心屋仁之助氏の本で「結婚できた」と激推し! 紺野ぶるまに見る、スピリチュアル好きの思考回路

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2020年08月21日 14:42  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。

<今回の有名人>
「人生のどん底にいて……」紺野ぶるま
『今夜くらべてみました』(日本テレビ系、8月19日)

 例えば、占いやスピリチュアルといった「目に見えないもの、科学で証明されないもの」は、一緒くたにされがちではないだろうか。まったく興味がない人にとって、占いやスピリチュアルは「同じようなもの」かもしれない。しかし、占いを信じる人、スピリチュアルが好きな人は似て異なるのかもしれない。8月19日放送の『今夜くらべてみました』(日本テレビ系)に出演した芸人・紺野ぶるまを見て、そんなことを思った。

 「本棚が独特な女」の一人として、出演した紺野。「この本がなければ、結婚していない」として、心理カウンセラー・心屋仁之助氏の『ゲスな女が、愛される -あっという間に思い通りの恋愛ができる!』(廣済堂出版)を挙げた。内容を紹介するため、紺野は「気になっている人がいる炎天下でのバーべキュー、どんな行動を取る女性がモテると思いますか?」と共演者に質問する。女優・浜辺美波は「サラダを取り分ける」、番組アシスタントの指原莉乃は「人とかぶらない差し入れを持っていく」といった具合に、二人とも「気が利く」行動を取るとモテるのではないかと言っていたが、同書によると、モテるのは「パラソルの下、サングラスをかけて何もしない女」だという。なぜそんな女がモテるのかというと、「女が男に肉を焼いてあげるから、男が焼かなくなる」
のだそうで、冷房の効いた車の中で休んでいるようなゲスな女に、男性はせかせかと肉を焼いて運んでしまうとのことで、それが同書における「モテ」だと力説した。

 指原はこれに「それって、すっごい美人じゃないと成立しなくない?」と発言し、紺野は「それを言ったら、元も子もない」と返したが、同じことを思った視聴者も多かったのではないだろうか。しかし、万人にあてはまる本は存在しないので、心屋説でうまくいく人もいれば、そうでもない人もいて、紺野は前者のうまくハマったタイプなのだろう。

 紺野は「何かしないと愛されないと思っているから、何かしないと愛されない」と思い込みの危険さを説く。加えて、「何もしなくても愛されると信じたら、何もしなくても愛されるという事実だけが集まってくる」と、スピリチュアルの代表格「引き寄せの法則」を思わせるような発言もしている。

 実際、紺野はスピリチュアルも好きで、影響を受けたものに、日本のスピリチュアル界の首領、江原啓之の著作を挙げている。紺野は高校を中退しているが、その時が「人生のどん底にいて、現実に起こることを真正面から受け止めると、落ち込んでしまう。物事を多角的に見るといいよ、というのを学んだ」と話していた。

 人生で一番つらい時期をスピリチュアルが救ってくれたというのは、「いい話」なのかもしれない。しかし、紺野の話をよく聞いてみると疑問がわかないでもない。

 紺野は、校則の厳しい私立高校に通っていたが、当時の紺野は金髪のガングロギャルで、こうした格好は校則違反に当たったという。また「あと一回問題を起こしたら退学」と宣告されていたが、紺野は遅刻をしてしまう。おでんを食べながら登校していた紺野を校門の前でまちかまえていた校長先生は、「社会のくず、くさったみかん」とののしった。カチンと来た紺野は、おでんの汁で校長先生の周りを囲み、「黒魔術かけたから、ここから出るなよ」と言い放って、教室に向かったという。すると、翌日に親が呼び出されて、退学になったそうだ。

 紺野自身が中退を「人生のどん底」と言っているのだから、本人にとってはつらい経験だったのだと思う。しかし、中退の経緯を聞いてみると、病気や金銭的な問題というような不可抗力ではなく、本人の素行不良である。高校は義務教育ではないし、ましてや私立高校の場合、校則を守らなければ退学させられる要因になることは周知の事実だろう。学校側も突然退学を言い渡したわけではなく、「あと一回問題を起こしたら退学」とあらかじめ警告もしている。家庭の問題など、ここで明かされていないエピソードもあるのかもしれないが、放送回を見る限りでは、他人から同情されるエピソードだとは思えなかった。

 占いが好きな人は「未来を恐れる人」だと言えるかもしれない、と前回の本連載で書いた。将来いいことが起きるかもしれないと期待して、もしくは今はいいけれど、この先に悪いことが起きるかもと不安になり、つい占い師のもとへ足を運んでしまうのではないかと思うのだが、スピリチュアル好きが恐れているのは、「お前が悪い」と言われることではないか。

 江原氏の著作を読んだり、『オーラの泉』(テレビ朝日系)を見ていると、「全ては必然」「魂の学び」という言葉が頻発し、「お前が悪い」とは言われない。病気や事件・事故、天災に巻き込まれるなど、この世の苦しみには理不尽なものが多いので、「この世の出来事は、お前が悪いのではなく、起こるべくして起こる」「魂を成長させるために、痛みを経験している」というスピリチュアリストの言葉に救われる人は多いだろう。が、実際には明らかに自分に非があるのに「おまえが悪い」と言われることを恐れて、見ないふりをする、“逃げ”のスピリチュル愛好家も数多くいるのではないだろうか。

 紺野は居酒屋で「一目ぼれしたんで、結婚してください」と声をかけてきた男性と交際、結婚したと明かしていたが、「結婚できる本」として、ジェーン・スー氏の『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』(ポプラ社)を挙げていた。同書はスピリチュアル本ではないが、「これを読んでいなかったら、結婚してない」と心屋の本と並べて推す紺野を見ていると、スピリチュアルにハマッる愛好家のように見えてしまう。しかし、紺野がいくら同書を効果的だと言っても、ブライダル業界に「男性が女性に一目ぼれした場合、結婚率は高く、離婚率が低い」という統計があるのをご存じだろうか。紺野の結婚は、この統計に基づく法則にあてはまるわけだ。もちろん読書も効果があったと思うが、成功(や失敗)の原因は一つではなく、いくつもの要因が重なってなされるのではないだろうか。どうか、スピリチュアルなど“何か一つ”に頼りすぎることなく、紺野には今後も芸能活動に励んでいただきたい。

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