稲垣えみ子「家事は自由に生きるための最強アイテムである」

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2020年08月10日 11:30  AERA dot.

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写真元朝日新聞記者 稲垣えみ子
元朝日新聞記者 稲垣えみ子
 元朝日新聞記者でアフロヘア−がトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。

【写真】稲垣さんが最も好きな家事は…

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 家族持ちの友人(女)たちから、コロナに伴う休校とリモートで超大変だったヨーという話は散々聞いていたので、先日のアエラの家事削減特集はタイムリーだったと思うのだが、家族事情に疎い単身者には一点、ナゾがある。

 この局面で大変になってしまうのがどうもやはり女性メーン。夫婦ともにリモートなら家事も育児もイーブンになるのがソーナチュラルだと思うんだが、どうもそうはなっていないように見える。家にいる男性はむしろ余計な家事を増やす不良債権状態であったりする。ナゾである。彼らはいったい何者なのか? もしや「家事を誰かがやってくれるのはラッキー」などと思っておられるのだろうか。

 家事が面倒かどうかは人によるが、ここで言いたいのは好き嫌いの話ではない。なぜか誰も言わないんだが、家事をやることはトータルで見れば「圧倒的にお得」という現実についてである。

 家事ができるとは、女子力高いとかそういうことじゃなくて、自由に生きるための最強アイテムである。炊事洗濯掃除ができれば何はなくとも自分の力で、日々美味しいものを食べ、スッキリ片付いた部屋で、こざっぱりした服を着て暮らすことができる。となれば人生だいたい幸せなんである。大丈夫なんである……ということを、私は会社を辞め収入も肩書もなくして思い知った。月収2万円という時もあったが案外平気だったのは才能があったからでもコネがあったからでもなく最低限の家事ができたからだ。家事はセルフ安全保障。家事ができればリスクを取って好きなように生きられる。

 もちろんリスクなど取らないでいられるならそれもいいが、コロナは我々に将来確かなことなど何もないということを突きつけた。最高の会社もいつまで安泰かは謎。そもそも金の価値すらもはや不明。金があっても外出もままならぬ時が来るなんて誰が想像しただろう。でも家事さえできたなら。この不確かな時代にこれほど確かなものはない。男であれ女であれそれをやらないのは危険である。

稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行

※AERA 2020年8月10日−17日合併号

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