スーパーGT:ミシュランが受けたコロナの影響と、GT300復帰で一石を投じる”新たなコンセプト”

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2020年08月06日 18:51  AUTOSPORT web

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写真2020年スーパーGT第1戦富士 MOTUL AUTECH GT-R(松田次生/ロニー・クインタレッリ)
2020年スーパーGT第1戦富士 MOTUL AUTECH GT-R(松田次生/ロニー・クインタレッリ)
 スーパーGTではGT500クラスで2台のニッサンGT-Rにタイヤを供給、さらに2020年からはアストンマーティン・ヴァンテージAMR GT3とレクサスRC F GT3にもタイヤの供給を開始し、2014シーズン以来の“GT300復帰”を果たしたミシュラン。だが、開幕戦の結果は両クラスとも好スタートが切れたとは言い難いものとなった。

 果たして、タイヤ開発の現状はどうなっているのか。そして、いまGT300に再挑戦する狙いは何なのか。開幕戦後、モータースポーツダイレクターの小田島広明氏にリモート取材を行なった。

 GT500クラスではGRスープラ+ブリヂストンの強さが光った2020年のスーパーGT開幕戦富士。ミシュラン勢としてはCRAFTSPORTS MOTUL GT-Rが予選Q1で3番手に飛び込んだが、その後のQ2は7番手という結果に終わった。

「ウエットパッチが残るQ1の状況に、タイヤもマッチしていたのかなと思います。ただQ2になって路面が出来上がってきたときは、前日の公式練習の状況も鑑みると『だいたいこのあたりだろう』というところに収まった、というのが正直な感想です」と小田島氏は振り返る。

 決勝でもCRAFTSPORTS MOTUL GT-Rが7位、MOTUL AUTECH GT-Rはポイント圏外の11位と苦戦したが、タイヤメーカーとしては「いまあるパッケージのなかで、『こういうものが欲しい』というチームさんのリクエストには、充分お応えできていると思います」と小田島氏は言う。

 開幕戦の決勝後、MOTUL AUTECH GT-Rの松田次生は「ベースセットがまだない状態」と苦戦の現状を口にしていた。そして小田島氏は、次のようにもコメントしている。

「(相対的な)順位というところは、タイヤ以外のところで充分カバーできる要素があり、そこが変わることで、タイヤとしてもそれに合わせていく。その準備はできています」

 両名のコメントから推測することができるのは、Class1規定により共通サスペンションが採用された2020年車両への対応がGT-Rとして遅れており、タイヤの開発についても車体側の改善点、すなわち“ベースセットの確定待ち”というような状況にある、ということだ。

 ただし、ミシュランとしても開幕戦に100%ベストなタイヤを用意できたわけではない。フランスでタイヤの製造を行なうミシュランは、新型コロナウイルスの影響を色濃く受けてしまっていたからだ。

「日本のソフトなロックダウンとは異なり、欧州のそれはかなり厳格なものでした。弊社の工場およびオフィスも一時的にすべて閉鎖となり、その影響でタイヤの生産が予定どおりにできませんでした」と小田島氏は説明する。

「工場の再稼働自体は5月1日にできたのですが、タイヤ工場というのは一度火を消してしまうと再生産にはいろいろな微調整が必要で、それに最低2週間かかります」

「スーパーGT用タイヤはミシュラングループ内ではトップ・プライオリティで開発・生産していますので、他のカテゴリーよりは早期に生産が再開できました。ただ、製造・輸送を考えると、6月末の公式テスト(富士)は本当にギリギリのタイミングでした」

 富士の公式テストから開幕戦までは「テスト結果を受けてタイヤを作り替えて持ち込む」時間的な余裕はなく、テストまでに生産が完了していたタイヤのなかから、ベストと思われるものを持ち込んだ。

 つまり、事前にこれまでのデータを活用し「見込み」で作っていたタイヤで、開幕戦を戦ったことになる。小田島氏が開幕戦について「いまあるパッケージのなかでベストな選択ができた」と語るのは、この状況を加味してのことである。

 第2戦以降はテスト結果を反映したタイヤを製造し、持ち込むことが可能だ。開幕戦の分析を経たセットアップも含め、GT-R+ミシュランのポテンシャルアップに注目したい。

■GT300は「専用開発タイヤ」ではない。その真意とは?

