宮藤官九郎脚本『JOKE』は粋なホラー作品? 生田斗真の一人芝居とは思えない臨場感

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2020年08月11日 07:01  リアルサウンド

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写真『JOKE〜2022パニック配信!』(写真提供=NHK)
『JOKE〜2022パニック配信!』(写真提供=NHK)

 ITの進化、AIの導入に加え、新型コロナウイルスの存在が、テクノロジーを浸透させることに拍車をかけた。今や大企業も続々とテレワークに切り替える中、PCのモニターが仕事相手になっている人も多いだろう。そんな中、NHKでは「配信」や「AI」をキーワードにしたスペシャルドラマ『JOKE〜2022パニック配信!』が放送された。脚本を務めたのは、NHK連続テレビ小説『あまちゃん』、NHK大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』(以下、『いだてん』)で脚本を担当した宮藤官九郎。そして主演を、宮藤とは、映画『土竜の唄 潜入捜査官REIJI』(2014年)、『うぬぼれ刑事』(TBS系)、『いだてん』などでもタッグを組んできた生田斗真が務めた。生田演じるお笑い芸人の沢井竜一が、驚くような展開で事件に巻き込まれていく様子を描く。


【写真】『JOKE〜2022パニック配信!』主演の生田斗真


 昨今のコロナ禍でイレギュラーな対応を強いられたのはテレビの世界も同じであり、“リモート”を武器にしたCMやドラマが数多く製作された。ポカリスエットの合唱のCMは、こんな時期でもアイデアで勝負し新作を創り上げたことでSNSでも話題となり、秋元康が企画・原案を務めた『リモートで殺される』(日本テレビ系)や脚本家の坂元裕二作の『リモートドラマ Living』(NHK総合)なども注目を集めた。そんな数あるリモートドラマ中で、本作は引けを取らない作品となっただろう。


 漫才コンビ「俺んち」のボケを担当する沢井は、タレントエッセイで大成するも、「パクリ」と言われ炎上騒ぎを起こす。相方ばかりがテレビで活躍し、本人はというと、動画配信サイトで「俺んちチャンネル」を運営する日々。沢井の部屋の全てはAIで管理されており、「マイルス」というスマートスピーカーに全てを任せていた。さらに「俺んちチャンネル」の配信では、相方の代わりに漫才に特化したAIロボット「JOKE」を使用し、沢井、「俺んちチャンネル」の視聴者、JOKEの三つ巴で配信を成立させていた。しかし、事件は突然起きる。配信の最中に沢井の嫁と娘が誘拐され、不審な電話が何度も沢井の元にかかってくるように。さらに、頼んでいないはずの宅配サービスが家の前で列を成していた。物語はこれらの“迷惑行為”の犯人を突き止めるというのが序盤の流れであったが……。


 だが、それだけにはとどまらないのが宮藤官九郎脚本だ。ラストで、一度は不仲になった沢井と相方の坂根明(柄本時生)のコンビ愛を描き、ドラマ内の配信視聴者も、お茶の間の視聴者も感動の嵐に巻き込む……と思いきや、真のラストはAI「マイルス」の仕組んだ衝撃の展開で、「あっ!」と声を上げたくなるようなクライマックスが仕込まれていた。人情話だけでなく、スリルやサスペンス要素が詰まった作風も魅力だろう。まさに官九郎節のなせる技であった。


 さらに本作は、ほとんどのシーンが主演の生田斗真の一人芝居で展開された。お笑い芸人という役のため、体を張って大振りのギャグを見せたり、配信先に向かってツッコミをするようなシーンも器用にこなし、とても一人芝居とは思えない臨場感を見せた。我々視聴者にとってはドラマ内の配信中のコメントが表示されるため自然に見える芝居も、現場で芝居をする生田にとっては一人でテンションを上げて、一人で会話を作り上げていることが推測される。あれだけ自然な「配信者」の姿を演じきれる力があってこそ、本作はより輝きを増す。


 ステイホームが叫ばれる中、SNSアカウントの乗っ取りやイタズラ宅配など、このような事件が実際に家で起きたらどうしようとヒヤリとさせられる演出も多かった『JOKE〜2022パニック配信!』。気温が上がりうだる暑さの中、粋なホラー作品によって肝を冷やされた。


(Nana Numoto)


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