富野監督が『戦争は女の顔をしていない』の帯に寄せた“お世辞”の真意とは?【鼎談】小梅けいと×速水螺旋人×富野由悠季

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2020年08月06日 11:12  ダ・ヴィンチニュース

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写真(c)2020 Keito Koume Based on WAR’S UNWOMANLY FACE by Svetlana Alexievich (c)2013 by Svetlana Alexievich
(c)2020 Keito Koume Based on WAR’S UNWOMANLY FACE by Svetlana Alexievich (c)2013 by Svetlana Alexievich

「この原作をマンガ化しようと考えた作家がいるとは想像しなかった。瞠目する。原作者の慧眼をもって、酷寒のロシア戦線での女性の洗濯兵と狙撃兵の異形をあぶり出した辣腕には敬意を表したい。それをマンガ化した作者の蛮勇にも脱帽する。男性の政治家と経済人たちの必読の書である。女たちは美しくも切なく強靭であったのは事実なのだ。」――本作の単行本第1巻が発売された際、『機動戦士ガンダム』『Gのレコンギスタ』を手掛ける富野由悠季監督が熱い檄文を寄せた。今回は著者の小梅けいとと監修の速水螺旋人をまじえて、本書にかける思いを語り合っていただいた。


こうめ・けいと●マンガ家、イラストレーター。『くじびき♥アンバランス』『狼と香辛料』『ビビッドレッド・オペレーション』などのコミカライズを手がける。2019年より『戦争は女の顔をしていない』の連載をComicWalkerで開始。


はやみ・らせんじん●マンガ家、イラストレーター。アニメーション作品の設定協力などでも活躍。『速水螺旋人の馬車馬大作戦』などの作品で豊富な軍事知識を披露している。マンガ家として『大砲とスタンプ』を連載中。


とみの・よしゆき●アニメーション監督、演出家、作詞家。手塚治虫のアニメ『鉄腕アトム』で脚本家・演出家としてデビュー。フリー転身後『海のトリトン』などを監督し、1979年に自身の代表作となる『機動戦士ガンダム』を手掛けた。

「蛮勇」という言葉に込められた想い

──『戦争は女の顔をしていない』の単行本では、富野由悠季監督から熱い帯文をいただいています。まずは小梅けいとさんと速水螺旋人さんは、この帯文を読んで、どんな印象を抱かれましたか?

小梅 僕にとって、富野監督は雲の上のような方なので、これだけの励ましの言葉をいただけたことがありがたくて震えておりました。僕としては、この文章は激励の言葉として受け取っております。

速水 ありがたい言葉をいただき、光栄でした。「蛮勇」という言葉は、作品をお手伝いしている僕の立場からも、ふさわしい言葉だなと思っていました。富野監督からご覧になっても「蛮勇」に見えるのだなと、あらためて実感しました。

──富野監督は、この帯文にどのような思いを込められたのでしょう。

富野 この本は公に出版されるものですから、お世辞で書きました。この言葉の意味には、すべて裏があります。正面切って、褒められたと思うな!

一同 はい。

富野 この帯に書いていることは、実を言うと、叱っているんです。この原作の内容をマンガ化するのは、正気の沙汰とは思えない。昨日も原作にあたってみましたが、マンガになんてなるわけがないと思っていました。そういう意味では、本当に「蛮勇」です。どうしてこの原作を、マンガにしようと思ったのか。むしろ教えてほしい。そこが僕のような年代にとっては本当に謎なのです。この『戦争は女の顔をしていない』という書籍は、日本軍の記録しか知らなかったわれわれのような世代にとっては、衝撃的な本でした。第二次大戦のソビエト関連の戦記物は、日本ではほとんど知られていないし、僕自身もその状況を知ったのは、この本が初めてでした。しかも、この本は女性の目線で描かれていて、いわゆる日本の兵士を見送った(国防)婦人会のような目線ではないんです。ソ連の婦人たちは、第二次大戦で戦場に出ていた。戦場で洗濯兵となったり、狙撃手までやっていたことが書かれています。ここに戦争を考えるうえで、一番大事なものが記されているんです。それは戦争の体感です。日本は戦争が終わってたかだか75年ですが、すでにコテンパンにやられたことをけろっと忘れてしまっている。いまでは自衛隊を軍隊だと言い、戦争はカッコいいものだと思っている人がいるんです。彼らには戦争の体感がありません。戦争は憧れてはいけないんです。だから、僕はミリタリーおたくが大嫌いです! 戦車が出てくるアニメを見て、戦車を動かせると思うな、ということです。でも、自衛隊でそういうことが実際に行われつつある。それを速水さんはご存知ですか?

