医療費が高額だと、税金は安くなる!? 合算できる「医療費控除」

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2020年08月10日 11:30  AERA dot.

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写真小泉正典(こいずみ・まさのり)/特定社会保険労務士。1971年、栃木県生まれ。明星大学人文学部経済学科卒。社会保険労務士小泉事務所代表、一般社団法人SRアップ21理事長・東京会会長。専門分野は、労働・社会保険制度全般および社員がイキイキと働きやすい職場づくりコンサルティング。『社会保障一覧表』(アントレックス)シリーズは累計55万部のベストセラー
小泉正典(こいずみ・まさのり)/特定社会保険労務士。1971年、栃木県生まれ。明星大学人文学部経済学科卒。社会保険労務士小泉事務所代表、一般社団法人SRアップ21理事長・東京会会長。専門分野は、労働・社会保険制度全般および社員がイキイキと働きやすい職場づくりコンサルティング。『社会保障一覧表』(アントレックス)シリーズは累計55万部のベストセラー
  社会保険労務士の小泉正典さんが「今後いかにして、自分や家族を守っていけばいいのか」、主に社会保障の面から知っておくべき重要なお金の話をわかりやすくお伝えする連載の第7回。

 前回に引き続き医療に関係した「戻ってくるお金」について、知っておけば助かる控除に関して説明します。今回は一定額以上の医療費を支払った場合に税金を安くする方法です。

【表】医療費控除が認められる費用・認められない費用

*  *  *
 これまで医療に関する社会保障の健康保険や労災保険などについて、基本を解説してきました。今回は社会保障ではなく、税金のお話です。

 一定額以上の医療費を支払った場合、税金を安くすることができるのですが、特に若い人の場合は「なんとなくそういう話を聞いたことがある」ということも少なくないかもしれません。しっかり理解していないと「納めなくてもいい税金」を払ってしまうことがあります。そうならないためにも、ぜひこの記事を一読しておいてください。
 
 なお、今回も今までと同じく「自分で申請」しないといけません。

■家族みんなの医療費合計が10万円を超えないか要確認
 
 高額の医療費がかかった場合の保障である健康保険の「高額療養費制度」については、この連載ですでに説明しましたが、家計の大きな負担となる額の医療に関連した費用は税金面からもサポートされます。これは「医療費控除」と呼ばれるもので、簡単に言えば税金(所得税)を計算する元となる課税所得から医療費を差し引くことで税金が安くなる制度です。
 
 この制度を使える基準は基本的に「年間の医療関係にかかった費用の総額が10万円を超えた額」です。例えば医療関係にかかったお金が年間15万円だとすると、

15万円−10万円=5万円

となり、この5万円が医療費控除の対象になります。総所得が200万円未満の人の場合、差し引かれるのは10万円ではなく、総所得の5%です(総所得150万円とすると、150万円×5%=7万5千円)。
 
 また生命保険契約などで支給される入院給付金や健康保険などの高額療養費・家族療養費・出産育児一時金などを受け取っている場合は、その金額を医療費から差し引かないといけません。

 総額10万円を超える額というとかなり高額に感じますが、これは「生計を一にしている家族」にかかった医療費をすべて含みます。本人と配偶者、子どもにかかったいろいろな医療費だけでなく、高齢の親がいる場合の医療機関でのリハビリ治療などにかかったお金も合算できるので、細かい医療費をすべて足していくと、この額を超える家庭も少なくないと思います。なお、医療費控除の上限は200万円となっています。

■一部の「健康保険対象外」の費用も控除できる

 それでは、どのような費用がこの医療費控除の対象となるのでしょうか。表にまとめましたが、基本的には通常の治療費や検査費、医薬品代などの「保険のきく医療費」です。治療目的であれば、マッサージや鍼灸(しんきゅう)なども対象です。医療費控除の場合は、通院にかかった公共交通機関の交通費などもその対象となります。
 
 さらに高額になりがちな歯科のインプラント治療も認められています。インプラントは、50万〜100万円ほどになることがありますから、治療をする場合はこの制度を利用したいところです。ただ治療目的ではなく美容のために歯を矯正した場合などの費用は対象外です。

■具体的に、どのくらい戻ってくるの?

