須永兼次の「アニソンをしゃぶりつくせ!」 第15回 SHOW BY ROCK・推し武道――”旬”の作品発キャラソン組の良作とは【アニサマ2020特別編その13】

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2020年08月26日 18:02  マイナビニュース

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13回目となる今回は、”えりぴよ&舞菜 from 推し武道”、” SHOW BY ROCK!!”(五十音順・敬称略)をご紹介。いずれも2020年の冬クールにTVシリーズが放送された”旬”な作品。そこから飛び出したキャラクターとして、SSAの現実のステージでどういったライブを目指していたのだろうか。ちょっとした”妄想”も膨らませながら、今回も一緒に”予習”していきたい。

○【えりぴよ&舞菜 from 推し武道】アイドルからファン側に移ることで、ガラリと変わった”片想い”

"推し武道"こと『推しが武道館いってくれたら死ぬ』は、2015年から連載中の同名の漫画を原作に、2020年1月にTVアニメ化された作品。アイドルグループ・ChamJamに偶然出会ったことでファンとなり、特にそのメンバーのひとり・市井舞菜を熱狂的に推し始めたフリーター・えり(えりぴよ)を中心とする、アイドルファンとアイドルをめぐる物語が展開されていく。

その舞菜とえりぴよのふたりが、揃って「アニサマ2020」への出場を決めていたことが今年のアニサマ順延と同時に発表。いわば"アイドルとそのファン"が”一組の出演者”としてラインナップされたという異例のステージ、ぜひいつの日か実際のステージで目にしたいものだ。

☆この曲を聴け!……えりぴよ(CV:ファイルーズあい)「♡桃色片想い♡」(TVアニメ『推しが武道館いってくれたら死ぬ』EDテーマ)

原曲は松浦亜弥のTHE・王道アイドルソングだが、それをカバーしたのはなんと、オタク側であるえりぴよ。彼女に寄り添うために、アレンジは大胆に変更された。

そのなかで楽曲に付加されたいちばん大きな要素は、切なさだ。頭サビ後、Aメロの序盤のサウンドは詰まりに詰まった原曲とは異なり、空間さえ感じるもの。しかもそれをピアノとグロッケンがメインとなって形作ることで、音の面からの切なさが際立っている。これは片想いのときの楽しさも織り込んで歌われた原曲と、どんなに想いをつのらせても"アイドル"と"ファン"という壁に直面せざるを得ないえりぴよとの違いを表すものではないだろうか。しかもそれが、言葉とメロディを同一のままアレンジの違いだけで見事に描かれているのである。

もちろんサビに向けての気持ちの盛り上がりとともに、華やかさも徐々にではあるが増していくため、サビ前半だけを切り取れば原曲との差はあまり感じられないかもしれない。しかしサビの後半の第二の仕掛けで、またこのバージョンならではの側面が顔を出す。二度目の「桃色の片想い」のフレーズのコードに注目していただきたい。

一度目とは違うマイナーコードに変更することで、後半部分にさらなる切なさが上乗せされ、見事にカバー曲のはずなのにえりぴよの心情吐露になる”キャラソン”として成立する楽曲が完成した。細部に至るまでそのテーマを貫き通し実現させた、編曲を手掛けた佐高陵平にm心の底から拍手を送りたい。

加えて、それを歌うえりぴよ役・ファイルーズあいの歌声も絶妙である。ちょっと押しが強くて、それでいて不器用だけど精一杯。"えりぴよが歌っている姿"の表現としては至上のものであり、このアレンジと組み合わさることでファンとしての切なさを倍増させる、素敵な歌唱だ。

だからこの曲はぜひ、SSAでもひとりで歌ってほしい……なんて思ってしまっている。もちろん最終回EDでえりぴよが舞菜とデュエットを果たしたのは存じ上げている。しかし、"アイドルとファンが実際並び立って歌う"のは、なんだか違うような気がするのだ。幸いSSAは大会場。同じ空間にいながらも、離れた場所からえりぴよが必死で舞菜に歌いかける――なんてことは可能だろう。そんな、この曲が最高に輝く生のステージを、妄想せずにはいられない曲なのだ!