速水 どういうことでしょうか。

富野 航空自衛隊に女性の戦闘機パイロットが生まれているということです。

速水 はい、それは知っています。

富野 それをもって男女同権だと言うんです。女性を戦闘機に乗せて、男女同権論を言えるわれわれの頭の構造、それで国防をやろうと考えている軍人っておかしくないか? それを受け入れている人たちに『戦争は女の顔をしていない』を読んでほしい。女性が戦場に出れば、(男性とは違う)いろいろな感情が生まれるんだと。それだけ強烈なメッセージがここにあるんです。

戦争を知らない世代だから描ける戦争の姿

富野 「ガンダム」の富野が良く言うねと言う人がいるかもしれない。でも「ガンダム」で40年間徹底的に戦争を考えてきたからわかるんです。僕が20年前に「ガンダム」を書けなくなったのは戦争で解決するものなんてないとわかってしまったからです。だから一度「ガンダム」から降りた人間なんです。『戦争は女の顔をしていない』は、われわれの世代が一番知らないことを教えてくれた。なおかつそれは文学者じゃないんです。ジャーナリストなんです。しかも、日本語の翻訳がとてもすばらしい。翻訳家の仕事としてピカイチです。三浦みどりさんという方が翻訳されているのですが、ロシア文学やソ連の風俗を熟知したうえで、文学作品ではなくドキュメント作品としてしっかりと翻訳してくださっている。本当に感謝をしています。そういう意味でもとても貴重な本です。どんなかたちであれ、ひとりでも多くの人に知ってほしい。なのでマンガ化には基本的に賛成です。マンガでこの作品を知った人は、ぜひ原作にあたっていただきたい。そして、いまの日本の政治家や経済人が一番読まなくてはいけない本でしょう。

──ぜひ、先ほど富野監督がおっしゃっていた「この原作をマンガ化した謎」について、小梅さんと速水さんからお話しいただけますか。

小梅 まずは富野監督、2度目の励ましのお言葉、ありがとうございます。KADOKAWAのパーティで、アームロックをかけていただいたことがあるので、そのときの思いを胸にここまで描かせていただきました。

──アームロック(笑)。

小梅 まず、この企画の始まりは、2018年まで『狼と香辛料』という作品をずっと描かせてもらっていて、そのしっとりとした表現とか情景画を見ていた、僕の担当をしている荻野(謙太郎)さんという編集者が「小梅くんにできないか」と2年前くらいにこの原作を見せてくれたんです。最初は、無理に決まっていると思って僕も断っていたんです。でも『狼と香辛料』の連載が終わって1年くらい経ったころに、SNSでいろいろな人が自分の身近な題材でエッセイマンガを描いているのを見て、マンガはいろいろな表現ができるメディアなんだなと、あらためて思ったんです。たとえば、昨今の新型コロナウイルスの危機においても、いろいろな人がマンガを描いてSNSで発信している。僕らはそのマンガを読むことで、自分が知らなかった世界を垣間見ることができるんですよね。僕もこのマンガを使って、できることはないだろうかと思ったときに、『戦争は女の顔をしていない』をマンガ化してみようと思いました。連載の条件として考証の人を付けてほしいとお願いして、速水さんに入っていただき、執筆を始めたんです。

