ブームから15年、“生協の白石さん”の今…コロナ禍で悩む若者へのアドバイスとは?

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2020年09月02日 08:40  ORICON NEWS

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写真面影そのまま50代の”生協の白石さん”こと白石昌則氏  (C)oricon ME inc.
面影そのまま50代の”生協の白石さん”こと白石昌則氏  (C)oricon ME inc.
 先般、インスタグラムで読者から寄せられた悩み・相談に対し、9歳の女の子がズバッと答え、解決へ導く「さよふしぎたんていしゃ」が話題となった。閉塞感のある時代だからこそ、悩みを持つ人が第三者に意見を求め、そこに救いを見いだす。2000年代初頭、これと同じような現象が起き、1人の男性がその渦中にいた。当時、東京農工大学内の生活協同組合(以下、生協)に勤務していた白石昌則氏。学生から「ひとことカード」で寄せられる意見への丁寧すぎる対応が話題となり、時代の寵児に。あれから15年、“生協の白石さん”は、当時をどう振り返り、またコロナ禍の今、現代を生きる人たちにどんなアドバイスを送るのか、話を聞いた。

【貴重写真】メディア露出少なく“謎な存在”だったブーム時の“生協の白石さん”

■一人の学生がブログに取り上げたことで“バズった”ひとことカード

 生協に寄せられた学生からの「ひとことカード」に対し、物腰柔らかな言葉遣いでの、物事の本質を突くアドバイスを行っていた白石氏。著作『生協の白石さん』(2005年/講談社)は90万部以上を売り上げるなど、社会的に大きな注目を集めるきっかけとなったのは、一人の学生がブログに取り上げたことだった。

 「がんばれ、生協の白石さん!」と題されたそのブログでは、生協内の掲示板に貼りだされた学生からの生協への要望をはじめ、悩み相談、普通なら破棄されるであろうイタズラと思われる“無茶ぶり”にも、真摯に、丁寧に、ウィットに富んだ切り返しで答える氏のコメントをアップ。「ほっこりあたたかい気持ちになる」と人気を呼び、「がんばれ、生協の白石さん!」は、その年の人気ブログランキングの上位に輝くほどになった。

 例えばこんなやりとりがある。

Q. 白石さんの娘さんを下さい!! お金ならいくらでもあります!(ペンネーム・ホリエモン)

A.あいにく、娘はウチにはおりません。大金を貰い損ね残念でなりません。今日の占いで、ぬか喜びに注意とありました。当たったようです。(白石)

 当時は、アメリカにおいて大規模M&Aが相次ぎ、日本では「ヒルズ族」「下流社会」「勝ち組」という言葉が流行。そんな時代に、肯定するだけでなく、優しい否定も含めた、クスッと笑える人間味あふれる白石氏の回答は、不安と閉塞感を抱いていた人々の心を潤す清涼剤となっていた。

■休み時間のささやかな遊びに応えようと余白に“オチ”を付けた

 白石氏が「ひとことカード」を担当するようになったのは、2004年、東京農工大学生協に異動したタイミングだった。現在、氏は店長として、東洋大学の白山キャンパスの生協に勤務。「ひとことカード」の担当から外れているのだが、当時のブームを「こちらと学生のほんのちょっとの時間が符合した結果だった」と振り返る。

「現在勤務している東洋大学は私大の文系で生徒数も多く、都心部にある分、街には楽しいことがいっぱい溢れています。ですが、当時の国立の東京農工大学は理系のキャンパスで人数も少なく、授業に出ないとすぐ遅れをとってしまう。今よりも楽しいことが少なく、授業の後も研究室に詰めて、今日は帰れないかもしれないという学生も多くいました。そんな彼らにとって『ひとことカード』は、休み時間のささやかな遊びだったと思うんです」

 真面目な苦情や提言・要望が8割の中、残る2割は、生協とは関係のない悩み相談や、どう見ても男性の字で「バストアップ用品を置いてください」(ペンネーム・Aカップ)というようなふざけた要望だったと言う。

「学生は、勉強と研究の息抜きに、ライトな気持ちで投稿していたのだと思います。私もまた、他にも仕事がありますから、ひとことカードだけに多くの時間を割くわけにはいきません。でもどんな投稿であれ、わざわざ生協に来て、直筆で記入してくれているのですから、みんな掲示してもらいたいんだろうなと思って極力答えるようにしました。加えて、回答が四角四面では味気ないので、余白にひと言、“オチ”を添えるようにしました」

