第53回 ドラマ『BG〜身辺警護人〜』第2シーズンが予想以上に面白かった理由

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2020年08月14日 02:20  ソーシャルトレンドニュース

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"第53回 ドラマ『BG〜身辺警護人〜』第2シーズンが予想以上に面白かった理由"

続編モノの傑作がある。

有名どころでは、ドラマ『3年B組金八先生』(TBS系)シリーズだろう。たのきんトリオ(田原俊彦・近藤真彦・野村義男)や三原順子(現・じゅん子)らを輩出した第1シリーズも傑作だったが、今も語り継がれるのは、圧倒的に「腐ったミカン」の加藤(直江喜一)でお馴染みの第2シリーズのほうだ。最終回の1つ前、中島みゆきの『世情』が流れる中、加藤や松浦(沖田浩之)らがスローモーションで警察に連行されるシーンは、同シリーズ屈指の名場面と言われる。名手・生野慈朗サンの神演出だ。

ドラマ『救命病棟24時』(フジテレビ系)シリーズも、福田靖サンがメインライターに昇格した第2シリーズが最高傑作と呼ばれる。第1シリーズがともすれば米ドラマ『ER緊急救命室』のトレース(焼き直し)のように見られたのに対し、第2シリーズは新設された救命センターを舞台に、いわゆるチームものの群像劇として描かれ、同シリーズならではの世界観を作り上げた。最終回で医局長・小田切(渡辺いっけい)が帰らぬ人となるシーンはお茶の間の涙を誘い、シリーズ最高視聴率25.4%を記録した。

映画でも、続編が傑作と位置付けられるケースは珍しくない。ヴィトー・コルレオーネの若き日の姿を名優ロバート・デニーロが演じた『ゴッドファーザー PART II』は、前作に続いてオスカーの作品賞に輝いた。名匠ジェームズ・キャメロンが監督した『エイリアン2』は前作から作風を一変、イギリス雑誌エンパイアで「史上最高の続編映画」に選ばれた。かの『スター・ウォーズ』シリーズも、2作目の「帝国の逆襲」を最高傑作に挙げる声は多い。

そう、何が言いたいのかというと――今回、このコラムで取り上げる作品もまた、前作を凌駕する傑作ではなかったか、という話。先に最終回を迎えた木村拓哉主演のドラマ『BG〜身辺警護人〜』(テレビ朝日系)の第2シーズンのことである。

不幸な軌跡を辿った第2シーズン

――とは言え、この第2シーズン、放送まで極めて不幸な軌跡を辿ったのは、皆さん、ご承知の通り。当初、4月クールの連ドラとして予定されていたものの、同じクールの他のドラマと同様、新型コロナウイルスの影響で撮影が延期となり、2ヶ月遅れの6月中旬のスタートに。いや、それだけじゃない。なんと全7話に短縮されたのだ。いまだコロナが収束していない状況では、当初予定されていた内容の撮影が不可能となり、前シーズンも担当した井上由美子サンは、脚本を大幅に書き替えたという。具体的には、同ドラマの最大の見せ場になる予定だった、東京オリンピック・パラリンピック絡みの話が全て削除されたと聞く。

加えて、そもそも人気俳優はスケジュールに限りがある。ドラマのスタートが2ヶ月遅れたからと言って、最終回も2ヶ月遅らせるワケにはいかないのだ。稀代の名優・木村拓哉を抱える作品ゆえのジレンマである。

しかし――そんな不幸続きの一方で、この第2シーズン、第1シーズンよりもすっきりとして見やすく、そして面白かったという声をよく耳にした。実際、平均視聴率は前シーズンが15.2%だったのに対し、今シーズンは15.6%と上昇している。

一体、『BG』の第2シーズンとは、どういうドラマだったのか。終了した今だからこそ、作品全体を俯瞰して見えることがある。今回のコラムは、その辺りを掘り下げたいと思います。

“バディもの”への転換

まず、前シーズンと今シーズンの最大の違い、それは「チームもの」(群像劇)から「バディもの」(コンビ劇)に変更されたんですね。第1シーズンの主人公・島崎章(木村拓哉)は、日ノ出警備保障の身辺警護課の一員だったのに対し、今シーズンは組織から独立して私設ボディーガードとなり、高梨雅也(斎藤工)とバディを組んでいる。

