本当に男は肉じゃがが好きなのか? 家庭料理の思い込みをくつがえす『意識の低い自炊のすすめ』

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2020年08月19日 11:11  ダ・ヴィンチニュース

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写真『意識の低い自炊のすすめ 巣ごもり時代の命と家計を守るために』(中川淳一郎/星海社新書)
『意識の低い自炊のすすめ 巣ごもり時代の命と家計を守るために』(中川淳一郎/星海社新書)

 得意料理は肉じゃがです。という定型文は、いったいいつ、どこから生まれたのだろう。定型すぎて、さすがに令和の今、使う人はいないと思うのだけど、それでもいまだに、“家庭の味”の代名詞として君臨している料理だと思う。これに異議を唱えるのが『意識の低い自炊のすすめ 巣ごもり時代の命と家計を守るために』(星海社新書)の中川淳一郎さんだ。

二日に一度は泥酔する父、週に一度は裸になる母… どうしてうちはおかしなことが起こるんだろう/酔うと化け物になる父がつらい

〈だいたい肉じゃがなんてものは、ある程度料理に慣れた人でなくては作れないし、牛肉を使うのか豚肉を使うのかでも意見が分かれるし地域によっても異なるもの。ジャガイモが一人前にドーンと3〜4塊は入っているため、ご飯のおかずにするにも「炭水化物×炭水化物」になってしまい本当におかずとして優れているのかはよく分からなくなる。〉という文章から始まる本書。主旨は肉じゃが論争ではなく、家庭の味、おふくろの味、といった言葉やイメージに紐づく家父長制的男尊女卑的においに対する反論だ。

「男だろうが女だろうが料理はやりたい人がやればいい」「上手だからってエラいわけではないし、料理ができなくても卑下する必要はない」「毎日2〜3回する食事に、毎回渾身の力を込めなくていい」というこの「はじめに」の部分だけでも、ネットに全文公開すればみんな本を買うんじゃないだろうかと思うほど、おもしろい。

 ちなみに中川さんは料理が好きで、家庭でもつくる担当。昨今、批判的なコメントも見受けられるマンガ『美味しんぼ』も大好きだというが、権威が必ずしも正しいわけではない、ということもご存じだ(テレビで見かけた料理研究家が「青菜に塩」っていうくらいこの2つはよく合うんですよ! と言っていた、というエピソードには笑った)。健康に気を遣い、愛情をもって手間を惜しまず、おいしくおしゃれに仕上げる料理も、もちろん否定はしないけれど、うま味調味料もパックのご飯も活用しながら、ラクにおいしく楽しく料理できるようになれば、コロナ禍で自炊の必要性が増した現代も生きていきやすくなるよ、というのが主旨である。

 というわけで、最低限もっていると便利な調理器具や調味料の紹介から始まり、意識の低い料理人でもすぐに実践できそうなレシピや使いまわし術を教えてくれるのが本書。個人的には、「冷凍すればなんでも大丈夫」だと思いこみ、賞味期限など切れて当たり前の人間なので、その2つを肯定していただいたうえで冷凍庫活用法や電子レンジ&オーブントースター活用法が語られているのがうれしかった(※冷凍すればなんでも大丈夫だと中川さんが言っているわけではない)。そこそこ自炊はするが、意識が低すぎて基礎知識のない人間でもあるので、「野菜、果物、肉、魚の違いは覚えておこう」「なぜその部分を捨てちゃうの?」「太らないための料理」なども非常に勉強になった。

 手をかけたいところも、抜きたいところも、人それぞれ。「男の料理」も「おふくろの味」もなく、ただ「私(と、私の家族)が、食べたいごはん」があるだけだ。自分に最適化された自炊術を手に入れるため、情報は好きに取捨選択すればいい。楽しくおいしく食べて生きるためのヒントを、本書は教えてくれるのである。

文=立花もも

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  • 肉じゃがって,そんなに大失敗するような料理ではないから,これがどうしようもなくまずかったら絶望する。
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