【特集】新型「ハリアー」大研究 第3回 「ハリアー」はカッコよくなった? デザイン新旧比較

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2020年08月10日 11:31  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
トヨタ自動車の新型「ハリアー」は、従来型に比べてカッコよくなったのか。先代モデルを長きにわたり愛でてきたオーナーやファンの間には、さまざまな見方があるはずだ。従来型が好みだった一人のクルマ好きとして、今回は個人的見解たっぷりに新旧ハリアーを比較してみたい。

○都会的なスタイルは共通も異なるアプローチ

2013年11月に発表された従来型ハリアー(3代目)は、約7年のモデルライフを担ってきた。2017年6月にマイナーチェンジを実施しているが、デザインが大きく変わらなかったのは、このクルマのキャラクターが確立していたからなのだろう。都会的で洗練されたスタイルとスポーツマン的な細身のシルエットが特徴的で、仕事から遊びまでしっかりとこなすマルチプレイヤーな社会人を体現したようなデザインだった。

一方の新型は、ボディが少しサイズアップしたことで、よりグラマラスなデザインへと発展。近年のクーペSUVブームの影響を受けたものとなった。伸びやかなフォルムを強調するロングノーズ(長い鼻先)、なだらかに傾斜したクーペライクなルーフライン、グラマラスなヒップラインなどが、パワフルなアスリートやサラブレッドなどのボディを彷彿させる。旧型が細身のシングルスーツであったとすれば、新型は貫録を感じさせるダブルのスーツのようだ。しかし、どちらからもハリアーらしさは感じられる。その理由は、両者に共通するアイコニックな意匠のゆえであろう。

○受け継がれるアイコン

個々のパーツで見ていくと、新旧ハリアーはとてもよく似ている。薄型で切れ長のライトのデザイン、ガラス調のフロントグリル、台形形状のフロントアンダーグリル、クーペライクなサイドガラス、プレーンなサーフェスのドア、鷹の目のようなリヤテールランプなどは、デザインの方向性が同じだ。ちなみに、ホイールデザインもテイストが似ている。アイコニックなパーツの共通性が、新旧2台のハリアーらしさにつながっているのだ。

新型のインテリアを見ても、過度な装飾を控えたダッシュボード、ソフトパッド素材を多用したインテリアパネル、質感の高いスポーティーなシートなど、旧型から受け継いでいる要素は多い。フロントグリルから失われてしまったハリアー専用のエンブレム(タカ科の鳥であるチュウヒがモチーフ)は、フロントドアの内装にエンボス加工であしらわれている。このように、至るところで「ハリアーネス」は健在なのだ。

○使い勝手に直結! 新旧のサイズ差を確認

実際のところ、新旧でサイズがどのくらい違うのかについては、下の表を参考にして欲しい。ボディサイズは全長で15mm、全幅で20mmのボリュームアップをとげているが、シルエットに影響を与える全高は-30mm、最低地上高は+15mmとなっており、上下の厚みは薄くなっている。室内は横幅こそ拡大されたが、逆に前後で長さは縮小。これは、ボディサイズの拡大分がデザインの変化に割り当てられたことを意味する。

事実、新型が備えるグラマラスなリヤスタイルは、製造に手間がかかる上、ラゲッジルームのサイズを圧縮するなどのデメリットも大きい。このような手段を取ったのは、ハリアーをハリアーらしく作るためであったと見て間違いない。

○ずばり、新型はカッコいいのか!?

サイズアップを図りながらもハリアーらしさは健在の新型。大切なのは、このクルマがカッコいいのかどうかという点だ。

私の実車を見た第一印象は「カッコいい」である。素直に、写真よりもいいなと思った。低くて伸びやかなフォルムは都会的で、試乗した横浜のみなとみらいにもよくマッチしてした。

もちろん、不満がなかったわけではない。最も気になったのはノーズのデザインだ。よく見ると分かるが、低さを演出し、シャープに見せるノーズデザインではあるものの、意外と肉厚なのだ。ボンネットとエンジンの間にゆとりが設けてあるのは、歩行者との事故の際に歩行者を保護するためではあるのだが、そこが見る角度によっては、少し不格好にも映る。従来型のシャープなスタイルが好みの人には、やはり抵抗感があるかもしれない。ただ、全体的として、ボリュームを増したスタイルを巧みなデザインで包み隠している手際は見事だ。

新型ハリアーのインテリアは、らしさを受け継ぎながらも従来型のそれと比べて先進的で、高級感もある。乗り込んで不満を感じる人は少ないはずだ。それは、進化した走りの質感もしかりである。

新型のデザインは総合的に見て、いい出来だと思う。しかし、個人的には、ハリアーらしさとスポーティーなスタイルを評価し、従来型の勝ちとしたい。

最後に新型をフォローしておくと、一般的にクルマは、新しくなればなるほどデザインへの制約が増えていく。そんな中でも、ハリアー特有の価値を守り抜いたのは、ファンの期待に応えようとするトヨタの良心といえるだろう。

大音安弘 おおとやすひろ 1980年生まれ。埼玉県出身。クルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者に。現在はフリーランスの自動車ライターとして、自動車雑誌やWEBを中心に執筆を行う。主な活動媒体に『webCG』『ベストカーWEB』『オートカージャパン』『日経スタイル』『グーマガジン』『モーターファン.jp』など。歴代の愛車は全てMT車という大のMT好き。 この著者の記事一覧はこちら(大音安弘)
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