気象予測データをDXに生かせ KPMGと日本気象協会が展開する協業サービスとは

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2020年08月11日 13:02  ITmediaエンタープライズ

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 KPMGコンサルティング(以下、KPMG)と一般財団法人 日本気象協会(以下、日本気象協会)は2020年8月5日、温室効果ガスの排出抑制と気候変動リスクの軽減に向け、高度な気象予測分析に基づく総合コンサルティングサービスの提供で協業すると発表した。



協業サービスは業種横断で幅広く展開(出典:KPMGコンサルティングと日本気象協会の資料)



 KPMG本社で行われた発表会見には、同社の宮原正弘社長と日本気象協会の辻本浩史氏(常務理事)が登壇。今回の協業について説明した。



 KPMGはこれまで、ビジネス変革の支援やテクノロジートランスフォーメーション、BCP(事業継続計画)を含むリスクコンサルティングの経験を積み重ね、多くの日本企業の海外展開における支援も実施してきた。一方、日本気象協会は、70年間培われたビッグデータの解析技術を持ち、国内外の高精度な気象予測を実施。それを基に商品需要予測事業の展開や環境影響評価などのコンサルティングを実施してきた。



 今回の協業で、両社は気候変動に対する「緩和」と、リスクの軽減を目指す「適応」に向けて、それぞれの領域で培ったノウハウを活用する。ビジネスモデルの変革やリスク管理態勢の高度化などをはじめ、幅広いコンサルティングサービスを提供し、企業に対する実効性のある支援を実施する構えだ。(図1)



 協業の背景について、宮原氏は「日本ではこのところ、大型台風や局地的大雨などの異常気象に起因する災害が増加し、気象が社会や経済に与える影響は高まりつつある。ビジネスにおいても、インフラや重要資産の毀損(きそん)、活動の長期停滞などの実害が多数発生しており、企業はBCPの策定をはじめ、将来のリスクを見越したより実効性のある対応が求められている」と説明。さらに、「世界的にも、より効果的な気候変動への対応を実施し、サステナブルなビジネスを行っていくことが求められている」と、グローバルを見据えた動きであることも示唆した。



 その上で、今回の協業について、宮原氏が「お互いの強みを生かしながら、より深く広範囲にわたって、イノベーティブなサービスを一緒になって提供していく」と力を込めれば、辻本氏も「このサービス展開においてこれ以上の“良縁”はないと確信している」と応じ、結束ぶりを示して見せた。



●3つのメニューからなる協業サービスを業界横断で展開



 KPMGと日本気象協会が提供する協業サービスの具体的な内容は、大きく分けて次の3つのメニューからなる。



 1つ目は、「需給予測とオペレーションの最適化支援」である。



 日本気象協会が多数の実績を持つ高精度な気象予測を踏まえた商品需要予測に、KPMGの経験豊富なコンサルティング力を生かす。主に製造業や製造小売業、小売業、外食業における仕入れや販売、マーケティング計画の最適化、生産計画やサプライチェーンの最適化、ダイナミックプライシングの実施など、オペレーションの最適化を支援する。



 2つ目は、「金融商品とサービスの開発支援」である。



 高精度かつ網羅性、継続性、一貫性のある気象、気候予測データと、金融データなどの連携を図る。ESG(Environment, society, governance:環境、社会、ガバナンス)投資なども考慮し、新たな気候変動の緩和や適応に向けた金融商品の開発の他、投資、運用業務の最適化を支援する。



 また、気象に関連した災害や事故を想定した顧客向けの情報提供サービスや保険商品の拡充、保険損害サービスなどのリソース配置最適化など、金融、保険業への気象予測と気候変動分析のビジネス活用の支援を行う。



 3つ目は、「早期アラート情報に基づく有事対応とBCPの高度化支援」である。



 早期かつ高精度な気象災害予測を基に、企業における有事の対応を含めたBCPの実効性強化を支援する。気象庁による公開情報に先んじて特定事業者向けに洪水などの気象災害の予測を図ることで、早期に災害発生を検知した場合の行動計画を整備し、有事の際に早い段階で被害軽減や回避行動を取ることが可能となる。



 こうした協業サービスについて、宮原氏は図2を示しながら、次のように展開への決意を示した。



 「気候変動に対する緩和策や適応策が必要な業界は多岐にわたる。協業サービスはあらゆる業界横断で拡充を図り、グローバルへの展開も予定している。さらに、気候変動に関する情報を両社によるさまざまな活動を通して積極的に発信し、企業のみならず個人や社会全体に対して環境意識向上に向けた啓発を行い、将来の温暖化の緩和に寄与することを目指したい」



 最後に、この会見で見た興味深い図を取り上げておこう。日本気象協会 商品需要予測プロジェクトマネージャーの本間基寛氏が、協業サービスメニューの1つ目の説明で挙げた「小売業における需要予測のあるべき姿」(図3)だ。この図は、小売業の需要予測に必要なデータとその活用法の全てをエキスパートがピックアップしたものである。協業サービスもこのあるべき姿を目指すということだ。



 この小売業のケースを見ても、気象予測データがそれぞれの分野のデジタルトランスフォーメーションを加速させる重要な要素であることがうかがえるだろう。本間氏によると、「全産業を対象とした企業のうち、気象予測データを活用しているところはまだ5%程度と認識している」とのこと。多くの企業にとって、気象予測データの活用は新たなビジネスチャンスになるのではないか。


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