そう、この“バディ”がポイントなんです。


チームものは、一般に刑事ドラマや医療ドラマでよく見かける王道パターンだ。個性豊かな仲間たちのパーソナリティや、痛快なチームワークを描けるので、かの『週刊少年ジャンプ』の三大原則“友情・努力・勝利”じゃないけど、お茶の間の共感を得やすい。

対して、バディものは、2人の会話劇が中心になる。ゆえにユーモアのあるやり取りを描きやすい。2人の関係性も、一見クールを装いつつも、根っこで信頼し合うといった、やや大人の関係になる。つまり、チームものより若干アダルトに、そしてコメディに振ったのが、バディものの特徴である。

『ルパン三世』はバディもの

分かりやすく言えば、かの『ルパン三世』がそうだ。あれ、一見チームものと思われがちだけど、基本構造はルパンと次元のバディものなんですね。2人の関係はクールで大人、時々コミカル。実際、テレビ版の第1シリーズでは、五ェ門や不二子が登場しない回も普通にあった。なので、高畑勲サンと共に第1シリーズを演出した宮崎駿サンが、日本テレビから第2シリーズの演出をオファーされた際、「五エ門が出演しない回を作ってもいいか?」と返事をしたのは有名な話。結局、銭形を加えたレギュラー5人の登場は毎回マストだと言われ、要請を断ったそう(後に2回だけ演出)。

ちなみに、宮崎駿監督の映画『ルパン三世 カリオストロの城』は、見事にルパンと次元の大人のバディ作品に仕上がっている。ヒロインはクラリスで、ヒール役はカリオストロ伯爵。五ェ門や不二子の存在感は薄い。

テレ朝シリーズドラマへのリスペクト

それにしても、第2シーズンが作られるに至って、何ゆえチームものからバディものに設定が変えられたのか? 普通に考えると、チームもののほうが物語にバリエーションが生まれ、話を作りやすい気がする。

そもそも、これまで木村拓哉という役者は、連ドラの続編はやらないスタンスだった。例外として、映画も作られた『HERO』(フジテレビ系)があるくらい。何しろ、稀代の名優である。1つの役柄に安住せず、常に新作との“一期一会”を大切にするのが、彼の身上。それなのに――ここへ来て、この変化。一体、俳優・木村拓哉の身に何が起きたのか。

それについては、今年3月に、同ドラマの制作発表の場でキムタク自身が行った挨拶に、何かしらのヒントがありそうだ。こんな内容だった。

「テレビ朝日さんにはシリーズ化されているドラマがたくさんありますが、その継続スタンスや努力、チームワーク、残されてきた結果と比べると、『BG』はまだまだ赤子のようなもの。しっかりとした内容や世界観を作って、継続する意味を持たせないと、ほかのシリーズ作品に失礼だと思うんです。現場でもキャスト、スタッフ一丸となって取り組み、『BG』の新しいストーリーと新しい形態をしっかりと紡いでいきたい」

――いかがだろう。キムタクさん、シリーズ化へ気合十分である(笑)。そう、彼が指摘している通り、テレビ朝日という局は、昔からシリーズドラマが多い。近年でも、『相棒』を始め、『科捜研の女』、『ドクターX』、『特捜9』、『警視庁・捜査一課長』、『刑事7人』、『遺留捜査』等々と、枚挙に暇がない。

目標はキング・オブ・バディの『相棒』?

この挨拶から読み取れることがある。それは、キムタクが同局のシリーズドラマに、ことさら敬意を表していること。タイトルこそ挙げていないが、恐らくこの時、彼の脳裏にあったのは――『相棒』だろう。そう、21世紀を代表するキング・オブ・バディ。キムタクは、テレ朝から『BG』の続編を打診された際、引き受けるに当たって、同局のシリーズドラマのトップに君臨する『相棒』を目標に据えたのではないか。ゆえに、同じ土俵のバディものに転じたと――。

それに、チームものなら、既に自身が主演した『HERO』(フジテレビ系)という実績がある。映画化もされ、第2シリーズも作り、素晴らしい結果を残した。何せ、チャレンジ好きのキムタクである。次にシリーズものをやるなら、チームものじゃない路線を狙いにいったのは、容易に想像できる。

役者・木村拓哉の心境の変化

ここから先は想像の世界になる。ではなぜ、これまで作品の続編を固辞してきたキムタクが、ここへ来てシリーズドラマを解禁したのか。思うに、昨年7月にジャニー喜多川さんが亡くなられたことが、彼の役者としての人生観に大きな変化をもたらしたのではないだろうか。

