小林雅英と藤田宗一のリリーフ論。守護神と鉄腕が語る育成のポイント

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2020年08月14日 17:22  webスポルティーバ

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藤田宗一×小林雅英 対談(後編)

 日米通算234セーブを挙げ、絶対的守護神として君臨したロッテ時代に"幕張の防波堤"の異名をとった小林雅英と、実働13年で600試合に登板した"鉄腕"藤田宗一による対談。前編ではロッテ31年ぶりの日本一を達成した2005年シーズンを回顧してもらったが、後編では現代のリリーフ論について熱く語ってもらった。




小林 今シーズンはどのチームもうしろ3枚の固定に苦しんでいる印象がある。とくにセ・リーグは、ほとんどのチームがシーズン序盤でクローザーが交代する非常事態。今の日本人投手だと、山康晃(DeNA)が長くクローザーのポジションにいたけど、今シーズン途中で配置転換された。

藤田 勤続疲労があるとは思うけど、ひと昔前のように同じポジションをずっと任せられるレベルの投手が少ない。

小林 理由は何なんでしょうね?

藤田 コントロールがアバウトな投手が増えた気がする。それに尽きるかな。150キロを超すボールを投げる投手は増えたし、変化球のキレも悪くない。ただ、数字に表われないキレや配球、コントロールに課題があるからピッチングにムラが出てしまう。たとえば、どの球種でもしっかり内、外に出し入れできるピッチャーが本当に少なくなった。ここ3、4年で相対的なレベルが落ちているように感じることもある。

小林 単純にスピードだけを追い求めるなら、そこまで難しくはない。ただ、その球をどんな質で、どのコースに投げられるかという意図を持った投球ができていない。

藤田 コーチをしていて、そう感じることはあった?

小林 ありました。あとは精神面です。今の選手はおとなしいというか、確たる自己を持たないといけないところで、自分の主張を通せない子が多い。ときには、コーチの言うことを聞き流すくらいの姿勢はあってもいいと思うんです。

藤田 見ていて、自信なさそうに投げている投手が多い印象もある。

小林 これはベンチにも責任があると思うのですが、見切りが早く、何試合か失敗するとすぐにポジションを変えてしまう。とくにクローザーというポジションは我慢して使っていかないと育たない。そういう使われ方をされる選手もかわいそうですよね。

藤田 クローザーというのは、簡単に動かしていいポジションじゃない。仮に状態が悪くても、下(二軍)で調整させて復調したらまた同じポジションに戻す。もしセットアッパーとクローザーを代えるなら、しっかりと説明すべきだと思う。なんの説明もないと、選手だって不安になるし、モチベーションも上がらない。

小林 クローザーを任される投手は、絶対にポジションを守るんだという気概を見せてほしい。顔色ひとつ変えず、冷静に投げることも大事かもしれないけど、もっと感情を出して相手を威圧するような資質も必要だと思うんです。そういう意味で、藤嶋健人(中日)なんかは好きなタイプ。

藤田 どのあたりがいい?

小林 投げっぷりがいいし、打者を見下ろすような表情がいい。いい意味で、昭和の匂いがする投手です。

藤田 その一方で、僕らの時代では考えられないようなスピードボールを投げる選手も出てきた。

小林 西武の平良(海馬)はまさにその筆頭で、投げるボールはエグい。ああいうパワーピッチャーが出てくるのがパ・リーグの面白いところで、打者もそのボールに合わせてフルスイングしてくる。そういう真っ向勝負できる環境があるから、平良のような投手も育ってくる。

藤田 左だと、日本ハムの宮西(尚生)は毎シーズン安定していて、本当にすばらしい投手だと思う。ああいう左投手がいると、ベンチは本当にラクだと思う。以前、ある選手が「宮西のボールはベースの外から入ってくるから踏み込めない」と言っていたけど、それは投手にとって生命線だと思う。

