脳梗塞で緊急搬送の患者 原因の「いびき」を治療する理由とは?

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2020年08月13日 17:00  AERA dot.

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写真※写真はイメージです(写真/Getty Images)
※写真はイメージです(写真/Getty Images)
 いびきは多くの人に見られる症状だが、医者にかかるほど気にする人は少ない。しかし、いびきをかいているということは、眠っている間に何度も呼吸が止まる病気「睡眠時無呼吸症」の疑いがある。睡眠時無呼吸症になると、高血圧症から心筋梗塞や脳梗塞などの命に関わる病気を引き起こすことがある。今回は脳梗塞になった患者の治療にあたった、日本大学松戸歯学部付属病院「いびき外来」の鈴木浩司歯科医師に話を聞いた。

【写真】鈴木浩司歯科医師

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 千葉県の高岡隆さん(仮名・62歳)は、脳梗塞を起こして県内の救急病院に運ばれた。一命をとりとめたものの、血圧は依然として高いままだった。治療をおこなうなかで睡眠検査を実施したところ睡眠時無呼吸症と診断されたため、日本大学松戸歯学部付属病院のいびき外来を紹介されて、鈴木歯科医師のもとを訪れた。鈴木歯科医師はこう説明する。

「いびきは一般的に、舌が喉の奥に沈下し、気道が狭まることで起こります。さらに舌根(ぜっこん)部が沈むと気道は完全に塞がり、呼吸停止に陥ります。この呼吸停止が寝ている間に何度も発生するのが、睡眠時無呼吸症です」

 睡眠時無呼吸症は日中に強い眠気を引き起こすことで知られているが、ほかにもさまざまなリスクを抱えているのだという。

「眠っている間に呼吸が止まると、心臓がからだに酸素を送るために激しく動き続けます。すると、心拍数が跳ね上がり血圧も急激に上昇するので、心臓や血管に大きな負担がかかります。それが毎日眠っている間に起きているわけですから、高岡さんのように高血圧症から脳梗塞や心筋梗塞などの循環器の病を引き起こす可能性は非常に高くなります」

 睡眠時無呼吸症の診断をする際には、睡眠1時間あたりの無呼吸および呼吸低下の回数(AHI)が指標になる。AHIが5以上15未満だと軽症、15以上30未満が中等症、30以上だと重症となる。高岡さんのAHIは18で、睡眠時無呼吸症の中等症だった。

 睡眠時無呼吸症の治療を保険適用内でおこなう場合、治療法はAHIによって決められる。AHIが20以上の場合は、CPAP(シーパップ)と呼ばれる呼吸装置が第一選択になる。CPAPの仕組みは、鼻マスクを通じて空気を送ることで、閉塞した気道の粘膜を開いて呼吸ができるようにするというもの。

 CPAPは睡眠時無呼吸症の治療法として、最も普及していて効果も高い。しかし、AHIが20以上でなければ保険適用にはならない。

 高岡さんのようにAHIが20未満の場合は、マウスピースによる治療が効果的だという。睡眠時無呼吸症治療に使用する専用のマウスピースは、歯ぎしり防止のマウスピースとは違い、下の顎(あご)が前に出る形で装着する。下顎を前に出すことで舌の根っこが引き上げられ、呼吸がしやすくなる。

 高岡さんにも専用のマウスピースを作製し、使い始めてもらった。その結果、高岡さんのAHIは5.4にまで改善し、血圧は徐々に安定に向かっていった。高岡さんは脳梗塞の再発はなく、今は元気に暮らしているという。

 とはいえ、高岡さんが生死の境をさまよったことには変わりない。この例に学んで、睡眠時無呼吸症の予防や、早期の発見・治療に努めたい。いびきや眠気など、睡眠時無呼吸症の兆候が見られたときにかかるべき診療科について、鈴木歯科医師は次のように語る。

「睡眠時無呼吸症の疑いがある場合は、まず内科や耳鼻咽喉科で診断を受けてください。その後、マウスピースが必要になれば、歯科で作製することになります。当院のように医科と歯科が連携している病院であれば、これらは1日で済ませることができます」

 現状では、睡眠時無呼吸症の診断やマウスピースを作った後の効果判定は医科でおこなう決まりになっている。そのため、いびきがひどいからと歯科に駆け込んでも、医科での診断を促されるか、自費でマウスピースを作るしかない。睡眠時無呼吸症の疑いがある場合は、専用の医科外来を受診すると手間が省けるだろう。

 日本大学松戸歯学部付属病院では、睡眠時無呼吸症の診療をおこなう外来を「いびき外来」と名付けている。この理由を鈴木歯科医師に聞いた。

「いびきには必ず原因があります。その原因を取り除いてあげれば、睡眠時無呼吸症の予防にもつながる。いびき自体を深刻に捉える人はいまだに多くありません。だから、警鐘を鳴らす意味でもあえていびきを強調しています」

(文/中川雄大)

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