 ミシュランは2020年シーズンから2台のGT300車両へのタイヤ供給を開始した。2014シーズン以来の復帰となるが、今回のGT300への供給は、以前の取り組みとも、現在のGT500での取り組みとも、まったく異なる「コンセプト」に基づいて行なわれている。

 すなわち、今季のミシュランのGT300向けタイヤは「スーパーGTに特化したタイヤ」ではない。世界じゅうのGT3・GTEマシンのレース向けに開発しているスペックのなかから、使用タイヤをチョイスする仕組みをとっている。

 果たして、タイヤコンペティションの激しいスーパーGTにおいて、そのスタンスは通用するのだろうか?

 小田島氏は今回のコンセプトについて「このシリーズを継続させるため」と説明する。

「マニュファクチャラーが専用車を開発し、それを各チームがオペレーションするGT500と比べ、GT300の場合はチームが自分たちの意思で購入あるいは製作して選手権に臨んでいるわけで、俗に言うワークス活動とは違うステージでの戦いです」

「『コンペティションだから、開発コストは度外視で勝てばいい』という考えとは少し異なる土壌がGT300にはあると思いますので、コストとパフォーマンスのバランスをうまくとれないのか、というトライをしているところです」

 GT500については完全なるコンペティションの場と捉えるが、GT300については「それだけではない」という考え方である。

「GT500のように毎レース異なったスペックのタイヤを投入するとなると、当然チームさんもそれに準じたテストをしなくてはならない。それだけでなく、テストやレース結果の分析・開発能力という面でも、チームさんの負担はすごく大きくなります」

「したがって、そこをある程度線引きした形でGT300の競争が成立しないのか、ということを我々は考えています。そうしないと、このシリーズが継続できなくなる可能性がある。コンペティションをしながらいかに継続性を保つか。それがGT300に関しては重要ではないかと考えています」

 グローバルなタイヤラインアップからの選択になるとはいえ、「世界じゅうにはいろいろなスペックがあり、『1年間、この2スペックだけでレースしてください』という話ではありません」と小田島氏。コース特性や開催時期の気候に合わせたタイヤを持ち込むことは可能、というわけだ。

 また小田島氏は、このコンセプトでのGT300へのタイヤ供給は「じつは2021年からを予定していました」と明かした。

「幸いなことに、過去数年の間にいくつかのGT300チームさんから『まだか、まだか』とお声がけがありました。ただ、GT3/GTE用のタイヤも日々進歩しているなかで、そのなかにGT300も入れて開発プラットフォームを構成し、そのうえでグローバルに供給の網をかけていく……という準備もあり、2021年からというのがひとつのプログラムとして進んでいたのです」

「しかしながら非常に強いご用命の声を頂いたのと、社内でも2020年から供給できるというコンセンサスが得られたので、早めにお声がけをいただいており、また我々のコンセプトをご理解いただいた2台で、今季からスタートすることになりました」

 GT500よりもオフシーズンのテストの機会が少ないGT300クラスにあっては、新型コロナウイルスの影響はより大きかったと言える。開幕までに充分な走り込みができなかったことでチームがタイヤを理解する時間が充分にとれなかったため、「まだまだ伸びしろはあると考えています」と小田島氏は言う。

 とはいえ、開幕戦では9号車アストンマーティンが早くも入賞を果たしている。「専用開発でない」点をネガティブに捉えるのは簡単だが、「継続性(サスティナビリティ)を第一に考えたグローバルなアプローチ」は、案外軽視できない結果を生み出すかもしれない。

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