 そのやりとりがWebに紹介されるようになってから、大学OBより叱りの声が寄せられることもあったと言う。

「『学生からの投稿内容があまりにも幼稚だと。それは学生の特権でもあるから仕方がないかもしれないけれど、白石という人が返事を書かなければ世に出ないのだから、そこのところをよく考えて選択するのが大人の対応だろう』とお叱りを受けました。でも、僕自身、そういう投稿をしてくる学生が、海外で行われる英語のスピーチでプレゼンテーションに出場しているなど、いかにみんな、毎日、真面目に勉強や研究に取り組んでいるかを間近に見ていましたから、その息抜きのコミュニケーションは大切にしたいと思いました。それに生協は学内の福利厚生施設なので、そういうコミュニケーションも我々が果たす役割の一端なのではないかと。『ひとことカード』に遊び心を求めている人がいるのなら、ほんの少しですけど応えようと思ったんです」

その心温まるやりとりに、大学側も賛同。白石氏は、東京農工大の知名度アップに貢献したことから、2005年には大学から感謝状を授かり、2009年には広報大使にも任命された。

■世代間ギャップはいつの時代も語られる…でも若者の本質は変わらない

 ブームになって以降、寄せられる「ひとことカード」が増加したため、「パートさんにも手伝ってもらうようになった」と白石氏。

「パートさんのほうが、直接、店頭で学生と接したり、店内での会話を耳にしている機会が多いので、『試験がんばってくださいね』とか、カードに書く言葉が温かいんです。今や全国の大学生協スタッフのカードの返答はさらに進み、絵を描いてきたカードに、それを上回るぐらいの画力で返す、そんなやりとりも生まれています(笑)」

 そんな白石氏は、ブームから15年経った今、現在の学生をどう見ているのだろう?

「『ひとことカード』に寄せられる内容は、相変わらず『単位ほしいです』とか『恋人がほしいです』とか全然変わっていません(笑)。時代の大きな変化として、スマホの普及があり、今は一人で何でも調べられるし、一人でも退屈しない時代になりました。でも、学生に聞いてみると、スマホは自分の情報を得るためのものであって、それを持っているから人と会わなくてもいいということはないし、仲間は欲しいと。『若者はスマホばかり見ている』と言われているけれど、それに対しても、今、携帯を持っていないという言い訳はビジネスでも通じなくなっているように、時代自体がそう動いているのではないかと。確かにその通りだなと思いました。私も、大学時代は“新人類”と言われましたが、世代間のギャップはいつの時代も語られますよね。でも実際は、若者の本質はいつの時代も変わらないのではないかと思っています」

 SNS全盛の今の時代に、“悩み”に対し“手書き”で答えるという白石氏と同じスタイルの「さよふしぎたんていしゃ」が人気になっているのも、人間の本質はいつの時代も変わらないことの表れなのかもしれない。

「SNSは動画を使えたり、五感に訴えやすい面もありますが、やはり手書きには、手書きにしかない温かみや人情味がありますよね。だからこそ、人間と人間とのアナログのやりとりは、大変な時こそ求められる気がします」

■『好感度を保持したい』なんて気持ちもあったから“さよちゃん”には敵わない

 現在、コロナ禍において不安やストレスを感じている人は多いが、白石氏が対峙する大学生も、授業はオンラインのみでキャンパスライフを送れないことにより、メンタル面の不調を抱える人が多く、問題となっている。そんな彼らに対し白石氏は……。

「まず、心中お察し申し上げますと言いたいです。クサしてしまう時間も多いと思うけど、自分以外のみんなも、同じくらいの大きさで、同じ思いを抱えています。そして、その思いを共有できたとき、皆さんの世代は、次の世代の人たちがより良い大学生活を過ごせるための大きな力になる。ですからクサらずに、頑張ってほしいと思います。微力ですが我々、大学生協は味方です!」

 白石氏も、キャンパスが閉鎖される中、運転免許取得プランに加え、資格勉強のためのスクールなど、「大学生協として、学生に貢献できることを模索中」と真剣なまなざしで語る。最後に、白石氏の後輩(?)ともいえる「さよふしぎたんてい」のさよちゃんについても聞いてみた。

「いやー、9歳でスゴイですよねー。『かわいくなりたいです』という相談に『そう思っているあなたはきっとかわいいです』なんて、僕には書けません。大人は、その真意をわかってほしくて、文章にいろいろな肉付けをして、かえって内容が薄くなってしまうみたいなところがありますからね(笑)。何より、感性がキレイですよね。僕の場合、『白石のいる店に行くのはやめようって思われたくない』とか、『好感度を保持したい』なんて気持ちもあったから、さよちゃんには敵いません(笑)」

 “生協の白石さん”に続き、“さよちゃん”の流行からも明らかになった、人と人との文字でのコミュニケーションの力。いつの時代も、人が存在する限り、その需要は存り続けることだろう。

文/河上いつ子

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