速水 僕はその担当編集の方が「第二次大戦の独ソ戦ものを企画しているので参考になる書籍を教えてほしい」とTwitterで発言されていたのを見たことがきっかけでした。そのときに、いくつかの書籍を提案したことがご縁となり、企画に誘っていただいたんです。まさかそれが『戦争は女の顔をしていない』だとは思いもよりませんでした。驚くのと同時に、悔しさのほうが大きかったですね。この本を僕は群像社版が出たときにいち早く買って衝撃を受けていたので、どうせマンガ化するなら自分に描かせてほしいという気持ちが正直あったんです。小梅さんのマンガがすばらしかったので、いまは悔しい気持ちはなくなりましたが、自分だったらどうやって描くかを考えることはあります。

富野 いまおふたりの話を聞いていて、速水さんに関しては「残念ですね」とお伝えします。先にマンガ化できれば良かったのでしょうけど、悔しいだろうなと思います。速水的に戦争を考えているマンガ家もいるんだからと。でも、速水さんはやらなくてよかった、とも思います。どういうことかというと、年齢差の問題なんだよね。戦争に対する記憶や感度みたいなものが、小梅さんの世代に降りてきて、初めてこういうマンガ化になっているんだと思います。僕も正直に言うと、マンガ版を読むのが初めは本当に嫌だった。マンガになんてなるわけないじゃないかと思っていたからです。お仕事だから仕方なくて、我慢して読んだ。そうして読んだときに、僕にも、速水世代にも描けないものだとわかったんです。小梅世代があっけらかんと描いていることが、救いだと思いました。僕らや速水世代だと過去の戦争論や米軍、赤軍(ソ連陸軍)の視線に囚われてしまうから、「回顧もの」になってしまうんじゃないかなと思うんです。でも、このマンガ版はそういうことがない。とても良いことだと思いました。

──いまの世代だからできるマンガ化だったということですね。

富野 僕の戦争の記憶といっても、空襲で防空壕に逃げたという記憶しかないんです。その空襲で向こう三軒両隣、何人もの人が死にました。戦争が終わって、小田原の上空を飛んでいるB-29を綺麗だな、カッコイイな、あんなに綺麗でカッコいいB-29に爆弾を落とされたら、負けるよねと思いました。そのときの思いがあったから、戦後の日本人は頑張れた。自動車で世界と競いあうところまできた。でも、今度はAmazonとFacebook、Googleにめちゃくちゃにやられてる。中国にもやられて、何もできない日本人は本当にしようがねえよなと思ってる。そういう時代感覚があるから、僕らの世代は『戦争は女の顔をしていない』を受け入れたくないし、考えたくもないんです。でも、小梅世代になると、戦争の記憶なんてないでしょう。まるで戦国時代の物語のような距離感で、この作品を書いている。近代戦でどのように女性が蹂躙されているか。それは男に犯されるような蹂躙ではないのよね。戦争そのものに蹂躙されているんです。そういう意味では、小梅けいとくんは偉い。これから死ぬまで、飽きずに、この作品をマンガ化して広めてほしいと思っています。

戦場にいる女性の視線を描くために

──当時の女性を描くうえで意識していたことはありましたか?

小梅 最初にこのマンガ化の話を聞いたときに、企画の骨子に『この世界の片隅に』という作品がありました。あの作品はフィクションですが、広島の呉で暮らす女性の姿を戦前から戦後まで淡々と描いたもので、地に足が着いたマンガでした。僕も『この世界の片隅に』を描かれたこうの史代先生のファンだったので、それと同じコンセプトの作品を自分で描けたらすごいことだなと思っていました。まだそこまでのものになっているかどうかはわかりませんが、この女性はどんな女性だったのだろうと考えながら描いています。前線にいても、髪を整えたり、砂糖を気にしている。ソ連軍というと、日本に住んでいる僕には怖いイメージしかなかったんですけど、戦場にも女性たちがいて、生活を支えようとしていたことがわかって、いろいろなことを調べていくうちに、僕の中でもだいぶ印象が変わっていきました。戦場でも、のんびりできる時間があったんだなとか、その緩急の激しさが印象的でしたね。

──小梅さんと速水さんのやり取りの中で、戦場や日常の細かい描写が描かれているわけですね。

速水 小梅さんのマンガは日常や視線が低い描写にすごく目線が行き届いているんです。僕が指摘するまでもなく、いろいろと気を遣って描いていらっしゃるので、僕はほんの少しサゼスチョンをするくらいです。