小林 宮西はストレートの球速自体はそれほど速くないけど、ベース付近で勢いがあるというか、キレがすごい。

藤田 あとはソフトバンクの嘉弥真(新也)。左のサイドからあれだけ球威のあるボールを投げられると、左打者は打てないでしょう。変化球の曲がりもいいし、自分の現役の時よりも絶対にいいボールを投げている(笑)。

小林 今のロッテに欠けているのがまさに左投手で、西武なんかも同じことが言える。とくにパ・リーグは左の強打者が多いので、勝ち試合で使える左投手がいるチームは絶対有利だと思う。

藤田 ロッテはほかにも足りない部分があるような気がするけど(笑)。

小林 なかでも二木(康太)は、もっと頑張ってほしい投手です。今シーズンはローテーションの柱として期待されたなかで、2試合打たれてファーム落ち。期待が大きい分「何をやってるんだ」と言いたい。持っているものは本当にすごいので、あとは自覚を持つことだと思います。これからは先発陣の踏ん張りが重要になってくるので、なんとか這い上がってきてほしい。

藤田 自分は成田(翔)に期待している。今のチームである程度計算できる左投手は松永(昂大)ぐらい。これではシーズンを戦ううえでかなり厳しい。今シーズン、成田はスリークォーター気味にフォームを変更し、化けそうな雰囲気がある。もともと持っている素質はいい。成田あたりが結果を残せるようになると、投手陣が活性化されて、上位と戦えるチームになると思う。

小林 本当に上位を狙っていくには、チームの雰囲気が変わらないといけないと思う。2005年の時は、若手は「やってやるぞ」とガツガツしていたし、主軸となるべき選手も自覚を持ってチームをけん引していた。いい意味で、チームに緊張があった。でも、まとまる時はグッとまとまるみたいな。時代が変わり、環境も違うので一概には言えないけど。

藤田 本当にそう思う。ロッテに限らずだけど、どこも仲良しクラブのような雰囲気があって、勝負に徹しきれていない。仲がいいのは大事なことだけど、プロである以上、言い方は悪いけど相手を蹴落としてでも......というような競争がないと、チームは強くならない。競争させながら若手を育てていかないと。

小林 ソフトバンク、楽天、西武と強い球団はあるけど、そういう流れができてくれば、素材的に面白い選手はいっぱいいるからチームは化けるかもしれない。

藤田 強いロッテを復活させてほしいね。

プロフィール
藤田宗一(ふじた・そういち)
1972年、京都府生まれ。島原中央高から西濃運輸に進み、1997年のドラフトでロッテから3位指名を受け入団。1年目から56試合に登板するなど、中継ぎのスペシャリストとして活躍。2006年には第1回WBCの日本代表に選出され、世界一を経験。その後、巨人、ソフトバンクでもプレーし、2012年にはBCリーグの群馬ダイヤモンドペガサスで選手兼コーチとして入団。同年限りで現役を引退。引退後は焼肉屋オーナーになるが、2018年より解説者に。現在はケニアの野球発展のために現地で指導も行っている。 https://tennis365.en-jine.com/projects/kenyabaseballproject

小林雅英(こばやし・まさひで)
1974年、山梨県生まれ。都留高から日本体育大、東京ガスを経て、1998年のドラフトでロッテから1位指名を受け入団。1年目は先発としても起用され、46試合の登板で5勝をマーク。3年目の2001年からクローザーとなり、2007年まで毎年20セーブ以上を挙げるなど活躍。「幕張の防波堤」の異名をとった。2008年からMLBのクリーブランド・インディアンスに移籍。おもに中継ぎとして57試合に登板。翌年も残留となったが、シーズン途中に契約解除。同年オフに巨人と契約するも1年で戦力外となり、オリックスへ移籍。ここでも結果を残せず、2011年限りで現役を引退。引退後はオリックス、ロッテでコーチを務め、現在はプロ野球評論家として活躍。

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  • 幕張の防波堤は決壊のイメージしか沸かない。大事な場面ほど撃たれていたしな。
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