店舗数でユニクロ超えも山手線内に店はゼロ。「競争せずに勝つ」ワークマンの凄みに迫る

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2020年08月07日 06:41  ダ・ヴィンチニュース

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写真『ワークマンは商品を変えずに売り方を変えただけでなぜ2倍売れたのか』(酒井大輔/日経BP)
『ワークマンは商品を変えずに売り方を変えただけでなぜ2倍売れたのか』(酒井大輔/日経BP)

 国内店舗数はユニクロをも抜き去り、2020年5月末で869店舗まで拡大。一時は時価総額が日本マクドナルドを凌駕。2016年にはカジュアル色を強めた新業態店「WORKMAN Plus(ワークマンプラス)」をオープン。消費税増税でもコロナ禍でもさしたる影響はなく、順調に収益を積み上げている……。

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 予想外の急成長を見せる企業として、最近メディアで目にする機会が増えたワークマン。“職人向けの作業服専門店”というイメージが強かった同店だが、最近は女性客やアウトドア好きのあいだでも人気が急拡大中だ。

『ワークマンは商品を変えずに売り方を変えただけでなぜ2倍売れたのか』(酒井大輔/日経BP)には、そんなワークマンの急成長の背景が様々な事象・角度から分析されている。その内容は、我々が考えるビジネスのセオリーとは真逆なことばかりだ。

 たとえばワークマンでは、499円の冷感Tシャツや、580円のメリノウールソックス、1900円の防寒ブーツなど、確かな機能性を持った激安アイテムが人気だが、それらの商品は「値段ありきで、どれだけ機能を詰め込めるか」という考え方のもと開発されてきたという。

 青天井の高性能を目指すのではなく、まず「499円でTシャツを売る」と売価を決めてしまう。そこから「何の機能をどこまで盛り込めば支持を得られるか」と考え、高みを目指していく。その割り切った商品開発法が、ワークマンの特徴であり独自性なのだ。

 機能や品質では、スポーツやアウトドア分野のトップメーカーには敵わない。だが、不必要な機能を徹底して省き、最低限の機能だけを残せば、安さで勝負できる。そしてワークマンには、作業現場で磨いてきた耐久性や防水性などの機能性のノウハウがあった……。

 ファストファッションのチェーン店やユニクロは、「デザイン性の高いアパレル製品の廉価版」を作ることで人気を呼んできた。一方でワークマンは、「機能性の高いアウトドアウェア、スポーツウェアの廉価版」を作ることで現在高い支持を得ており、その分野はつい最近までブルーオーシャンだったわけだ。こうしたワークマンの立ち位置の独自さも、本書では的確に分析されている。

 そしてワークマンは、現在も東京の山手線の内側に店舗が一つもない。その背景には、「銀座のような一等地に出店すると売上に占める家賃の割合が6割程度になってしまう」という都心の賃料の高額さがある。そこでワークマンは都心への出店を行わずに、「売上に占める家賃の比率3%」を目標に掲げ、郊外のロードサイドで勢力を伸ばしてきたのだ。

 この点も、都心部から郊外まで日本を網羅するユニクロとは全く異なる特徴で、作業服専門店としてトップを走り続けてきたワークマンの強みだろう。ほかのアパレルチェーン店とは全く立ち位置が違うワークマンには、現在の急成長につながるポテンシャルがもともとあったわけだ。

 そして『ワークマンは 商品を変えずに売り方を変えただけで なぜ2倍売れたのか』では、その急成長を実現させたキーパーソンとして、2012年に入社した土屋哲雄氏(現・専務取締役)の行った改革も事細かに紹介。在庫の数量データすらなかった同社に、データ経営が取り入れられていく過程などは、読んでいて非常におもしろい。

 なおワークマンは、980円、1500円、1980円という3プライスで固めた激安靴専門店の展開も考えているという。その価格帯では、業界の巨人のABCマートとは全く違う土俵で勝負ができてしまう。

 土屋氏は同書でワークマンについて「とにかく競争したくない会社」と評していた。「戦わずとも勝てる分野を見つける」というワークマンの勝ち方は、成長に限界が見えた日本市場でビジネスをするうえでも、非常に参考になるはずだ。

文=古澤誠一郎

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