まるで1000kmのような真夏のサバイバル戦。逆襲のMOTUL AUTECH GT-R、今季待望の初勝利【第3戦鈴鹿GT500決勝】

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2020年08月23日 17:01  AUTOSPORT web

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2020年スーパーGT第3戦鈴鹿 MOTUL AUTECH GT-R(松田次生/ロニー・クインタレッリ)
真夏の8月開催となった2020年スーパーGT第3戦鈴鹿サーキットでのGT500クラス決勝は、開幕2戦で苦しいシーズンの幕開けを強いられていたMOTUL AUTECH GT-Rの松田次生/ロニー・クインタレッリ組が、予選フロントロウからの流れを見事に維持して待望の今季初優勝。数多くのバトルやアクシデントをくぐりぬけ、終盤は後続を寄せ付けない往年の横綱相撲を思わせる、完全復活のレースを披露した。

 新型コロナウイルス(COVID-19)感染症の影響で変則カレンダーを採用し、この鈴鹿サーキットも寂しい無観客のグランドスタンドを前に8月23日(日)の決勝日を迎えた。

 前日までは降雨の予報もあり、夜間には実際に稲光とともに路面を濡らしたものの、朝を迎える頃には再びの快晴。午前11時40分のウォームアップ走行時点で気温も約31℃、路面温度も約48℃まで上昇するなど、現地は引き続き熱中症対策が必須の灼熱コンディションとなった。

 土曜の予選で路面温度が50℃を超えるなか驚異の速さを発揮し、ポールポジションを獲得した64号車Modulo NSX-GTを筆頭に、5番手にはRed Bull MOTUL MUGEN NSX-GTがつけ、それぞれダンロップ、ヨコハマタイヤを装着するホンダNSX-GT勢が躍動。さらに4列目の7、8番手にも前戦勝者KEIHIN NSX-GTとRAYBRIG NSX-GTが並び、ホンダ勢は4台がQ2進出と速さを見せた。

 一方、ニッサン陣営はエースカーの23号車MOTUL AUTECH GT-Rが気を吐き、フロントロウ2番手を確保。GT-R逆襲の気配を感じさせると同時に、その背後セカンドロウに並ぶトヨタ陣営の2台、ZENT GR Supra、WAKO'S 4CR GR Supraのセルモ勢とともに、序盤から驚速ダンロップ追撃を狙う構図となった。

 予選後には「僕の個人的な希望で、明日はスタートを担当して20秒ぐらいブッちぎりたい」と語っていた伊沢拓也がフォーメーションから1コーナーへホールショットを決めると、早くもNSX-GTのテールに張り付く2番手MOTUL AUTECH GT-Rを抑え込み、首位を守ってオープニングラップをクリアしていく。

 その後方では、7番手スタートのKEIHINベルトラン・バゲットが、WedsSport ADVAN GR Supra、Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GTのヨコハマタイヤ勢2台を仕留めて、早々に5番手へ進出。スタート時には路面温度が50℃に達しようかというコンディションで、タイヤの発動特性が異なるか、WedsSportは100号車RAYBRIGの牧野任祐にもかわされ、8番手までポジションを落としてしまう。

 するとその後方でスタートが切られていたGT300クラスでアクシデントが発生し、2周目にはセーフティカー(SC)の導入が宣言される。

 この車両回収終わりでSC解除となり5周目からリスタートが切られると、先頭集団はクリーンに立ち上がったものの、後続で再びのアクシデント。7番手にいたRed Bull MOTUL MUGEN NSX-GT武藤英紀がコントロールライン手前の最終コーナーアウト側にコースオフ。左のリヤタイヤを失ったNSXはそのままピットロード出口に寄せ、マシンを止めてしまう。

 また同じ頃、ラップを通じて攻防を繰り広げていた2番手争いは、シケインのブレーキングでクリーンにインを刺したZENT GR Supraの立川祐路が、MOTUL AUTECH GT-Rをオーバーテイク。不振にあえいだ開幕2戦の鬱憤を晴らす走りを見せる。

 8周目を迎えると、予選で後方に沈んでいたカルソニック IMPUL GT-Rがトラブルを抱えたかスローダウンし、そのままガレージへ。その翌周のコース上では5番手を争っていたNSX-GT同士に動きがあり、40kgのWHを抱えながら防戦していたKEIHINが、シケインで堪えきれずRAYBRIG牧野に先を許す展開となる。