 それでは医療費控除で実際にどのくらい税金が戻ってくるのでしょう。その前に控除についてごく基本的なことを簡単に説明しておきたいと思います。
 
 医療費などの控除は税額から直接差し引かれるものではありません。たとえば年間に50万円の所得税を納めている人の医療費控除が50万円だったとして、50万円−50万円=0で所得税が0とはなりません。
 
 この場合は、「所得税の計算をする元となる所得額」から差し引きます。給与の総額から、社会保険料分の控除や給与所得控除とよばれるサラリーマンを対象とした控除、扶養家族がいるなら扶養控除などさまざまな控除分のお金を差し引いた後の「課税所得」と呼ばれる金額に、税率をかけて所得税が計算されます。

 サラリーマンの場合、このような計算はすべて会社が年末に行っています(年末調整)。控除額の合計などは会社から渡される「源泉徴収票」に記載されています。

 税率はこの課税所得の金額により変わります。
 
 たとえば年収500万円で扶養家族なしでは、ざっくり計算すると課税所得はおおよそ250万円程度で、この金額の場合の税率は10%です。実際の計算では10%をかけた数字から9万7500円が控除となるので、税額は約15万円になります(各種控除などにより同じ年収でも課税所得や税額は異なる場合があります)。

 この条件でもし50万円の医療費控除があった場合は、税率が10%なので5万円が戻ってくることになります。15万円だった所得税が10万円になるわけです。課税所得が330万円超〜695万円の人なら税率20%なので、10万円戻ってきます。(医療費控除により、課税所得額が減り税率が変わる場合もあります。また最終的な納税額には復興特別所得税が加算されます)

■「確定申告」が必要とはいえ、特別な知識は全く不要

 実際に所得税を還付してもらう手続きについて、説明します。この申請には税務署での「確定申告」が必要です。自営業者やフリーランスの人が毎年行っている、税額を決定するための申告です。サラリーマンの多くが未経験の確定申告ですが、医療費控除の申請では、自営業者が行っているような収支の細かい計算や簿記の知識は全く必要ない簡単なものなので心配は無用です。

必要な書類は以下のものです。
・医療費の領収書
・給与の源泉徴収票
・医療費控除の明細書
・確定申告書A
・マイナンバーなどの本人確認書類

 領収書に記載された医療機関などの名称や支払った金額を医療費控除の明細書に記載します。領収書がない交通費などは、自分で手帳などにその都度、記録しておく必要があります。

 医療費控除の明細書と確定申告書は国税庁のサイトからダウンロードして印刷するか税務署の窓口で入手できます。書類の書き方については、管轄の税務署に電話で相談の申し込みをすることも可能です。提出書類を税務署に提出すれば、一定期間の審査の後、指定した口座に医療費控除分が振り込まれます。

■特定の医薬品購入で控除される「セルフメディケーション税制」

 今まで説明した医療費控除の特例として、健康の維持増進、病気の予防に一定の取り組みを行っている人に向けた「セルフメディケーション税制」というものもあります。「スイッチOTC医薬品」と呼ばれる医薬品を購入した際に、その購入費用について所得控除を受けることができるものです。この医薬品はドラッグストアや薬局で手に入る一般的な風邪薬や胃腸薬、鎮痛剤など非常に多岐に及び、どれが対象商品かはレシートに記載されています。
 
 この医薬品を年間に1万2千円以上購入した上で、会社や自治体の健康診断を受けている人が対象となります。1万2千円を超える分については、今まで説明した医療費控除と同様に税率に応じた額が所得税から控除されます。
 
 ただ、このセルフメディケーション税制は、医療費控除と併用ができません。どちらか一方になるので、有利な額となるほうを自分で判断する必要があります。

■みんなもらった「10万円」。特別定額給付金には税金がかかる?
 
 今回税金についてお話ししたので、余談になりますが、あの「10万円のお金」、特別定額給付金の税金上の取り扱いについて少し書いておきます。
 
 7月の時点で9割の人に給付済という発表もあったので、特別定額給付金がすでに振り込まれたという人も多いと思います。この10万円ですが、税金上の取り扱いはどうなっているのでしょうか。「所得」となるなら、税金がかかってきます。またパート・アルバイトで働いている人は、扶養になるぎりぎりで収入を調整している場合も多いですが、この10万円がプラスされることで、そのラインを超えてしまう心配もあるかもしれません。
 
 答えを言えば、特別定額給付金について税金はかかりません。扶養のラインも変わらないので心配はいりません。事業主やフリーランスの人を対象とした持続化給付金は収入とされるため、今年度に利益が出れば翌年の申告時に課税対象となります。
 
 なお特別定額給付金の申請は、すでに締め切った自治体もありますが、多くは8月中のようです(自治体により締め切り日は異なります)。もしまだという人がいれば、急いで確認したほうがいいでしょう。

 次回も損をしないための社会保障の基礎知識について、引き続き解説していきたいと思います。

(構成・橋本明)

※本連載シリーズは、手続き内容をわかりやすくお伝えするため、ポイントを絞り編集しています。一部説明を簡略化している点についてはご了承ください。また、2020年8月5日時点での内容となっています。

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