小梅 当時のソ連のお国柄みたいなところは描いていても楽しいですね。庶民の生活では、サモワール(お湯を沸かす器具)がかならず部屋にあるとか、旅行にウォッカを持っていくとか。

速水 兵器や制服といったものを考証するのは勿論ですけど、マンガを描くにはそれだけでは足りません。身の回りの品々、風景などをあらためて調べる必要があります。僕自身もとても勉強になりました。

──作品の中に登場する女性たちが実際に暮らしていたところまで、速水さんはお調べになっているそうですが。

速水 ロシアはネット上の資料が充実しているんです。作品に登場する人物を検索すると、すぐに情報が出てくることが珍しくありません。それほど困難な作業ではありませんでした。

──単行本の第1巻が発売されたときの反響はとても大きいものでした。みなさんはこの反響の大きさをどのように受け止めていましたか?

小梅 実は、単行本が出て、世の中の人の反応を見るまで、この作品を描くことがどんなことなのかを、僕は良くも悪くも、わかっていなかったんです。だから、富野監督がおっしゃったように、まさに蛮勇でした。わかっていないがゆえの勇気で描けていたというところがあると思います。

速水 出来上がったマンガを見たら、これはたくさんの人が読む完成度だと思いました。なので、反響自体は意外というわけではなかったですし、多くの方がこの作品で第二次大戦のソ連を知ってくださったことは嬉しいのですが、個々のエピソードでひととき泣いたり感動したりで済ませてはもったいないなという気持ちがあります。この作品は原作も含めて、注釈がたくさん必要なほどの内容が詰まっているものなんです。この一冊で「わかった」と思ってほしくはない。これをきっかけにいろいろなことに興味を持っていただきたいです。

小梅 ……今は、この反響の大きさにあっぷあっぷになっているところがあります。本当にいろいろな声をいただきました……。僕自身はそんなに優れた能力をもっていると思っていないので、反響をいただいたとしても、それは120%原作のおかげだと思っています。もっと頑張らないと、僕のせいで原作が汚れてしまうんじゃないかと恐怖心で神経過敏になっているので、いま富野監督からいただいた激励の言葉にかなり励まされました。

戦争を次の世代に語り継いでいく覚悟

富野 今回、小梅さんが回答するときに、しどろもどろなんですね。本当にバカだな、何も考えていなかったのかよ、とつくづく思うわけです(笑)。

小梅 (苦笑)すみません。

富野 でも、そのままでいいんですよ、と。このまま描き続けていって、いつか質問者に応えられるような言葉遣いを発見してくれたらいいなと思います。小梅という世代が、戦争というものをこの原作からようやく知って、「かつて人類はこういう戦争をしました」という言葉遣いが生まれたら本当に良いなと思います。こういう素晴らしい原作をマンガ化していく中で、戦争というものを少しは考えてほしい。我々は戦争というものが歴史的必然だと思っていたんだけれど、ベトナム戦争が終わったあとも、いまだに中東や各地で戦争が続いています。でも、これらの戦争によって民族や宗教が手に入れたものはあるんですか? と考えなくてはいけないんです。

戦争は絵物語や映画にしたら面白いかもしれないけれど、実際にはもうやっていく余裕なんて、今の地球にはないんだよ、という考えに至らなくちゃいけない。小梅さんは、この作品を通じてオピニオンリーダーになって、これから経済人になろうとする人間と、政治家になろうとする人間にそのことを伝えなくちゃいけない。SNSでブーブー言っている連中を説得できるだけの力を持てるようになってください。

僕は「ガンダム」を40年間やってきたけれども、その力を持てませんでした。結局、現代のような世界情勢をつくることしかできなかった人間です。小梅世代がこれから頑張って、『戦争は女の顔をしていない』の本質的な深さをもっとアピールしてほしい。速水さんも僕よりもずっと若い世代なんだから、小梅さんみたいな若い世代にもっと具体的にアドバイスをしてあげてほしい。もし、ソ連の資料が充実しているなら、もっともっと手助けしてあげてほしい。そして、速水さんがすばらしいのは、彼はただの考証家じゃないということなんです。マンガ家なんです。兵器絡みのマンガを描くにはそろそろ飽きても良い年齢になっているはずなのに、なんでいまだにそんなマンガを描いているのよと。僕は「『ガンダム』の富野」と呼ばれているけど、もう「ガンダム」を捨てています。「ガンダム」を作ったせいで、いまだに僕は右翼だと言われることがあるんだけど、右翼だ、左翼だという言葉遣いをしなきゃいけない大人たちっておかしいんじゃないの? と思っています。

