「選手」を真ん中に置いた学童野球リーグ「Players Centered League」(後編)

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2020年08月31日 19:04  ベースボールキング

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横浜市のあるグラウンドで早朝8:15から試合が行われていました。行われていたのは来春からの開幕を目指す新しいリーグ戦「Players Centered League」(以下、PCL)のプレリーグ戦。”子ども達を真ん中に置いたリーグ”とは一体どんなリーグなのでしょうか?



学年、実力に応じた4つのカテゴリー
まずこのリーグは、単に近隣チームと試合をするためにだけに設けられたのではありません。このリーグを全国に広げることによって野球人口の増加につなげたいというビジョンを持っています。
「子どもは練習がしたいかから野球を始めたのではなく試合がしたいから野球を始めたのだと思います。ですからリーグ戦を通じてそれを達成してあげたいのです」そう話してくれたのはP C L実行委員長の加古さん。このリーグが全国的に広まることによって、「少し野球に興味がある」という程度の子どもたちに野球本来の“試合を楽しむ”を体験してもらう機会を増やし、それによって野球人口の増加につなげたいと考えているのです。

そのPCLは文字通り選手である子ども達を「真ん中」に置き、その子ども達を中心に次の5つを理念、行動基準にしています。

【無限】「子どもたちが無限の力を発揮できる環境を創り続ける」
→子どもたちが自ら試合の場を作り、運営する(野球をやりたい!だから自ら準備する)

【挑戦】「子どもたちの「もっと野球をやりたい!」を実現する」
→子どもたちに多くの成長機会を提供する(ゲーム出場機会増の工夫)

【友】「挑戦する仲間を認め合うスポーツマンシップの浸透」
→子ども同士、互いに認め合い、尊重する(スポーツマンシップ精神)

【夢】「子どもたちが夢を語ることを当たり前にする」
→子どもたちが考え、決めて、行動する(大人の枠、先入観、思い込みは不要)

【応援】「子どもたちの挑戦を大人が いっぱい応援できる空気をつくる」
→子どもたちの心と体の成長を応援する(手を出さず手を貸す。口を出さず見守る)



PCLの大きな特徴は、学年、実力に応じた4つのカテゴリーに分かれていること。カテゴリーごとにルールなどは異なりますが、共通ツールとして当日参加した選手は「全員出場」(攻撃において少なくとも1打席は打席に立つ)が決められているため、誰でも試合に出場できるようになっています。

現時点のカテゴリーごとのルールなどは以下のようになっています(現在行われているプレリーグ戦であらゆる試行錯誤を繰り返しながら可能性を模索している段階ですので、今後変更になるルールが追加、変更される場合もあります)。

【CLASS-A】(5-6年生中心)
塁間23m・投手16m/試合形式:7回制(100分)/盗塁:あり/球数制限:70球/攻撃:1イニング最大打者9人で攻守交替/使用球:J球

【CLASS-B】(4年生以下)
塁間21m・投手14m/試合形式:5回制(80分)/盗塁:1イニング2回まで/球数制限:50球/攻撃:1イニング最大打者9人で攻守交替/使用球:J球

【CLASS-C】(1-3年生)
塁間19m・投手13-14m(レベルに応じて調整)/試合形式:5回制(60分)/盗塁:なし(リードあり)/球数制限:40球/攻撃:最大10分で攻守交替/使用球:J球、D球

【CLASS-D】(1-2(3)年生)
メンバーに応じ柔軟に対応(塁間18mが基本)/試合形式:時間制(40分) or21点先取/盗塁:なし(リードなし)/球数制限:30球/攻撃:最大7分で攻守交替/使用球:D球、Tボール



【カテゴリー共通ルール】

・各チームからの申請で”上下飛び級”による、カテゴリー、学年制限を超えて出場が可能。
・当日参加選手「全員出場」=攻撃において少なくとも1打席は試合に参加
・1試合の中で投手↔捕手の交代NG
・CLASS-Cは、打者1ストライクスタートとする
・CLASS-Dはコーチが捕手を務める

また、PCLは勝敗、順位を競うだけではなく「出場人数」「登板出場数」「勝利数」など、育成につながる複数項目をポイント化し、シーズンごとに表彰することも検討しているそうです。
指導者たちが考えるリーグ戦の良いところ
横浜金沢Vルークス 加古代表(PCL実行委員長)


「PCLはもちろんリーグ戦を戦うリーグなのですが、しかしそれが目的なのではありません。例えば、短期的なチームを編成して1試合だけの試合もO Kですし、何チームかで混合チームを作って参加するときがあってもいいと思っています。また、ふらっとグラウンドに遊びに来た子が飛び入りで参加することがあったっていいと思っています。

PCLの本当の目的は、子どもたちそれぞれが創造し、色んな形で試合を楽しむこと。そして、子どもだけでなく保護者にもワクワクしてもらうこと。また、PCLを通じてスボーツマンシップやコーチング等も含め、心技体について学べるようにもしていきたいと思っています。PCLに携わる全ての人がキラキラした目と笑顔になれたら最高ですね」

みなとみらいブルーウインズ 塚本監督(PCL事務局長)


ーーリーグ戦のいいところはどんなところにあると考えていますか?

育成年代でいうと失敗を許容できることだと思います。リーグ戦だったら失敗しても次の試合でそれを取り返すチャンスがありますから。これがトーナメントの一戦必勝、「勝てなかったら終わり」という精神状態ではない状態でプレーできるというのはリーグ戦の良い面だと思います。

ーー今日の試合が3試合目ということですが、リーグ戦をはじめて子どもや保護者の皆さんの変化を感じることはありますか?

プレーの機会が必ずあるので選手の成長の場になりますし、保護者の皆さんはそれを応援できますよね。あとは子どもの失敗を保護者が許容できる点ですね。どうしても保護者の方って子どもの失敗に厳しかったんですよね(笑)。そこを我々指導者も(リーグ戦は負けて終わりではないのだから)失敗も許容してあげましょうよ、と話しています。

ーーベンチも保護者も穏やかでピースフルでしたね(笑)

そうですね。そこは(負けて終わりのこれまでのトーナメントとは)違う気がしますね。

横浜ブレイズ 西澤コーチ


ーーリーグ戦のいいところはどんなところにあると考えていますか?

トーナメントだと負けたら終わりなので、どうしても(指導者も保護者も)何が何でも勝とうとしますよね。そうすると試合に出るメンバーが固定されてしまう。(このリーグ戦だと)全員が出場できますし、良いプレーも悪いプレーも「思い切ってやろう!」って言えることが、トーナメントとは大分違ってきますよね。

ーー今日も全員出場したのですか?

2年、3年のチームで10人でしたが全員打席に立って出場しました。

ーーリーグ戦をはじめてから子ども達の変化を感じることはありますか?

リーグ戦だと定期的に試合がありますから、日頃の練習が練習のための練習ではなく、次の試合のための練習になってきたなと感じますね。

ーー練習の目的が明確になった?

そうですね。

ーー子ども達は試合を楽しみにしていますか?

それはもう。今日も朝からいつもとは全然感じがちがいましたね(笑)。

(取材・文/写真:永松欣也)

 

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  • そこまでやるならユニフォームはいらないと思う もっとラフに 野球を楽しめばいい
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