクダ・ヨシオ)
1970年に日刊自動車新聞社入社、編集局に配属となる。編集局長、取締役、常務、専務、主筆(編集・出版総括)を歴任し、同社代表取締役社長に就任。2014年6月の退任後は佃モビリティ総研代表として執筆や講演活動などを行う。『NEXT MOBILITY』主筆、東京オートサロン実行委員なども務める。主な著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)、「この激動期、トヨタだけがなぜ大増益なのか」(すばる舎)など。(佃義夫)

このニュースに関するつぶやき

  • プレミアムがデリカだけではね。エボとパジェロは必要。
    • イイネ!1
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