戦争のような消費活動をやっている余裕はもう地球にはないんだと、もうそろそろわかってほしいですね。そういうメッセージをこれからの読者に、これから政治家になるかもしれない、経済人になるかもしれないティーンエイジャーに伝えないといけない。そして、戦争をニュートラルに語れるような言葉遣いというものを発明してほしいなと思います。それが、来年死ぬかもしれない富野からの遺言です。

小梅 ありがとうございます。

速水 ありがとうございます。この作品で頑張るのは小梅さんなので、僕は小梅さんを応援していきます。

富野 あ、それ逃げ口上よ、速水さん。お前もマンガ家のはしくれなんだから、この原作以上のものをやってみせろよ!

速水 はい。それはもちろんです!

富野 ぜひ、この作品で『鬼滅の刃』のような部数を出して、みんなに伝えてください。でも、『鬼滅』みたいな作品を目指すとなると、もう少し戦争シーンを描かなきゃいけないのかな(笑)。

一同 爆笑

小梅 僕は戦争嫌いだから厳しいですけど(笑)。

──現在も『戦争は女の顔をしていない』の連載は続いておりますが、今後の展望をお聞かせください。

小梅 この作品は、インタビュー形式になっているんですが、インタビューを受けている人たちの本心はわからないんですよね。表向きは青春っぽくて、青春を懐かしんでいるような話に見えるんですが、実はその青春を送っている場所は過酷な場所で、ほとんどの人が傷を負っている。その傷の深さは僕らにはわからないんです。アレクセイ(著者スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ)はジャーナリストとしてすごくニュートラルな方なんです。そのアレクセイを読者の共感が得られるような存在として描くことで、彼女の眼を通して、インタビューを受けている人たちの見えないところを考えるきっかけになれば良いなと思っています。そしてマンガを入り口に原作へ興味をもっていただきていです。難航していますが、最後までやり切りたいなと思っています。

速水 先が長い作品ですから、この先を考えると雲をつかむような話なのですが、これはインタビュー集ですから普通の物語のような落ちはないんです。そこをどうまとめるかを一読者として楽しみにしています。いま小梅さんがおっしゃったように、戦争のことなんてわかるわけがないんです。調べれば調べるほどわからなくなります。この本は僕も読者さんも、なにも知らなかったということを知る本になれば良いなと思っています。

富野 最後の小梅さんの発言で、世代のもっている目線の違いをあらためて感じました。難航しているという言い方をしていましたが、当然のことでしょう。右翼でも左翼でもない、資本主義でもなければ共産主義でもない、思想に左右されない、原作者のニュートラルな感じを出すのは難しいのです。でも、だからこそ戦場の体感を正確に伝えられることができるんじゃないかと思います。思想をもってしまうと、どうしても思想にとらわれてしまって、体感にならないんです。軍国主義が良い悪い、政治が良い悪いという言葉遣いで戦争を語るから、間違うんです。ますます期待をしています。

構成・文:志田英邦

『戦争は女の顔をしていない』(1巻)

『戦争は女の顔をしていない』(1巻)
小梅けいと:作画 スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ:原作 速水螺旋人:監修 KADOKAWA 1000円(税別)
第二次世界大戦でソ連軍には100万人をこえる女性が従軍していた。500人以上の従軍女性がインタビューを通して、戦争の真実を明らかにしていく。ノーベル文学賞作家スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチによるドキュメンタリーのコミカライズ作品。

【原作小説】『戦争は女の顔をしていない』

【原作小説】『戦争は女の顔をしていない』
スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ:著 三浦みどり:訳
岩波現代文庫 1400円(税別)


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