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○【SHOW BY ROCK!!】エモーショナルさあふれる、Mashumairesh!!はじまりの曲

『SHOW BY ROCK!!』は、音楽&バンドをテーマにしたキャラクタープロジェクト。スマホアプリの配信を皮切りに展開がスタートし、2015年・2016年には2期にわたってTVアニメも放送。さらに2020年1月からは新TVアニメシリーズ『SHOW BY ROCK!! ましゅまいれっしゅ!!』も放送。タイトルにも冠されたバンド・Mashumairesh!!の結成や成長を描いた、エモーショナルな青春ストーリーが展開された。

「アニサマ」には、2016年に『SHOW BY ROCK!!』のTVアニメにおけるメインバンド・プラズマジカが出場。それから4年ぶりの出場を予定していた今回は、『ましゅまいれっしゅ!!』からMashumairesh!!とREIJINGSIGNALにDOKONJOFINGERのヤス(CV:伊東健人)、さらには『SHOW BY ROCK!!』プラズマジカのシアン(CV:稲川英里)とBUD VIRGIN LOGICのアイレーン(CV:野口瑠璃子)も登場。クロスオーバー的に顔を揃える夢のステージが予定されていたのだ。

☆この曲を聴け!……Mashumairesh!!「エールアンドレスポンス」 (TVアニメ『SHOW BY ROCK!! ましゅまいれっしゅ!!』挿入歌)

様々な面々の中から、今回は『ましゅまいれっしゅ!!』のメインバンド・Mashumairesh!!の楽曲からセレクトした。

この曲は第1話で4人が初めて一緒に奏でた、バンドにとって大事な曲。はじまりを感じさせる爽快感の強いストレートなロックで、オーディエンスへとエールを送るような楽曲であるのと同時にバンドメンバー同士の絆も結ぶエモーショナルなナンバーでもる。特に1クールを通じて様々な出来事を乗り越えてきた4人を見守ってきた視聴者は、放送終了後の今この曲に立ち返ることで、強く強く結ばれた4人の絆に胸を熱くすることだろう。

しかも設定上は、この曲を書き上げたのがマシマヒメコ(CV:夏吉ゆうこ)、というのもいい。ヒメコはかつて、自身の才能に惹かれて組んだ相手に離れられてしまったという過去を持っており、そんな彼女がこの曲にひとつの憧れの形を投影したと考えると、それもまたたまらなくエモい。歌声もそのエモさをさらに膨らませるもの。キャラソンである点も踏まえつつ、キャラ声を意識しすぎずに全力で楽曲にぶつかることを優先した歌声が生む懸命さも、非常にグッとくるものだ。

もちろんそんなバックボーンを知らずに、初めてこの曲を受取るオーディエンスにとっては、この曲は紛れもない応援歌。そしてキャッチーな「フレーフレー」のコール部分をライブ中に叫んで4人へのレスポンスとすれば、それは逆に彼女たちへのエールにもなる。4人が前へと進むための、原動力にも変わるものなのだ。

ストーリー展開だけではなく、この曲の中でのバンド内での想いの反響と、オーディエンスからの想いや声の反響。様々な"エールアンドレスポンス"が存在するこの曲に、胸を熱くせずにはいられない。

ちなみにその他にも本作には、同じくMashumairesh!!が担当するEDテーマ「キミのラプソディー」やREIJINGSIGNALの「Parallelism Crown」をはじめ、とにかく良曲がてんこ盛り。まずは楽曲から、この『ましゅまいれっしゅ!!』の世界に触れてみてはいかがだろうか。

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放送が終わって程なくのタイミングということで、ぜひ今年の夏に生でのステージを体感したかったこの2組。来年リベンジを果たすときのために、アニメや楽曲を通じて熱を保っていようではないか。そして作品を飛び出してのパフォーマンスを肌で感じることで、最高の体験を、2021年の夏にしたいものだ。

さて、次回は雨宮天、仲村宗悟、森口博子(五十音順・敬称略)をピックアップ。仲村はソロとしては初出場であり、雨宮と森口もそれぞれ以前はサプライズでのソロ出場――つまり、事前発表がある形では”ソロ初出場”だ。そんな3人の、今年の夏に聴きたい曲をそれぞれご紹介していく予定なので、どうぞお楽しみに!

●著者プロフィール
須永兼次(すながけんじ)。群馬県出身。中学生の頃からアニメソングにハマり、会社員として働く傍らアニソンレビューブログを開設。2013年フリーライターとして独立し、主に声優アーティストやアニソンシンガー関係のインタビューやレポート記事を手がける
Twitter:@sunaken

記事内イラスト担当:jimao
まいにち勉強中。イラストのお仕事随時募集しております。Twitter→@jimaojisan12(須永兼次)

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