【レースフォーカス】KTMに歓喜の初優勝をもたらしたビンダー。勝利の鍵はタイヤマネジメント/MotoGP第4戦

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2020年08月10日 23:31  AUTOSPORT web

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ブラッド・ビンダー(レッドブル・KTM・ファクトリーレーシング)
最高峰クラスのルーキー、ブラッド・ビンダー(レッドブル・KTM・ファクトリーレーシング)が、大仕事を成し遂げた。MotoGPクラスに参戦4年目のKTMに、悲願の優勝をもたらしたのだ。その一方で、チームメイトのポル・エスパルガロ(レッドブル・KTM・ファクトリーレーシング)には無念の週末となった。

 チェコGPの予選、ビンダーは6番手から好スタートを切ると、2周目にはファビオ・クアルタラロ(ペトロナス・ヤマハSRT)の後方3番手につけた。第2戦スペインGPではコースアウトによりポジションを落とし、第3戦アンダルシアGPではミゲール・オリベイラ(レッドブルKTMテック3)と交錯して転倒リタイアという結果だったものの、ここまでの2戦、随所で速さを見せてきたビンダー。この第4戦チェコGPでは、フリー走行3回目でぐっとバイクがよくなったのだという。その調子のよさは決勝レースでも発揮された。

 クアルタラロを交わし、ビンダーは序盤にトップを独走していたフランコ・モルビデリ(ペトロナス・ヤマハSRT)を追った。モルビデリに追い付いたとき、ビンダーのタイヤはモルビデリほど消耗していなかった。ラップタイムを比較してみると、ビンダーは14周目まで1分58秒台のタイムをキープ。さらに「人生のなかでもかなりクレイジーな10周」と称した終盤も、1分59秒台のタイムを維持する安定感を見せていた。対するモルビデリは11周目以降からタイムを落とし始め、13周目でビンダーにトップを譲り渡した。

「少しずつタイヤが厳しくなってきたから、リヤタイヤをできるだけセーブするように努めたよ。スロットル操作も、すごく、すごく穏やかに行ったんだ」

 こうしたタイヤマネジメントが、ビンダーを勝利に導いた要因の一つだろう。そして、ついにKTMに最高峰クラスの初優勝をプレゼントしたのだ。

 ビンダー自身にとっても、記録的な優勝だった。最高峰クラスでの自身初優勝。さらにルーキーとしての優勝は、2013年シーズンのマルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)以来のことで、南アフリカ人としても、最高峰クラスで初の優勝ライダーとなったのだ。

 KTMとしても2020年シーズン、テストから躍進を感じさせるものがあったのは確かだ。2月上旬のセパン公式テストで登場したKTMのMotoGPマシン、2020年型RC16は、空力デバイスはもちろんのこと、今季からフレーム形状を変更。スチールパイプのトレリスフレームから、現在の主流であるツインスパーフレームとまではいかないまでも、やや平らなフレーム形状へと変化した。

 ビンダーは2019年シーズン後のバレンシア公式テストでRC16を初めて走らせたとき、「やることがいくつかある」と思ったと、決勝後のプレスカンファレンスで答えている。しかしセパン公式テストで乗ったバイクは「違う世界のようだった。ナチュラルになっていた。以前のバイクよりもずっと、乗りやすかった」と言う。「きっとチームはオフシーズン中に、信じられないくらい作業をしてきたんだ」

 実力を示したビンダー。そして、悲願の優勝を手にしたKTM。続けてさらなる躍進を見せたいところだ。

■転倒リタイアの結果に不満のエスパルガロ
 一方、対照的な週末となったのがチームメイトのポル・エスパルガロだった。予選では、2番手タイムをマークしたものの、他ライダーの転倒によりイエローフラッグ提示区間があったためにタイムがキャンセルされ、6番手となった。

「午後にはバイクの感触はすごくよくて、最初のアタックで履いたタイヤでも速かったし、2度目のアタックに履いたタイヤではもう少し速く走れると思ったから攻めていたんだ。イエローフラッグまではすべてが順調だった」

 決勝レースでは序盤にポジションを落としたものの、6周目には4番手に浮上。ところが、10周目の1コーナーでそれは起きた。ブレーキングでややワイドにはらんだエスパルガロ。インにポジションをとるヨハン・ザルコ(エスポンソラーマ・レーシング)。エスパルガロがイン側にラインを寄せていったとき、イン側にいたザルコとアウト側のエスパルガロが接触。エスパルガロはスリップダウンを喫してリタイア、ザルコはそのままレースを続行した。

 この接触により、ザルコはロングラップ・ペナルティを科されている。しかし定められたペナルティのコースを走り抜けたザルコは、ポジションを落とすことなくレースに復帰。3位表彰台を獲得した。

「僕が前を走っていて、ザルコは避けられたのにそうしなかった。ザルコは僕をラインから外したんだ」と語るエスパルガロ。

 一方のザルコは「ペナルティは公平だったと思う。彼(エスパルガロ)がワイドにはらんで、僕はインに入った。スペースがあったからね。うまく入ったと思っているよ。でも、僕たちは接触した。どうやらポルは僕を見ていなかったみたいだ」と、転倒について言及した。

 エスパルガロはレース後の取材のなかで、転倒について口早に説明してから「今は、熱くなっているから転倒についてあまり話したくない。話さないほうがいい」と付け加えた。KTMが最高峰クラスに参戦した2017年シーズンからチームに加わり、戦い続け、マシンをつくってきたエスパルガロ。2018年シーズンのバレンシアGPでは、KTMで初表彰台となる3位を獲得した。ビンダーが成し遂げた優勝という結果は、喉から手が出るほどほしかったはずだ。

「バイクについてはすごく満足している。優勝できるポテンシャルを持つバイクがあるということがうれしい。でも、僕はすごくイライラしている。次のレースも同じようになるかわからないんだから。もしかしたら1年に1度のチャンスだったかもしれなくて、僕が優勝したかったのにできなかった。大きなチャンスを失ってしまったように感じている」

 ただ、エスパルガロも転倒までにポテンシャルを見せていたことは確かだ。予選でも不運なタイムキャンセルはあったが、2番手に相当するタイムをマークしてもいた。エスパルガロ自身が語るように、次戦も同じようにことが進むかはわからない。それでも、KTMのライダーはふたりともに、今季の注目を集めていることに変わりはないのだ。

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  • 荒れた路面にしなるフレームが上手く機能したのかな?
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