「10万円給付の申請書、一緒に書こう」参加者ゼロでも狎功畸亙の外国人事情 全国から佐賀に届く悩み

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2020年08月07日 07:00  ウィズニュース

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写真特別定額給付金の申請がまだ終わっていない人に届いた確認の手紙
特別定額給付金の申請がまだ終わっていない人に届いた確認の手紙

1人あたり一律10万円もらうことができる特別定額給付金は国籍などにかかわらず、日本に暮らし、働いたり学校に行ったりしている外国人にも権利があります。しかし手続きは日本語に慣れていないと、大変です。佐賀県内に住むタイ人やタイが好きな人でつくる「サワディー佐賀」は、5月末、ウェブ会議アプリ「Zoom」で「一緒に申請書を書きましょう」と呼びかけました。通訳も準備して待っていたところ参加者はゼロ。それでも「成功」だったと振り返ります。誰も来なかったイベントからは、地方に暮らす外国人の支え合いの姿が見えてきました。(サワディー佐賀代表・山路健造)

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全国から相次いだ問い合わせ
サワディー佐賀では、佐賀県内で新型コロナウイルスの感染が発見された今年3月以降、タイ語でコロナ関連の情報出してきました。

その中でも、関心が高かったのは、特別定額給付金についての情報でした。「外国人でも申請ができる」という情報をタイ語に翻訳して、4月23日にフェイスブックで投稿すると、500回以上もシェアされました。

総務省の「特別定額給付金申請書」の見本ができると、タイ語の記入例をつけて投稿しました。すると、全国のタイ人から「うちの町ではいつ届くのでしょうか?」などの質問がたくさんきました。

その中に「私の家に届いた申請書が少し違うんだけど」という質問がありました。それぞれの区市町村で、少しずつ、申請書が違ったため、混乱してしまったようです。

「タイ語で記入例を書くだけでは伝わらない」。そう考え企画したのが、「オンラインで一緒に申請書を書く会」でした。

日本スタイルの申請書
タイ人にとっては、申請書のどこが難しかったのでしょうか? タイ語の通訳をした春園カノックワン副代表(ノックさん)に話を聞きました。

フリーランスでタイ語の通訳や翻訳をするノックさんですら、申請書を見て「日本の申請書は細かすぎる!」と感じたそうです。

特に困ったのは「署名捺印」のところ。
「ハンコとサインの両方がいるんでしょうか。ハンコを持っていない人はどうしたらいいのでしょうか」

振込先の口座のところも、普通の銀行と、ゆうちょ銀行に分かれています。どちらか片方を書くように日本語の説明がありますが、見落として「2つとも書いてしまいそう」と心配します。

タイでも、日本と同じように、コロナ感染拡大による経済対策として、1人5000バーツ(約17,000円)を3ヵ月支給することになりました。

ノックさんによると、ノックさんのタイの家族は4月13日に申請しました。5月13日には承認されて、14日に2か月分を受け取ったといいます。

というのも、タイは、一人一人のIDがあって、申請はすべてインターネットで完結します。IDを入力するだけで、後日、国から口座情報を聞かれたのみ。「申請はタイの方が便利。細かく申請書を書かせるのは、日本スタイルですね」とノックさん。

参加者ゼロ「ある意味成功」
「一緒に申請書を書く会」の当日、事務局では、タイ語でアドバイスできるようメンバーをそろえて待っていました。

でも、参加したタイ人はゼロ。 参加できるのはサワディー佐賀のLINEグループ登録者(56人、8月6日現在)だけに限っていたとはいえ……。

「サワディー佐賀」のメンバーが特に心配だったのは、日本に頼ることができる家族がいない留学生たちでした。佐賀県内には10人程度ですが、タイ人の留学生が暮らします。それでも、誰も参加しなかった理由を留学生の一人に聞いてみました。

佐賀大学院生のピームさんは「私には、そんなに難しくありませんでした」と話します。

留学前は、タイの日系の出版社にいたというピームさん。タイ語と日本語の記入例を参考にして、問題なく申請書を書くことができたそうです。

「唯一迷ったのは、身分証明書のコピーと銀行口座通帳のコピーを貼る欄が小さかったので、『縮小コピーしなければいけないのか』ということでした」

申請書をクリアしたピームさんが、ほかの留学生に書き方を教えてあげました。

留学生の中には英語で研究するため、日本語はほとんど分からない学生も少なくありません。ピームさんは「一部は私が書くのを手伝いました。もし彼らが1人だったら、かなり難しかったと思います」と話します。

日本語が得意な学生が、まだ日本語のできない留学生に教え合って、佐賀の留学生も自分たちだけで、申請書を書くことができました。


「オンラインで一緒に申請書を書く会」の参加者がゼロだったということは、互いに助け合うコミュニティの力がうまく生かされたということ。
ある意味で、「成功」だったと言えます。

頼る人がいない「SOS」
ただし、佐賀のケースは、まだ目の届く範囲で、外国人が小さなコミュニティーを作っている地域ならではの成功例だったと思います。

ほかの自治体で、外国人を支援している人たちに聞くと、支援ニーズは、10万円の申請書サポートから、社会福祉協議会の「緊急小口資金」融資の申請方法サポートや食糧支援など次の段階に進んだとのこと。

「留学生では、『1週間(食事を)食べられていない』という声もある」「コロナ対策で、行政がドライブスルー形式で食糧支援をしているけど、外国人の方は車がなくて行けない人もいる」「融資の相談に行っても、外国人への対応は担当者によってまちまちのこともある」などの声も聞きます。

佐賀のタイ人同士の互助を促すために立ち上げた「サワディー佐賀」ですが、Facebookには、佐賀以外の全国からたびたび質問が寄せられていました。コミュニティーが弱い地域で暮らす外国人の存在、困ったことを聞ける人、頼る人が近くにいない人のSOSにも感じられます。

必要な給付金をもらうことができない人が、少しでも減るように願って、佐賀県国際交流協会が作った、定額給付金申請の締め切りの注意喚起文章もタイ語に翻訳し、8月6日にSNSで拡散しました。そのほか、「参加者ゼロ」のまま録画しておいた「オンラインで一緒に申請書を書く会」の動画(タイ語とやさしい日本語で説明)も、希望者に配信しています。

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