これはジャニーズ事務所に限らず、日本の芸能プロダクションの共通の悩みだが、偉大な創業者(カリスマ)が亡くなると、どうしても人間関係が資本のプロダクションの体力は弱体化する。実力あるタレントたちは独立を画策し、有能なマネージャーも彼らを引き連れ、暖簾分けを求める。ジャニーズ事務所も例外ではないだろう。

一方、事務所に残る方は残る方で、こちらは組織の立て直しに必死にならざるを得ない。キムタクの場合、皆さんご承知の通り、元SMAPで唯一、事務所残留の道を選んだ。もはや、これまでのように事務所に守られる立場ではなく、逆に、将来の幹部候補として事務所を守る側の立場になった。

そうなると、毎年コンスタントに作られるシリーズドラマは、俳優・木村拓哉としてはもちろん、ジャニーズ事務所を守る立場としても魅力的な仕事になる。こう言っては何だが、バーターで事務所の若手を出演させることもできる(※その是非は別の話)。それに一昔前と違い、今は視聴者がNetflixやAmazonプライムビデオで海外のドラマを見る機会が増え、あちらはシリーズドラマが標準仕様なので、もはや日本特有の「シリーズドラマ=守りに入ったおっさんドラマ」みたいな古い価値観は、昔の話になりつつある。

『踊る大捜査線』が確立したヒットの定石

そんな次第で、俳優・木村拓哉がシリーズドラマに舵を切ったと推察するが、続編制作にあたり、バディものに変更したのは正解だったと思う。

というのも、チームワークを描いた第1シーズンもそれなりに面白かったけど、どこか違和感があったのも事実。思うに、それは、クライアントが大物すぎたことではなかったか。例えば、大臣を務める女性政治家だったり、元有名プロサッカー選手だったり、元総理だったり――。

これは、かの『踊る大捜査線』(フジテレビ系)が確立したヒットドラマの定石だけど――「主人公は小さな事件を扱うべき」というものがある。

例えば、『踊る〜』でよくある展開が、湾岸署の管轄内で大事件が起きるも、“本店”こと警視庁捜査一課が大挙して乗り込んで捜査を行い、“所轄”は弁当や布団の手配などの雑用に回されるというもの。その時、管轄内で小さな事件が起こり、青島(織田裕二)や和久さん(いかりや長介)は、そちらの現場に出掛ける。だが、捜査を進めるうちに、次第に大事件と小さな事件がクロスして、やがて小さな事件のほうに、大事件を解く鍵が隠されていたのが発覚する――という鉄板のパターンだ。

そう、この定石に従うと、島崎(木村拓哉)ら民間のボディーガードは、もっと庶民的な民間人を警護しないといけない。多分、その辺のコンセプトの弱さ、曖昧さが、漠然と前シーズンの違和感になったのではないか。

コンセプトの再構築へ

そこで――第2シーズンを始めるにあたり、今後、長期的なシリーズドラマに育てるためにも、作品のコンセプトが再構築されたと推察する。そう、第2シーズンのキラー・ワード「弱き者の盾になる」がここで登場する。従来の要人警護から、もっと庶民の味方へ。ただ、そのためには大手の警備会社では都合が悪い。できれば、古い雑居ビルに小さな事務所を構えるような私設ボディーガードのほうがいい。

そこで――島崎には会社を辞めてもらい、個人で事務所を開いてもらう。とはいえ、一匹狼だと台詞が生まれにくいので、“相棒”役を設定する。幸い、近年の海外ドラマを見ると、イギリスの『SHERLOCK(シャーロック)』や、アメリカの『SUITS/スーツ』など、バディものが“来ている”。

好都合なことに、ボディーガードの仕事も、リーダー役の「BG(ボディーガード)」と、「バックス」と呼ばれる後方支援の2人体制が基本である(街中で見かける現金輸送のガードマンも2人体制でしょ?)。何より、第1シーズンで流行らそうとして今ひとつ浸透しなかった、仕事に入る前にボディーガード同士が腕時計を見せ合い、「誤差なし!」と唱える動作も、チームでやるより2人でやる方が画面映えしそうだ。

かくして――木村拓哉演ずる島崎は、いい感じの古い雑居ビルに、私設ボディーガードの小さなオフィスを構え、斎藤工演ずる高梨とバディを組み、庶民的なクライアントの依頼を受け、“弱き者の盾になる”――そんな鉄板のコンセプトが出来上がったのである。