 10周目を過ぎ、ここまで1分50秒台を刻んでいたModulo伊沢にも変調が訪れ、わずかにペースダウンした64号車に、2番手ZENT立川以下の集団が急接近。11周目のシケインでは立川がアウトからかぶせるものの、わずかに接触した38号車はランオフへ避難しながら前へ出る形に。

 続く周のダンロップコーナーで元のポジションへとバックオフした立川は、この時点ではロスなく2番手へと戻ったものの、13周目にGT300のバックマーカーが絡み始めると、ここで一瞬の隙を見逃さなかった3番手ロニー・クインタレッリが一閃。

 ヘアピンのインサイドで渋滞にハマった立川をアウトから豪快にパスすると、自身もクラッシュスレスレの状況でGT300をかわし、2番手を取り戻すさすがの勝負強さを披露する。

■レース終盤、3番手争いが激化。60kgを積んだau TOM'S GR Supraが追い上げる

 さらにこの先頭集団に次なる異変が起きたのは15周目。64号車伊沢はGT300をパスする中でタイヤに問題を抱えたかさらに急激なペースダウン。見るからにコーナーを曲がれないModulo NSX-GTは、ダンロップコーナーでMOTUL AUTECH GT-R、ZENT GR Supraに立て続けに抜かれると、デグナーからヘアピンにかけて次々とオーバーテイクを許し、なんと7番手にまで一気にポジションを落としてしまう。

 そんな64号車とは対照的に、このタイミングでペースを上げて来たのは100号車RAYBRIGの牧野で、16周目にはWAKO'S 4CR GR Supra、そしてスプーンではZENT立川のインにも滑り込み、2番手にまで浮上してくる。

 ここで24号車リアライズコーポレーション ADVAN GT-Rのフロントカウルがバックストレート上に剥がれ落ちた影響で、この日2度目のSCランが入り一旦仕切り直しとなったバトルは、23周目にリスタート。

 するとSCピリオド中にルーティン作業をスタンバイしていた上位勢が一斉にピットへと雪崩れ込もうとしたそのとき、3番手にいた38号車ZENT GR Supraはギヤシフトにトラブルを抱えて加速もままならず。GT-Rのテールを突き続けたファイター立川は、無念にもそのままピットでレースを終えてしまう。

 この周回でピットに入った64号車Moduloや8号車ARTAらに続き、次の周回には2番手のRAYBRIG NSX-GTやKEIHIN NSX-GTらがピットへ。その翌周25周目には首位MOTUL AUTECH GT-Rがピットへ向かい36.5秒の静止時間でトップのままコースへ。各車がルーティンを済ませた27周目には2.7秒の差でトップの地位を守ってみせる。

 その背後3番手には、ファーストスティント終盤に今季初ドライブとなるヘイキ・コバライネンの力走で順位を上げ、首位2台の1周後にピットへ飛び込んだDENSO KOBELCO SARD GR Supraが浮上し、4番手にも同時ピットだったModulo NSX-GT大津弘樹をアウトラップのシケインで仕留めていた、ARTA NSX-GT福住仁嶺が上がってくる。

 レースも折り返しを過ぎた29周目に再びGT300のアクシデントで3度目のSCとなり、32周目にホームストレート上で再び隊列を整えると、ここからはセカンドスティント担当のドライバー同士によるコース上決着の展開に。

 34周目の再開直後から、1分50秒346の自己ベストを刻んで逃げる首位の松田次生の背後では3番手争いが激化。その結末は36周目に訪れ、ヘアピンで39号車DENSO KOBELCO SARDの背後を伺った4番手ARTAの福住は、ラインが交錯しGR Supraのテールに追突。

 これでSARD中山雄一はたまらずスピンを喫し5番手までドロップ。一方のARTA NSX-GTもフロントバンパーを左を破損し、千載一遇の機会だった第3戦を失ってしまう。

 これで表彰台圏内3番手に浮上して来たのが60kgものWHを搭載して"お休み"ラウンドだったはずの36号車au TOM'S GR Supraで、関口雄飛は39周目に1分50秒413と自己ベストを更新し、前とのギャップを詰めていく勢いを見せる。

 40周を過ぎて以降の残り周回も、首位MOTUL AUTECH GT-Rはこれまでの不振からの復活を印象付ける盤石のラップを積み重ね、52周のトップチェッカー。富士での開幕2戦でどん底を味わった松田次生と23号車が、待望の今季初優勝。2位RAYBRIG NSX-GT、3位au TOM'S GR Supraのトップ3に。3者3様、それぞれ思惑の異なる表彰台となった。

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  • おめでとう! 次生さんの(嬉し)涙、久々に見たよ…
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