変則ルールで問われる「采配力」。高いのは川崎・鬼木監督で低いのは?

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2020年08月15日 06:41  webスポルティーバ

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 従来の3人から2人増え、メンバー交代枠5人制で行なわれているポストコロナの現行サッカー。一定の気象条件を超えると、前後半1回ずつ設けられる飲水タイムも含め、試合の流れを変える機会が増している。つまり、監督が采配を振るう機会が大幅に増えたことになる。

 メンバー交代は、W杯で言えば1998年フランスW杯大会から、それまでの2人制から3人制に変更された。それから20数年が経過。戦術的交代を駆使しながら3人枠をきれいに使いこなす監督こそがよい監督と言われるに至った。メンバー交代は、いい監督か否かを見分ける、ひとつの物差しになっている。3人から5人に増えると、その傾向にいっそう拍車が掛かる。

 今季は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、変則的で不確定要素の多いシーズンだ。Jリーグも正統性の低さを認識しているからだろう。J1からJ2への降格を取りやめにした。日程を最後まで無事に消化できるかどうか、ここにきて怪しくなっているが、今季はリーグそのものの威厳と格式が低下した中で行なわれているシーズンなのだ。優勝争いとアジアチャンピオンズリーグ出場を懸けた争い以外、特段、意識するものはない。極端なことを言えば、5位になっても18位になっても変わりはない、緩いシーズンでもある。

 実験的な戦い、来季を見据えた戦い、つまり割り切った戦いがしやすい環境にある。できるだけ多くの選手を使いながら成績を出すという、理想を追求しやすいシーズンでもある。スタメンとサブの境界線がないチームほど全体の士気は上がる。監督への信頼感も増す。

 5人の交代枠を有効に活用しているのはどの監督か。このことは今季一番の視点と言っていいだろう。




 5人の交代枠が適用されたのは中断明けの第2節からなので、各チームは第9節終了した現在まで、この規定の中で計8試合を戦っている(未消化試合がある名古屋グランパスとサンフレッチェ広島は計7試合)。各監督の傾向は徐々に見えてきている。

 第2節以降、交代枠を各監督は1試合平均どれほど使ったか。その多い少ないを調べてみた。




 1試合5回の交代枠を、8試合すべて使い切った監督が1人だけいる。川崎フロンターレの鬼木達監督だ。5人を必ず変えることを、自らに課しているようでさえある。可能な限り多くの選手を使いながら、2位ガンバ大阪に勝ち点6の大差をつけ、首位を独走する。

 さらに言うならば、サッカーの中身もいい。他チームとの比較だけでなく、川崎の過去のチームと比較しても、だ。クラブ史上最高のサッカーとは筆者の見立てだが、そこに大きな価値を感じる。模範的な采配とはこのことを指す。こう言ってはなんだが、選手交代に難を抱える森保一日本代表監督に見習って欲しい采配だ。

 2位は2人。1人はミハイロ・ペトロビッチ監督(コンサドーレ札幌)だ。1試合平均4.88人。交代枠を唯一、使い切らなかった第8節のヴィッセル神戸戦にしても、その時、ベンチ入りしたメンバーが18人ではなく17人だったことが関係しているものと思われる。鬼木監督同様、5人枠を使い切ることにこだわっている様子が見て取れる。

 もう1人は金明輝監督(サガン鳥栖)。第4節のサンフレッチェ広島戦以外、5人枠をすべて使っている。現在15位につけているが、こうしたチームは後半から終盤にかけて、チーム力は上がっていく。Jリーグ監督の中でただひとりの30代。監督としての筋はいいと見る。

 4位は宮本恒靖監督(ガンバ大阪)で4.63人。彼も若手監督の部類に入るが、監督業が板に付いてきた感じだ。それでいながら成績は2位。多くの選手を使うことと、成績をクルマの両輪のように追求できている状態だ。選手のモチベーションは高いはず。大崩れはしないとみる。

 5位は3人。昨季の優勝監督、アンジェ・ポステコグルー監督(横浜F・マリノス)、ザーゴ監督(鹿島アントラーズ)、片野坂知宏監督(大分トリニータ)で、4.5人だ。

 ザーゴは高卒ルーキーを積極的に起用しているが、後半にかけてその成果は現れるのか。片野坂監督は、登録選手35人中、Jリーグ最多の30人をすでにピッチに送り込んでいる。多くの選手に出場機会を与えている。現在16位。厳しいシーズンになりつつあるが、くり返すが今季は降格がない。来季を見据えた頭脳的な戦いと言えるのかもしれない。

 一方、交代枠の使用率が最も少ない監督は、マッシモ・フィッカデンティ監督(名古屋グランパス)で、1試合平均3.71人だ。使った選手の総数(19人)も、リーグで最も少ない。川崎の鬼木監督とは対照的だ。名古屋は消化試合が1試合少ないにもかかわらず、現在4位につける。好調を維持しているが、選手の使い方を見る限り、いっぱいいっぱい。早くも鞭が入っている状態だ。

 そうした意味では5位の柏レイソルも危うく見える。ネルシーニョ監督の交代選手の1試合平均は3.88(17位)。フィッカデンティに次ぐ少なさだ。

 現在、川崎、G大阪に次いで3位を行くセレッソ大阪のミゲル・アンヘル・ロティーナ監督も交代枠の使用率が1試合4人と低い。なにより成績を欲して戦っているように見える。

 ちなみに、前節(第9節)、5人枠を使い切ったのは川崎、G大阪、名古屋、柏、浦和レッズ(大槻毅監督)、北海道コンサドーレ札幌、横浜FM、鹿島、鳥栖、大分トリニータの10チーム。

 4人に終わったのは、FC東京(長谷川健太監督)、広島(城福浩監督)、ヴィッセル神戸(トルステン・フィンク監督)、ベガルタ仙台(木山隆之監督)、横浜FC(下平隆宏監督)、湘南ベルマーレ(浮嶋敏監督)。

 そして3人に終わったのが、ロティーナのC大阪で、わずか2人だったのがピーター・クラモフスキー率いる清水エスパルスだ。

 クラモフスキーは4−2で勝利した第7節の大分戦でも3人しか代えられなかった。最下位からスタートしたチームを15位まで上げてきているが、勝利優先になりすぎていて、交代枠をフルに使う余裕がなくなっているように見える。采配に落ち着きを取り戻すことはできるのか。

 多くの選手を使いながら勝利を手にすることができると、チームの将来は明るくなる。注目したい。

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