名人・井上由美子が仕掛けた神プロット

ドラマ『BG』の脚本を前シーズンから全話手掛けるのは、井上由美子サンである。彼女が素晴らしいのは、第2シーズンを始めるにあたり、この鉄板コンセプトをベースに、更に新しいドラマの要素を付加したのである。

それは、「ミステリー」と「人間ドラマ」だった。例えば、島崎は体を張ってクライアントの身体警護(=弱き者の盾になる)に当たるが、彼には密かに思うところがあり、ドラマの終盤、それ(=クライアントが本当に守りたかったもの)が明らかになる。いわゆるミステリー的展開である。そして、その“解”を得て、クライアントは人生を取り戻し、今度はボディーガードに守られることなく、自らの足で新しい第一歩を踏み出す――。

そう、ここに至り、アクション、ミステリー、人間ドラマの要素が三位一体となった、第2シーズンの神プロットが完成する。そして、その中から最高傑作・第2話が生まれたのである。

救われた2話

僕は、かねがね「優れた連ドラはニコハチ」の法則を唱えている。2話と5話と8話が面白いドラマは、概ね良作という意味合いだ。1話はドラマの世界観と人物紹介に費やされるので、最初の通常運転の2話、話が一旦収束に向かう(恋愛ドラマなら主人公とヒロインが一旦結ばれる)5話、主人公の内面が明らかになり、最終回へ向けてもうひと山が始まる8話――である。

その法則に当てはめると、『BG』の第2シーズンは残念ながら、全7話と打数不足は否めない。実のところ、撮影が休止される前に撮られていたのは2話まで。3話以降は脚本が書き替えられ、撮影の制約も多かったと聞く。正当な判断をするのは難しい。

とはいえ――ラッキーなことに、同ドラマは肝心の2話が抜群に面白いのだ。救われたというか、コロナが本格化する前に、2話まで撮らせてくれた連ドラの神様に、改めて感謝したいところである。

島崎が本当に守ろうとしたもの

2話のストーリー自体はシンプルだ。盲目の天才ピアニスト・恵麻(川栄李奈)の身辺警護の依頼が、島崎のもとに寄せられる。仕事を持ち込んだのは、島崎の前の職場「KICKSガード」の元同僚・沢口(間宮祥太朗)である。当初は、同社の沢口とまゆ(菜々緒)が警護を請け負ったが、社の規定で契約が打ち切られたらしい。


その理由とは、クライアントの自殺願望――。つまり、大手の警備会社では扱えない危険案件という。だが、“弱き者の盾になる”島崎は、その仕事を受ける。そして、高梨と共に恵麻の警護に就くが――彼女はなかなか2人に心を開かない。そんな矢先、恵麻が何者かに命を狙われ、体を張ってクライアントを守る島崎。この時、背中で階段を滑り落ちるキムタクが実にいい。同回屈指の見せ場である。

物語の終盤、島崎は恵麻が心を閉ざす理由が、彼女のマネージメントを務める姉の美和(谷村美月)にあると見抜き、“恵麻を誘拐する”奇策に打って出る。島崎の狙いは? そして、彼が本当に守ろうとしたものとは――?

もし、『BG』の第2シーズンを未見の方がいたら、とりあえず、この2話だけでも見るのをお勧めします。キムタクの華麗なアクション、謎が渦巻くミステリー的展開、そしてクライアントが新たな一歩を踏み出す感動の人間ドラマ――これらが三位一体となった神プロットを楽しめます。

劉社長のパートは必要だったのか

ここからは、同ドラマの主要な登場人物たちについて、解説したいと思う。

まず、今シーズンから新たに登場した、仲村トオル演ずるIT社長の劉光明――。彼は野心家で、日ノ出警備保障を買収して「KICKSガード」に社名を変更、更にクライアントを政財界のVIPに限定するという、上昇志向の男である。これでは、島崎と合いそうにない。


案の定、1話で島崎は劉と衝突して、会社に辞表を提出する。そして劉は、シーズンを通して“黒幕感”を匂わせるが、正直、お茶の間はそこまで彼に感心がなかったようにも思う。ぶっちゃけ、劉は島崎が会社を辞めるための“カウンター”として存在し、独立した時点で役割を終えたとも――。

実は、この第2シーズン、脚本の井上由美子サンには申し訳ないが、この劉のパートが蛇足に見えたんですね。彼に雇われた謎の男・加藤(中村織央)が毎回、島崎を襲うんだけど、これもよく分からない。

