日本人GK黄金時代到来の前兆。19歳が欧州ユース最高峰の舞台に立つ

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2020年09月02日 06:21  webスポルティーバ

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「福田正博の日本人長身GK育成法」はこちら>>

「日本でも、5年後くらいには身長190cmオーバーのGKが多くなっているんじゃないですかね」

 40歳でJ1のピッチに立つ南雄太(横浜FC)は言う。昨シーズンは、横浜FCのJ1昇格の原動力となり、今シーズンも第12節の清水エスパルス戦で勝利の殊勲者になった。20年以上、トップレベルのGKを続けてきた男の証言である。

「単純に、でかいとパワーは出ますよね。(ドイツ代表でバイエルンに所属するマヌエル・)ノイアー(193cm)を見てもわかると思いますけど、体勢が悪くても、ふつうは(ボールがラインを越えて)いっちゃうところで、ボールをかき出せますから。あれは、パワー以外にない。

 今までの日本では、身長180〜185cmで、俊敏で動けるGKが多かったんです。でも、GKはどんどん大型化している。シュミット・ダニエル(シント・トロイデン/197cm)なんていい例ですね。自分はひとつ前の時代でよかったなと思いますよ。ユース年代には、ハーフで、伸びていきそうな選手がたくさんいますから。これからは彼らの時代なのかもしれません」

 それは、啓示的な響きを伴う。

 8月25日、U−22日本代表のGK小久保玲央ブライアン(ベンフィカ)は、UEFAユースリーグ(ユース年代のチャンピオンズリーグ)決勝を戦っている。




 U−19ベンフィカは、英雄ラウル・ゴンサレス監督が率いるU−19レアル・マドリードを相手に堂々と渡り合った。2点を先行されたが、1点を返し、再び突き放されたものの、その後、また1点を返した。終盤には、準決勝でアヤックスを3−0で打ち負かした攻撃力を見せる。PKを奪い取り、シュートがバーを叩くなど猛攻を続けたが、あと一歩及ばず、2−3で敗れた。

 雌雄を決する一戦で、父がナイジェリア人で母が日本人という小久保は、ポテンシャルの高さを示している。

 身長193cmと大柄だが、機敏に動くことができる。シューターに対して詰め寄るスピードは秀抜だ。クロスに対しては猛禽類のように高く跳んでボールをとらえ、大きくはじき出した。

 最初の2失点に関しては、ノーチャンスだった。ひとつは完全にニアで合わされ、もうひとつはオウンゴール。ただし3失点目は、グラウンダーのクロスに対して飛び出したが、ディフェンスと見合う形でボールがすり抜け、ファーサイドで撃ち抜かれた。

 いずれにせよ、日本人GKがユース年代の欧州最強を決める舞台に立つというのは、画期的な出来事と言えるだろう。

 ベンフィカは、欧州で最高レベルの育成組織を誇っている。ジョアン・フェリックス(アトレティコ・マドリード)、ベルナルド・シウバ、ジョアン・カンセロ(ともにマンチェスター・シティ)、ネウソン・セメド(バルセロナ)など、過去10年だけでも、多くの有力選手をビッグクラブへ送り出してきた。それによって得た利益総額は、なんと4億ユーロ(約480億円)とも言われる。

 GKでは、ブラジル代表エデルソンが代表的だろう。16歳の時にブラジルから発掘し、3部リーグ、2部リーグ、1部リーグ下位のクラブにレンタルしながら、じっくり育て上げた。そしてベンフィカのトップチームでデビューさせた後、4000万ユーロ(約48億円)でマンチェスター・シティへ売却。今や世界有数のGKと言える。

 小久保も、柏レイソルの下部組織でカテゴリーを上げていった。ユース年代の国際大会での活躍が見初められて、2019年1月、18歳でベンフィカに入団している。

 はたして、エデルソンに続くことはできるのか?

 欧州でプレーする日本人GKには他にも、フランス人とのハーフのGK山口瑠伊(22歳/188cm)がいる。FC東京の下部組織で育った後、フランスで2年、スペインで4年目。2019−20シーズンは、2部のエストレマドゥーラでトップデビューを飾っている。2020−21シーズンは、2部B(実質3部)のレクレアティボ・ウエルバでプレーする予定だという。
 
 そしてJリーグでも、今シーズンはGKで目覚ましい変革が起きつつある。大迫敬介(21歳、サンフレッチェ広島/187cm)、波多野豪(22歳、FC東京/198cm)、梅田透吾(20歳、清水エスパルス/184cm)、沖悠哉(21歳、鹿島アントラーズ/184cm)、山田大樹(18歳、鹿島アントラーズ/190cm)、谷晃生(19歳、湘南ベルマーレ/190cm)など、若手GKが次々に出場機会を得つつある。GKはたったひとつのポジションで、日本では"聖域"として扱われがちだったが、群雄割拠となることによって競争力が上がってきた。

 はたして、時代を突き破るような日本人GKは出てくるのか。

「自分の場合、身体的にはそれほど恵まれていなかったので、どこで勝負するか、というのは考え抜いてきました。コーチングだったり、ステップを変えたり。そうやって考えてプレーすることで、身についたものもあるんです」

 40歳でトップGKを続ける南は言う。その積み上げを怠ったら、どんなにポテンシャルの高いGKであっても、成長は見込めないのだろう。

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