吉田茂のメルセデスを発見! オートモビルカウンシル2020写真特集

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2020年08月13日 11:31  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
今回も世界のヘリテージカーがずらりと並んだ「オートモビルカウンシル2020」(AUTOMOBILE COUNCIL 2020、会場:千葉県の幕張メッセ、会期:7/31〜8/2)。20世紀に誕生し、時代を駆け抜けてきた名車の中から、選りすぐりの28台を写真で振り返ってみたい。注目はヤナセが展示していたメルセデス・ベンツ「300 SEラング」というクルマ。もともとの持ち主は、なんとあの吉田茂だ。

○苦難を乗り越えて果たされた日独首脳の約束

ヤナセクラシックカーブースに展示されていたのは、1961年に当時のメルセデス・ベンツの最高峰モデルとして登場した「300 SEラング」。昭和の名宰相・吉田茂の愛車としても知られているが、なんとこの車両、吉田茂本人に納車された日本第1号車なのだという。

このクルマがどういう経緯で吉田茂のもとに渡ったのかが気になるところだが、その答えは掲示されていた資料で確認することができた。

それによると、吉田茂は首相在任中に西ドイツを訪問した際、西ドイツ首相(当時)のアデナウアーとの間でメルセデス・ベンツの購入を約束したという。しかし、当時は現在と違って輸入制限がかけられていた時代。首相といえども購入は難しく、なかなか約束を果たせずにいた。

1961年になって一般用自動車の入札制度が始まったものの、元首相の立場から購入を躊躇していた吉田茂。そんな話を耳にした当時のヤナセ社長・梁瀬二郎が方々に尽力した結果、この日本第1号車が吉田の手に渡ることになったそうだ。

ヤナセでは1963年9月に入荷した「300 SEラング」を大急ぎで整備し、型式認定取得を経て、吉田の誕生日である9月22日に納車を間に合わせた。吉田茂はその日のうちに、「われ約束を果たせり。新しいベンツに本日から乗っている」とアデナウアーに打電。アデナウアーからは「お約束をお守りいただいたことを心から感謝する」との返事がすぐに届いたそうだ。

「300 SEラング」は現オーナーの依頼により、エアサスペンションや燃料系の整備を受けている最中であるとのこと。内外装のレストアも進められているそうなので、当時の輝きを取り戻す日もそう遠くないはずだ。日独首脳の友好の架け橋となった名車には、いつまでも現役で走り続けてもらいたいものである。

安藤康之 あんどうやすゆき フリーライター/フォトグラファー。編集プロダクション、出版社勤務を経て2018年よりフリーでの活動を開始。クルマやバイク、競馬やグルメなどジャンルを問わず活動中。twitter:@andYSYK。 この著者の記事一覧はこちら(安藤康之)
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