俗に、この一話完結をベースに、ゆるく連ドラ的なストーリーを乗っける手法を「踊る大捜査線パターン」と呼ぶんだけど、こと『BG』の第2シーズンに関しては、蛇足だったとも。なぜなら、一話完結のフォーマットが素晴らしく、それだけで抜群に面白かったからである。そう、2話に限らず、1話も3話も4話も――。

井上由美子サンに提案。できれば第3シーズンは基本、一話完結に徹してほしい。『刑事コロンボ』や『古畑任三郎』みたいに、毎回、ゲストスターがクライアントとして登場し、じっくりと珠玉の話に練り上げてほしい。

元同僚たちの明暗

続いて、かつての日ノ出警備保障(現・KICKSガード)の同僚3人について。これは明暗が分かれた。

まず、島崎の後を追うように、自身も会社を辞め、島崎警備にやってきた高梨(斎藤工)――。クールで、年上の島崎にも物怖じしないが、その実、慕っているのが見え見えである。2人の会話は互いにツンデレっぽくもあり、端々にユーモアも見られ、程よい距離感が理想のバディに映る。最終回で、事務所にいながら無線でやりとりするなど、お互いシャイなところも面白い。また、昨今のバディものに見られる“ブロマンス”(男同士の恋愛)を匂わせる演出も今っぽい(英ドラマ『SHERLOCK(シャーロック)』がそう)。

思うに、この調子で島崎と高梨がシーズンを重ねれば、日本が誇る最強バディ――『あぶない刑事』(日本テレビ系)のタカ(舘ひろし)&ユージ(柴田恭兵)に肩を並べる日も夢じゃないかも――なんてね。

一方、損な役回りになったのが、KICKSガードに残留した、まゆ(菜々緒)と沢口(間宮祥太朗)である。第2シーズンがバディものになった以上、必然的に彼らの露出と存在感は低下した。ただ、第3シーズン以降も、『踊る大捜査線』の定石に倣えば、島崎警備と対比する大手の警備会社の存在は欠かせないので、今後も出番は続くだろう。2人の扱いについては、もう一アイデアほしいところ。

出るだけでドラマの空気感を変える名女優

そして、忘れちゃいけない、整形外科医の笠松先生(市川実日子)である。正直、終盤の島崎との恋愛展開はどうかと思ったが(笑)、そこまでの“異性の友人”キャラとしての彼女は最高だった。


緊迫したストーリーが続く中に、彼女のパートが入ると、フッと癒される。知的で、ユーモアもあり、サバサバした性格も嫌味にならない。この種の一瞬で空気を変えてしまうキャラクターのことを、映画やドラマでは“ゲームチェンジャー”と呼ぶんですね。その意味では、第3シーズン以降も、彼女には今のポジションのまま、いてほしいところ――。

ちなみに、演じる市川実日子サンって、他のドラマでも同様に、出演するだけで作品の空気感をユルく、知的に変えちゃう不思議な魅力があるんですね。漠然としたイメージだけど、“北欧っぽい”というか――。ドラマ『すいか』(日本テレビ系)を始め、『アンナチュラル』(TBS系)や『凪のお暇』(TBS系)もそうだった。

居場所を見つけた木村拓哉

最後に、主人公・島崎章を演じる名優・木村拓哉である。

前シーズンでは、年齢を感じさせる落ち着いた芝居をしたり、いわゆる“性格俳優”的な演出も見られたけど――個人的には、今ひとつハマっていない(無理している)ようにも見えた。

それが、今シーズンはバディのスタイルを確立したことで、本来の木村拓哉の芝居が戻ってきた気がする。斎藤工演ずる高梨への接し方も、気取らない先輩キャラが端々に見え、まさに王道の木村拓哉。反抗期の息子・瞬(田中奏生)との親子関係もリアルで面白く、全体を通してユーモアを口にする頻度も前シーズンより格段に増えた。

また、時に見せる立ち回りも、キレキレで最高だった。聞けば、このドラマに備え、相当な絞り込みとトレーニングを積んだという。まさに、ストイック・木村拓哉の本領発揮――。

そう、やはりキムタクはカッコよくないといけない。年を重ねたからと言って、性格俳優に転じている場合じゃない。その点、この第2シーズンでは、本来の役者・木村拓哉の素直な進化形が見られたと思う。恐らく、そんなお茶の間の声は本人にも届いているだろうし、彼自身も十分な手応えを感じ、モチベーションになっているだろう。

今度こそ、盤石の体制で撮影に臨む第3シーズンが楽しみである。


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